第1発「ポルノ☆転生」
魔王との壮絶な戦いから半世紀。人々は平和を謳歌し、かつての戦時の記憶は薄れていった。王都の片隅で魔道具店を営むドルチェビッチは、店の前で立ち尽くしていた。店内には、戦時中に開発された魔力通信機器が並ぶ。かつては戦況を伝える生命線だったそれらも、今や埃を被るだけだった。
「もう誰も必要としていないのね」
彼女は溜息をつく。魔力で遠隔地の映像を映し出す魔道具は、最後の顧客が去ってから一度も光を放っていない。
その夜、稲妻が天を裂くように光った。轟音と共に、ドルチェビッチの店の前に一人の男が現れた。全裸の彼は、困惑した様子で周囲を見回している。
「あなた、どこから?」
ドルチェビッチが尋ねると、男は首を傾げた。
「僕は...シュミット・ケンイチ。日本から来たんだけど、ここはどこ?」
彼女は男に毛布を渡しながら状況を説明した。シュミケンと名乗る彼は、自分が"ポルノ男優"という職業だと明かす。ドルチェビッチは困惑しつつも、彼の話に耳を傾けた。
「つまり、あなたの世界では...裸の男女が絡み合う様子を、大勢の人が見るの?」
シュミケンは頷く。
「ええ、エンターテインメントの一種です」
半世紀の平和が続く中、王都の片隅で魔道具を扱うドルチェビッチと、ターミネーターの如く現れたポルノ男優シュミケン。
ドルチェビッチがその世界の文化を説明する。
「この世界では一般的に信仰心が高く、公には結婚するまで肉体関係を結ばないとされているのですよ」
シュミケンは即座に目を輝かせた。
「そうか、ここではまだその…特別な娯楽が流行ってないんだ」
シュミケンは確信する。この異世界にポルノという概念を持ち込めば、必ず市場はある。この世界の人々も新しい形のエンターテイメントに飢えているはずだ。ドルチェビッチは当初、シュミケンの提案に対して慎重だったが、店を畳むほかない状況を鑑みると、試してみる価値はあるかもしれないと考え始める。
「でも…問題が一つ。この世界ではこの種の映像を公にすることは、信仰に反するかもしれないわ。非難される可能性もある」
シュミケンは一瞬、その警告に心を動かされるかのように見えたが、すぐに頷いた。
「分かった、じゃあ僕たちが創り出すコンテンツは、ただのエロじゃない。愛を伝える映像にしよう。革新的で、芸術的な…。そうすれば、少なくとも一部の人々には受け入れられるはずだ」
シュミケンは異世界におけるポルノ製作の計画を詳しく練り上げた。
「そして、それは女性や芸術を信仰する貴族用...そしてポルノに特化したエグイ物は冒険者や性欲の強い貴族用に秘密裏にね」
とシュミケンはアドバイスした。彼の考えは、異なる層向けに異なる種類のコンテンツを提供することにより、幅広い顧客層をつかむことだった。
ドルチェビッチは疑念を抱きつつも、シュミケンの情熱から力を得る。彼女たちは魔法の映像伝達魔道具を使って、この世界初の大人向け映像作品を制作することに決めた。作品が王都の暗闇の中で、ひそかに流通し始めるのはまだ少し先の話。