表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の錬金術師と静寂の盾  作者: ゆでたーま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

16話

学園を脱出し、地下精錬所でアルスが「再精錬」を遂げてから半年。

 王国北端、一年中猛吹雪が荒れ狂う「絶氷の地」に、二人の旅人の姿があった。

「……アルス、前が見えないわ。この吹雪、ただの自然現象じゃない。誰かの魔力による拒絶を感じる」

 厚い毛皮のフードを目深に被り、腰に『静寂』を佩いたエリナが叫んだ。半年間の逃亡生活は、彼女の美しさに野性味と鋭い強さを加えていた。

「だろうな。僕の右腕が、ここ数マイルずっと『共鳴』し続けている」

 アルスが右腕を掲げると、毛皮の袖の隙間から、冷徹な銀の光が漏れた。

 彼の右腕は、もはや食事も睡眠も必要としない。周囲の熱エネルギーを吸収し、演算へと変換する「神の義手」。

「——止まれ。ここから先は、神域だ」

 吹雪の向こうから、巨大な氷の塊を削り出したような門番が現れた。

 氷のゴーレム。しかし、その体内には歯車が組み込まれており、学園で見た機械兵器をさらに進化させたような構造をしていた。

「……この反応。やはり『始まりの研究所』は、この氷壁の向こうか」

 アルスは一歩前へ出る。

 ゴーレムが巨大な氷の拳を振り下ろす。その質量は数トン。直撃すれば、人間など一瞬で肉片に変わる。

「エリナ、中心核を叩け。僕が経路を作る」

「了解! ……貫け!」

 アルスが右手の指先を虚空に走らせる。

 『構造線、視認。結合点、一四四箇所。……一括解除』

 アルスが空間を「撫でる」だけで、ゴーレムの全身を覆っていた強固な氷の装甲が、まるでガラス細工のように剥がれ落ちた。

 剥き出しになった心臓部へ、エリナの『静寂』が音もなく突き刺さる。

 今の彼女は、アルスの義手から供給される「最適化された魔力」を使いこなし、以前の数倍の破壊力を手にしていた。

「……標的、停止。……認証、完了」

 ゴーレムが崩れ落ちると同時に、背後の氷壁が轟音を立てて左右に割れた。

 そこに現れたのは、吹雪の外側からは想像もつかない、清潔で、どこか無機質な「未来の都市」のような景観だった。

「……ここが、僕たちの生まれた場所か」

 アルスは眩しそうに目を細めた。

 広場の中央には、巨大な石碑が立っている。そこには、歴代の「被験体」たちの名前と番号が刻まれていた。

 1番から11番まで、すべてに「廃棄」の二文字が添えられている。

 そして、最後の一行。

 ——『12番:アルス・レーヴェン。唯一の成功例。観察を継続する』

 石碑を見つめるアルスの背後から、静かな、しかし聞き覚えのある足音が近づいてきた。

「……よく来たね、12番。そして、彼をここまで育て上げた聖騎士よ」

 現れたのは、かつてアルスを学園から逃がしたあの男——学園長マクスウェルだった。だが、今の彼は老人の姿ではなく、アルスと同じような銀のパーツを全身に埋め込んだ、年齢不詳の姿へと変貌していた。

「学園長……。いや、13番目を目指そうとした『失敗作』の一人か」

「ははは、鋭いな。私は1番目ナンバー・ワンだよ。……最初に造られ、最初に『神』に届かなかった男だ」

 マクスウェルが微笑むと、街中の至る所から、アルスと同じ銀の腕を持つ「自動人形」たちが一斉に姿を現した。

「さあ、始めようか。世界を正しい形へ書き換えるための、最終試験ファイナル・テストを」

 第2章の幕開け。

 それは、自分たちを造り出した「神」に逆らい、己が人間であることを証明するための戦い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ