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花守る人  作者: 嘉嶋ゆな
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プロローグ

初投稿ですので、変なところがあれば申し訳ないです。

山肌を風が駆け下りる。

アウラは、細かく編み込んで高く結い上げた黒髪を、下った風に煽られたその時、ふと顔を上げた。

遠く、誰かの視線を感じたような気がしたのだ。

探すように目を流すと、夕暮れに染まる緑の群れの向こう、町へと続く草叢の中を花籠が渡るのを見た。

陽に彩られた山脈を背に、籠の金細工が夕焼け色に照り返す。飾られた花々も、燃えるように輝いていた。

籠を守護する従者たち――彼らの纏う錦の毛織物が遠めに見てもそれはそれは鮮やかで、アウラは知らず感嘆の息をつく。

「きれい」

一枚の絵のようだ。

花籠に乗る人物は見えないけれど、花籠に乗れるのは花守の役目を担う巫子だけ。それならば、向かう先は町から遠く離れても目に入るあの大樹か。

行列はゆるりと優雅に過ぎ行き、町の門へと消えつつある。

見惚れたまま身を乗り出すと、アウラを乗せた騎獣が不満げに身をよじる。

「ごめんね」

宥めるように首筋を撫でてやるが、目線は籠を追うまま。

目が離せないなら、せめて一向の最後の一人が門に消えるまで眺めていよう。

美しい籠に当てられ、高揚した気持ちが収まらない。

そうして眺めているうちに、アウラは首を傾げた。

やはり、視線を感じるのだ。

誰かが見ているような気がしてならない。

遠く、見つめる先に。

あの花籠の行列から。

やがて行列の中央の籠が門へと入り、ぞろぞろと続いて人々が見えなくなる。

そしてようやく、

「戻らなくちゃ」

そう呟いて、跨る獣を遠くの門へと走らせた。


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