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メタァな厨二病男子とチートなお節介系幼馴染は果たして純潔を守れるか!?  作者: アシタカ
第一章 人族領・商業都市ゾンネンブルーメ編
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第10話 準備3

 ギルドを出て、宿屋へと戻ろうと歩き始めた。


「あのエイブラハムって人は結局、何者の?冒険者ギルドって独立してそうだから、他から影響をあまり受けないと思ってたんだけど」

「そうだな、彼は数年前に大々的に有名になったんだけど…そうだ、あれ。見えるかな?」


 パーシヴァルが指さした先は町の中央広場だった。町は東西南北に大きな主通路が伸びているが、その全てが集まる中央には露店なども開ける大きな広場があった。

 その中心では、大きな焚火があり、煙が上がっていた。


「前に説明しただろ?魔除け薬の話。あれを商売にし始めたのがエイブラハムさんなんだ。数年前から魔物は凶暴化していて、色々な町や村が被害にあっていたんだけど、この薬を焚き煙を上げると魔物が逃げていくから、旅の冒険者だけでなく町でも重宝しているんだ。最も、最近じゃこの薬だけでは間に合わなくなってる状態なんだけどね」

「魔物の凶暴化?」

「ちょっと、昔話しようか。昔、この世に魔族が勢力を持っていた頃の話」


 露店の焼き鳥屋みたいな屋台からそれぞれ一本ずつ串焼きを買い、ベンチに腰を下ろした。串焼きは焼き鳥よりも大ぶりな肉が刺さっており、何の肉なんだか分からない。食べてみると香草が効いているらしく不思議な風味が口の中に広がった。


「数十年前の話だ。俺もまだ生まれていない頃。人族は、と言うよりも魔族以外は、魔法を使える者があまり多くない。素質なんだろうね。だから魔族はどの種族にも脅威だった。相手はみんな魔法が使えて、武器を持たなくてもその身だけで戦うことが可能だったから」


 だから戦争になってしまうのか。確かに、どちらも丸腰だったとしても、一方は戦う術を持っているのだから気が気でないのだろう。


「ある時、果敢にも人族が魔族に戦争を仕掛けたんだ。その代の人王はかなりの激戦の中、魔王に打ち取られて死んだ。でも、人族はそれでも立ち向かい、魔法道具マジックアイテムを用意することで何とか魔王を討ち取ることに成功し勝利を得た。元々魔族っていうのはまとまりが無くて、魔王っていう絶対的強者の元でしか協力し合えないらしいんだ。その魔王が倒れたから、彼らは散り散りに撤退したらしい。それからは魔族の影響を受けずに暮らせたんだ」


 ここで終われば「めでたしめでたし」なのだろう。しかし現実っていうのはお話のようには上手くいかないようだ。最近、魔物が町や村を襲うようになってきたらしい。


「魔物は魔族の使役によって行動すると言われているから、近々魔王は復活するんじゃないかって噂も流れてるくらいなんだ。そんな流れで冒険者稼業も、本当はその戦争の後はだいぶ廃れていたんだけれど、最近また勢いを戻して活発に活動している。そんな人々が不安に駆られている時に魔除け薬を売り始めたのがエイブラハムさんなんだよ」


 魔族とか物騒な話である。最初に出会ったジャイアントウルフのことを思い出してみた。あんなものの脅威に怯えなければならないなんて、考えただけでも嫌になる。エイブラハムの売り出した薬を焚くと村に魔物は近寄らなくなるらしい。


「なるほどな…」


 串焼きを食べ終わった拓郎が呟いた。その声音がいつにもなく真剣だったため、驚いて私もパーシヴァルも拓郎の様子を窺った。


「パーシヴァル、その話を聞いて確信した。だから俺たちは呼ばれたのかもしれない。魔物の凶暴化を食い止め魔王を倒すために、俺たちはここにいるんだ!」

「は?」

「それは…」


 決めポーズを取り串焼きの串を空に向かって掲げながら叫ぶ拓郎に、私もパーシヴァルも言葉に詰まった。また変な妄想が彼の脳内を駆け巡っているのだろう。しかし根の優しいパーシヴァルは、言葉を逡巡した後に、ニッコリと笑った。


「それは、頼もしいね」



 ***



 次の日も私はディアナと共にイースト・ストリートに来ていた。今日こそは杖を手に入れるためだ。


「ごめんください」


 訪ねた工房はこじんまりとしていた。中を覗いてみると、ゴチャゴチャと色々なものが散乱していて、果たしてこれで商売ができるのか疑問に感じてしまう。


「今日もいないのかな?」


 足の踏み場に気を付けながら進む。大小様々な杖が立てかけられていたり、かと思えば中央の机に何の用途に使うのか分からない道具が積みあがったりしている。また、壁一面には天井まで届くほどの棚がびっしり並んでいて、そこには様々な輝きの石が並んでいるようだった。


「ちょっと、ちゃんといるわよ」


 部屋の様子に圧倒されていると、カウンター奥の扉が開いた。そこから出てきたのは小さな女の子だった。ツインテールに大きなリボンが揺れていて、零れ落ちんばかりの瞳がくりくりと動く美少女だ。


「すみません、ここの職人さんに杖を用意してもらいたくて来たんですけれど。ここの職人さん、今は留守ですか?」

「あら失礼ね。私がここの職人、今世紀一番の美少女ドワーフ、ブレンダちゃんよ」

「え!?」

「驚くわよね、マーガレット。ここはドワーフの職人が直々に作ってる、技術力としては最高峰の工房なのよ。この辺はドワーフって全然いないから、最近話題なの」


 いや、ディアナ驚きはそこじゃないんだけど!

 ドワーフっていうと、元の世界ではズングリムックリな醜い小男のイメージだった。いや、高度な鍛冶や工芸技能を持つっていうのは元の世界のイメージと同じみたいだけどさ。それにしても、どこからどう見てもただのロリータ美少女である。職人なのに、そんなヒラヒラのフリフリなドレス着てんの?


「その反応、やめてほしいのよね。もさいドワーフとかって認識、古いのよ。今時ドワーフ娘ってのはちゃんとオシャレに美容に気を使ってるんだからね」

「はぁ…」

「小柄っていうのは、遺伝子上どうしようもないけど。ま、小さいほうが可愛らしくて保護欲を刺激するみたいだし?良いんだけどね」


 やれやれとでも言うようにブレンダはため息を吐くと、壁に立て掛けられた一本の杖を持ってきた。


「さ、持ってみて」

「え?」思わず手に取ると、まじまじとその杖を眺めた。ちょっと重くて頑丈な杖だ。

「何よ欲しくないなら良いのよ」


 奪われそうになって慌てて抱え直し、じっくりと観察する。


「魔法はどんなものが得意なの?それによっては魔法石も選び方が変わってくるのよ」

「この子、まだ魔法は練習中なの」

「あら。なら、初心者用の杖がいいわね」


 ブレンダはカウンターのところで屈むと、一本の短い杖を持ってきてくれた。それを手渡され持ってみると、先ほどの杖よりも随分と手に馴染む気がした。


「私が丹精込めて磨いた杖よ。しっかり使ってちょうだいね」


 杖が短めのため、腰にさして持ち運べるように専用のベルトも購入した。これで手が塞がることもない。自分専用の杖だなんて、本当に魔法使いになったみたいでドキドキする。


「この店、私直作の魔法道具マジックアイテムも取り扱ってるから。もし必要になったら、またぜひ来てちょうだいね」


 魔法道具か。どうやらこの壁に並べられている石が魔法石というもので、魔素が詰まっているらしい。ディアナによると、石のまま使えば自身の魔力回復にも使えるし、道具に埋め込めば魔法道具として魔力を封じ込めた道具ができるらしい。

 魔法道具は魔法を使えない一般人でも魔法が使えるようになるので重宝されるようだ。


「またご贔屓にどうぞ」


 ブレンダに見送られて工房を後にした。


「ディアナ」

「なに?」

「ナイトにはこの工房の話は内緒にして」


 あんな美少女の話を聞いたら、興奮して突入するに違いない。

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