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2つの光〜握った手と離したはずの手〜

たまたま目にしたあの人は。ひどく優しくて、とても輝いてみえる人だった。


____________________


それは、ある路地裏でのこと。彼女を見たのはその日が初めてではなかった。


「どうも〜

前からちょいちょい顔を合わす機会はあった…よな?

自己紹介してなかったなぁ思って話に来たんよ

うちの名前は鈴原蓮花っていうんよ

まぁ…お兄さんたちの好きに呼んでくれてええよ。……どんな呼び方してくれるんか、ちょっと楽しみやし

うちに用事あるなら、気軽に話しかけてきてええから

……来てくれたら、うち普通に嬉しいし

あんま来てくれへんと……ってこんな事言う関係やあらへんな!

まぁ、その、無理はせんでええよ

でも、来てくれたらめっちゃ話しきくし、手助けしたいおもっとるから!

まぁ…うん。うちのこと知っても関わろうって思えるんなら…そうしてもらえるとありがたい…かも?」


大学生の自分よりも6、7歳は下に見える少女。

あまり良くない噂を聞く知り合いの近くに居るのをたまたま見ただけだった少女はその日、より俺に近くなった。


____________________


あの日から、俺は少しずつ彼女のもとに顔を出すようになった。楽しげに話す彼女はどこか寂しげで歪に見えていたから。きっと、捨て猫に餌を与えてしまうような。そんな些細な気持ちからだった。


「あ!また来てくれはったんやね

ふへへ〜、うちのこと気に入ってくれたみたいで良かったわ!

うち、お兄さんと話すん…結構気に入っとるんやで?

誰にでも優しいお兄さん!

時間あるんなら、お茶でも飲んでいかん?

ちょうどいいお菓子が手に入ったんよ〜」


俺に何も見返りを求めない彼女。蓮花ちゃんと呼ぶようになったその少女は、俺を素直に慕ってくれていた。そんな好意に少し惹かれていたんだと思う。


____________________


しばらく経って、蓮花ちゃんのもとに顔を出すのが日常となってきた時。用事の前に少し時間があったから立ち寄った。ただそれだけだったはずのその日は少しだけ印象に残っている。


「あ、お兄さん〜

そろそろ来てくれるぅ思っとったよ

前、お兄さんが気に入ったゆっとったお茶とお菓子あるからお茶していこうや?

え、用事あるん…?そっかぁ…

なら、また今度きてや!約束しよ〜?

え、ええの?じゃあ、指切りげんまん。やね!」


少女と初めて約束をした日。普段は大人びた風に見える彼女の指切りげんまんという言葉に安心したのはこの日が初めてだった。彼女の約束はまるで、子供が親に対して言うわがままのようで、俺からするととても可愛く見えた。


____________________


始めの出会いから半年ほどたったある日。

大学や新しく始めたアルバイトが忙しく、しばらく少女のもとに会いに行けていなかった。その日は、アルバイト終わりに時間があっているかな?くらいの気持ちでいつもの場所に行っていた。


「あ、お兄さん!最近来てくれんから心配してたんよ?

お兄さん、結構のんびりしとるから変なやつに引っ掛けられてないかとか心配で__

自分はもう大人だから大丈夫って?年齢とか関係なくてお兄さんのこと大切やから心配なんよ

わかってくれる?うん、わかってくれるなら良かったわ!なら、護衛でもつけておいて__っていらん?ほんまに?ほんまにいらんの?……うん、わかった。

けど、なんかあったらゆってな?お兄さんのためならうち、なんでもしてあげたいんや」


その時だろうか、彼女の中に純粋に慕ってくれている気持ち以外に仄暗い気持ちを感じたのは。年下に過保護なまでに心配されるのは少し変な気分だった。恐らく裏社会と呼ばれる場所に所属している彼女の何でもとはどの程度を指すのか、少し気になったのはここだけの話だ。


____________________


たまたま同じアルバイト先の先輩と話しているのを彼女に見られていたようだった。

彼女は、その時の写真を持って訪ねてきた。

普段のあそこ以外で見る彼女は少しいつもと違う雰囲気を感じさせていた。


「ねぇ、うちのこと嫌いになったん?ちゃうよね?お兄さんはそんな突き放す真似しんよね。だって、誰よりもうちに優しくしてくれたお兄さんやもん。けど、なんであんな女の近くにいるん?

……もしかしてうちの気をひこうとしてたん?最近、忙してくて会えても少しやったもんね。

そっかぁ…お兄さんは可愛い人やねぇ。ふふ、離さへんよ。うちは、お兄さんを離さへんから、お兄さんもうちのことはなさんといて。


…って、冗談やで!そんな本気な顔しないでや?

うち、お兄さんには楽しく平和に過ごしてもらいたんよ

だから、やっぱりあんまりうちの事情には関わらないほうがええで?そのほうがお兄さんのためや。だから、

うん。もうここにはこんでほしい。

また、ここに来たら…たぶん離してあげれんくなってまうんよ。だからさ…

自分で選んで?

……ほんまは来てほしい。全てを捨ててでもうちを選んでほしい。けど、けどさぁ!うちには、お兄さんの人生をこっちの身勝手で縛れんのや!わかっとる!こっちに来たらお兄さんは楽しく生活できんかもって!けど、もうこの感情を制御できそうにないんや!

だから、ね!お願いや。うちとの最後の約束。してくれる?」


こちらに伸ばされた手は少し震えていて、それに気づいて蓮花の目をよく見るとひどく怯えているようだった。この手を__彼女を取るべきか、それとも平和な日常を取るべきか。彼女に迫られるなんて思っても見なかった。


ほんの少し迷う。しかし、今決めなくてはならないだろう。


____俺の答えは


【ここから、ルートが分岐します。】


【ルート1】


彼女の手を取ると、手を引かれ、一緒に車に乗り込んだ。連れてこられた屋敷はとても広くて今まで見たことがないような場所だった。彼女は、この箱庭でずっと一人だったのだろうか。

最初は戸惑ったけれど、蓮花ちゃんは俺に、1から10まですべて教えてくれた。使用人がいるから何もしなくていいこと。やりたいことがあれば、蓮花ちゃんに言えばだいたい叶えてくれること。料理をしたいといえばキッチンに食材もあって、驚いたしそんな様を見て笑っているあの子がとても可愛かった。けど、この広い屋敷では、静けさで満ちていて探しても探しても誰もいなかった。しかし、本来居なかったはずの蓮花ちゃんは全て知っていて、彼女を不安にさせてしまったことも覚えている。あのときは、「自分がいるだけじゃ不安か?」「やっぱり自分のことが嫌になったのか。」そう情緒不安定になってしまった。そんな彼女を慰めたのも記憶に残っている。その後にテレビで見たお店に一緒にデートしに行こうと言ったときも同じような反応だった。きっと、彼女は不安でたまらないんだ。彼女自身は前と変わらずとてもいい子で自分に何も求めず慕ってくれていているのに。そんな彼女を不安にさせるのも悪いと思い彼女を不安にさせてしまうような行動をするのもやめた。

彼女は、俺がやりたいと言えばきちんとさせてくれたし、食べたいものも取り寄せてくれた。趣味も新しく見つかった。順風満帆な日々を送れていた。

そして、彼女が結婚できる年齢になって式を挙げようという話になった。俺は、自分の両親にも蓮花の両親にも会いたいと言った。けれど、蓮花の両親はいないらしく、そんな自分をきっと俺の両親は許してくれない。だから、会いたくない。と言われてしまった。そう考えると、年齢の離れた蓮花との結婚は世間からするとあまり良く思われないかもしれない。そう俺も思った。だからこそ、2人でこっそりと式をあげることにした。

そして、今。ウエディングドレスを着た彼女を目の前にしてあの日を思い出す。きっと、彼女の手を取らなければ世間一般でいう普通の幸せが手に入っていたのかもしれない。周りに沢山人が居て、外にも自由に出ることができる。

けれど……

「ねぇ、お兄さん」

彼女に話しかけられる。

「うち、今がホンマに幸せ。あの日、うちの手を取ってくれてありがとう。絶対に幸せにしてみせるから。」

けれど、眼の前にいる彼女の笑顔を見るとそんな感情もなくなる。きっと、もう戻れない。俺は彼女なしでは生きていけないし彼女も俺無しでは生きていけない。これは、こうしてしまった責任だ。年上としての責任。彼女に全て背負わせてしまった責任。それを全て今言葉として彼女に伝えよう。

「それは、俺のセリフだよ。

一緒に幸せになろう」

彼女は俺の光で。俺も彼女の光なのだ。

「うん!」

2人しかいない教会でぎこちなくも笑う彼女は何よりも美しかった。きっと俺はこの時、目をそらしてしまった。この笑顔の裏に何が隠されているのか考えないようにした。気づかなかったんじゃない。見ないふりをしたんだ。それでもきっと、彼女は__俺の光だから。そう見えてしまったから。

だから、この箱庭で、

神の目の前で、この儚く消えてしまいそうな光を守る番人になろう。改めて俺は誓った。



【ルート1】 HappyEnd? 箱庭の番人


【ルート2】


彼女と約束を結んだ。関わりをなくすためにあの場所には近づかないようにした。けれど、あの日から…蓮花ちゃんと会わなくなった日からなにか心にポッカリと穴が空いてしまったようだった。この満たされないものはなんだろうか。時間があれば、彼女のことを考えてしまう。あの日、苦しそうな顔をしていたあの少女はいつもより、よりいっそう小さく見えた。俺が、そうしてしまった。今は彼女は…どうしているのだろうか。


____________________


お兄さんのことを諦めたうちは、前よりもいっそう仕事に打ち込むようになった。

少しでも時間が開けば、お兄さんのことを考えてしまったから。あの日無理やりにでも連れていけば良かった。そう何度思っただろう。けれど、お兄さんが自分で決めたんだ。自分自身で。そう、決めたんだ。

だから、うちにはどうにもできない。忘れることも、何かをすることも。今のうちにはできないことなんだ。だからこそ、仕事で一時的にでも忘れさせるんだ。あの日々を。

色づいていた日々を。

寝るとお兄さんの夢を見てしまう。__寝るのをやめた。

好きだったお茶の時間は、お兄さんとのお茶会を思い出してしまう。__お茶を飲まなくなった。

お兄さんとしたことを忘れるために、どんどんどんどんやめた。

ねなければ、お茶を飲まなければ、食べなければ、思い出すものを順番に消せば__そうすればきっと思い出さない。そうしていくことで、世界から色が消えていく。けれど、

だけど!お兄さんへの思いがなくならない!消えてくれない!忘れなくちゃとおもうたびに、お兄さんがどんどん近くなる! 何度も試して、何度も失敗して。

他に何ができる?


あぁ、あるじゃないか

最初からわかってた。


ずっと答えが出ていた。

そう簡単なこと。

一つが消えないなら。

全てが消えてしまえばいいんだ。


わざと、仕事でミスをした。敵に追われる。きっと逃げられない。あぁ、終われる。あの人を自由にできる。 観念して目をつぶる。あぁ、こんなときにまでお兄さんを思い出すのか。頭に浮かぶのは優しうなお兄さんの顔。


「迎えに来たよ」


まるで、夢のような言葉。


こんな時まで、夢を見るなんて。

きっと自分は悪い子だ。だって、だって!お兄さんはこんな場所にいるわけがない。

お兄さんは、幸せに暮らして__


「蓮花ちゃんが居なくちゃ俺の幸せはないみたいなんだ。」


どうして?どうしてきたんですか。

____お兄さん。


____________________


彼女のことを忘れられなくなった俺は、彼女を探すことにした。彼女の手がかりといえば、裏社会でなかなかの地位にいること。まだ、高校生なこと。そしてその容姿くらいだ。

彼女がもし、まだ俺のことを慕ってくれているのなら彼女の元へいこう。もし、他の人を慕っていたとしても、それであきらめが付く。そう、おもっていた。

彼女のことを調べるのは、裏社会に入ったばかりの俺じゃ少し苦しくて、何度も危ない目にあった。何度もやめようと思った。けれど、きっと彼女のほうが辛い目にあってきた。そう思うと続けられた。

しかし、3年も経ってしまった。あの子はもう、20歳になってしまっただろうか?

けれど、それだけの年月をかけたおかげで、ようやく蓮花ちゃんの情報が手に入った。写真で見た彼女は前より少しだけおとなになっていて、それでいてひどくやつれているような気がした。

その情報源から彼女が今日、取引を行うことを聞いて、近くに行くことにした。ひと目でも見れれば、そのつもりだった。

けれど、逃げているあの子を見て。やつれたあの子を見て、居ても経っても居られなかった。約束、先に破ることになってしまったな。

彼女たちを追いかけると着いたのは古びた教会で、 彼女を追い詰めている男たちは俺に気づいていない。照準を急所を外した位置に合わせる。この3年で、銃の腕も上がってしまった。そいつらに気づかれる前に軽く伸す。


「迎えに来たよ」


彼女の見開かれた目は昔と全く変わらず、澄んだ宝石のようだった。彼女は俺を待っていてくれただろうか。約束を守らなかった俺を怒るだろうか。

けれど、それでもいい。彼女とまた日々を過ごせるならば。それだけでいいんだ。


「蓮花ちゃんが居なくちゃ俺の幸せはないみたいなんだ」


優しく微笑む。変わってしまった俺を彼女はわかるだろうか。傷のついた身体。雰囲気もきっと変わってしまっただろう。


「覚えてる?」


「っ…忘れるはず、あらへんですよ。お兄さん」


お兄さんという懐かしい響きに胸が満たされた気がした。

彼女の目には涙が浮かんでいて、その宝石のような目がまるでこぼれ落ちてしまいそうで、思わず駆け寄り涙を拭う。


これは、きっとハッピーエンドではない。けど、バットエンドでもない。不完全だけど、素晴らしい未来のための一歩。


「君を救うために強くなったよ。だから、どうか並んで立たせてくれないかな。」


お互いが光なのではなく、相棒。そんな関係性を築くための一歩。この後の話はきっと、ハッピーエンドなんかじゃないかもしれない。それでも、歩いていきたい俺と彼女の話。


これはきっと、


__不完全な俺と彼女の話だ


【ルート2】TrueEnd?唯一無二の相棒

たまたま思いついた話から始まる物語でした。番外編として、蓮花ちゃんの初対面時から好感度が高かった理由や他の目線から見た物語を書き続けるつもりです。

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