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第十三話 王立学園杯


 春季魔法実践演習から少し経った頃に行われたイベントでは、多少の波乱があった。


 王立学園杯学内総合競技大会――通称「総体」と呼ばれるこのイベントも全学年合同の大会で、全生徒がいくつかのチームに分かれて各部門で順位を競う。

 総体はチーム戦だ。三年生の有力者数名が学園側から代表として指名され、それぞれがチームを率いる。

 競技は四部門。実戦形式で競う魔術部門と剣術部門、知識量を問う学術部門、そして盤上遊戯を用いて判断力や指揮能力を測る戦術部門だ。各部門の出場者の成績に応じてチームにポイントが与えられ、その合計で総合順位が決定される。

 総体は、個人の才能だけでなく、チーム編成や采配までもが結果を左右する大会だ。一人につき一部門しか出場できないということもあり、代表者は有力な生徒をどう自チームに引き入れるか、参加者は希望するチームの代表者にどうアピールするか、あるいはどのチームに所属すれば勝てそうかを見極める能力が問われるなど、政治的な能力も重要だった。


 ゲームでの代表は、アレクシス・エンジェリア、フェリシア・リーデンバルド、そしてイライアス・オーゼルテンの三名だ。

 アレクシスは、言わずと知れた国の第一王子である。学園では生徒会長を務め、剣術も魔術も一流で、学術に至っては学力試験で主席を譲ったことがない。どの部門に出ても優勝候補に名を連ねることは間違いないだろう。

 ゲームのフェリシアも、素行に問題はあるが能力は一流、家門もリーデンバルド公爵家と、「有力者」には違いなかった。取り巻きも多いため、むしろ代表にしない方が面倒だろう。

 そして最後のイライアス・オーゼルテンは、騎士団長であるオーゼルテン辺境伯の三男だ。出自に違わず騎士志望で、剣術の腕は学園一と名高い。彼もまた、三年生の有力者であり――攻略対象者の一人でもあった。赤い髪にオレンジの瞳の、活発な感じのイケメンである。


 ヒロインは、この三名のうち――というか、フェリシア以外の実質二名のうちどちらかのチームを選択することになる。どちらのチームを選ぶかによって、総体イベントで遭遇できる相手が変わるのだ。


 下級生の攻略対象は、ヒロインがチームの希望を出す前に、本人から聞くなりモブの噂話なりで所属チームが明らかになる。下級生の攻略対象はカミルの他、一年生には豪商の息子ダミオン、二年生には宰相の息子であるヴィンセント・ノートレットと他国からの留学生シイラン・ウル・サハルがいた。


 ゲームでは、四部門のうち好きな部門を選んで出場することができる。チームと部門の組み合わせで、イベントが起こる相手が変わるのだ。なお、該当者のいない組み合わせを選択すると、誰の好感度も動かずに終わる。

 ゲームのフェリシアは、当然のごとくヒロインを妨害する。ヒロインを出場させないような足止め工作に始まり、対戦相手となる自チームの学生にルールぎりぎりのラフプレーをさせたり、ヒロインの不正疑惑をでっち上げたりとやりたい放題であった。ゲームではこれらを躱したり防いだりして好成績を取らなければならなかった。


 現実の世界でも、代表はゲーム通りの三名に決まった。アレクシスとイライアスは順当に、フェリシアはゲームよりよほど多くに納得されての人選だった。他の攻略対象者のチーム選びはゲーム通りだ。

 現実のフェリシアは、正々堂々と戦った。攻略対象者以外の有力選手は、若干名がフェリシアのチームに流れたようで、いくつかの部門では上位者の所属チームがフェリシアチームに変わっていた。

 第一位はもちろんアレクシスチームだ。カミル、ヴィンセント、アレクシスがそれぞれ魔術、学術、戦術部門で優勝し、他生徒も複数名が上位入賞を果たしたため、二位に大差をつけての圧勝だった。フェリシアチームとイライアスチームは、僅差でフェリシアチームが第二位につけた。ゲームではフェリシアチームが常に第三位だったことを考えれば、明確な違いが生まれたと言える。

 

 クレイは、よからぬことを考えていそうなフェリシアチームの生徒数名を()を使って牽制しようと考えていたが、すでにフェリシア本人が手を回していた。


 戦術部門の決勝戦は相当な激戦だったようで、フェリシアの手紙からは会場の興奮がありありと伝わってきた。決勝に残ったのはアレクシスとシイランだったようだ。

 シイラン・ウル・サハルは他国からの留学生である。南にある小さいながらも貿易で栄える国の第八王子で、褐色の肌にダークブラウンの髪、黄金色の瞳を持つ異国情緒溢れるイケメンだ。


 王族同士の対戦ということもあり、注目度は高かった。戦いは白熱し、総体史上最長の試合時間を記録したらしい。結果はアレクシスの勝利。シイランが負けを宣言した時、会場は両者の健闘を讃える歓声と拍手の大合唱だったという。

 フェリシアは学術部門に出場し、三位入賞を果たしていた。二位に入ったアリアさんとお話したと書かれており――思わず声が出てしまった。まさかのタイミングでヒロインとのニアミスだった。手紙には、平民でありながら素晴らしい知性の持ち主で、短いながらも大変有意義な時間だった、とある。ヒロインとの関わりはこれが初めてのはずだが――ひとまず、揉めるようなことはなさそうだった。()に探らせたヒロインは、クレイのような()()()()ではなさそうだったが、難癖をつけられるようなこともなく、平和に終わったようだ。


 ひとまず、これで夏季休暇前の大型イベントはどちらも終わったことになる。フェリシアからの手紙を丁寧に文箱にしまい、クレイはほっと息をついた。

 手紙の後半には、もうあと数日程度で公爵邸に経つとあった。今頃はきっと荷造りの最中か、そろそろ王都を出る頃だろうか。クレイの心は、もうすぐ公爵邸に戻ってくるフェリシアのことでいっぱいだった。


 ――その夏の休暇で、クレイの世界はすべてが様変わりすることになる。

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