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銀の錬金術師と静寂の盾  作者: ゆでたーま


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15/20

15話

地下精錬所。そこは、数千年前の文明が物質を煮焼きし、世界の雛形を造り上げたという、熱気と油臭が支配する巨大な洞窟だった。

 アルスとエリナは、背後から迫る巨大な回転鋸の音を背に、深部にある「原初の坩堝るつぼ」へと辿り着いた。

「アルス、右手が……!」

 エリナが悲鳴を上げる。アルスの右腕は、もはや銀色を通り越して不気味な青白い光を放ち、皮膚の表面には回路のような亀裂が走り始めていた。演算能力の限界——彼の脳が、肉体という器を焼き切ろうとしているのだ。

「ヒヒッ、始まったねえ。12番の『自己崩壊』だ」

 追ってきた11番の老婆が、暗闇の中で嗤う。

「あんたの頭は神の領域に触れちまった。だが、体はただの肉だ。そのギャップを埋めるには、肉を『物質』として定義し直すしかない。さあ、その坩堝に飛び込みな!」

 前方には煮えたぎる未知の液体金属。後方には、壁を削りながら迫る処刑用兵器。

 アルスは意識が遠のく中、エリナの震える手を取った。

「……エリナ。僕を信じるか」

「当たり前じゃない! でも、あんな熱いところに飛び込むなんて……」

「僕一人じゃ、ただ溶けて終わりだ。だが……君の魔力という『固定材』があれば、僕は僕のまま、この器をアップグレードできる。……僕に、君の命を預けてくれ」

 背後の処刑兵器が咆哮を上げ、巨大な鋸を振り下ろす。

 エリナは迷わなかった。彼女はアルスの体を強く抱きしめ、二人で煮えたぎる坩堝へと身を投げ出した。

「——全出力、解放ッ!!」

 エリナから放たれた、公爵家が誇る「太陽の魔力」が坩堝の中で爆発した。

 液体金属が二人を飲み込み、高熱と高圧が襲いかかる。本来なら即死。しかし、アルスは絶叫しながらも、その極限状態の中で「自分自身」を再構成リビルドし始めた。

(……骨格をオリハルコンと同質の格子構造へ……。神経系を銀の超伝導線へ置換……。エリナの魔力を、僕の心臓メイン・コアに直結する——!)

 ドォォォォォォォン!!

 坩堝が内側から弾け飛んだ。

 溢れ出した液体金属の中から、一人の人影がゆっくりと立ち上がる。

 それは、アルスだった。

 彼の右腕は、もはや人間の皮膚ではない。鈍い輝きを放つ「神の銀」の義手と化していた。そしてその腕の中には、力尽きて気を失ったエリナが、傷一つない状態で抱き抱えられていた。

「標的……生存? ……再計算、不可能。抹殺を——」

 処刑用兵器が再び襲いかかる。

 アルスは一歩も動かず、ただ右手を静かに突き出した。

「結合解除。……存在定義、喪失」

 アルスが指を鳴らした瞬間。

 巨大な機械兵器は、爆発すら起こさなかった。

 ネジ一本、歯車一つに至るまでが、一瞬にして「ただの砂」へと変わり、床に崩れ落ちたのだ。

「……ヒヒッ、やりやがった。12番……いや、アルス。あんた、ついに『神の指先』を手に入れちまったね」

 老婆は満足げに笑い、闇の中へと消えていった。

 アルスは、自分の新しい腕をじっと見つめる。

 重い。冷たい。しかし、そこにはエリナの鼓動が、魔力のパスを通じて確かに流れ込んでいた。

「……行こう、エリナ。僕たちを、こんな風に造り替えた奴らのところへ」

 最強の剣を振るう少女と、世界を定義し直す右腕を持つ少年。

 二人の本当の復讐劇が、ここから幕を開ける。

(第1章:学園・逃亡編 完)

(第16話:第2章『神の設計図』編へ続く)

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