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8話


 嵐のようなものが去り、しばらくすると受験者たちは一か所に集められ、今回の試験内容が発表された。

 魔術学園の入学試験の内容は的当てやサバイバル、模擬戦などといったように毎年変わっている。そして今回の内容は石柱壊しと受験生全員での摸擬戦だ。

 発表後、受験者たちは10のグループに分けられ、試験監督の教師に先導され会場への移動が始まった。

 アリスは移動しつつ、試験のことを考えていた。


(石柱は()()()、模擬戦は()()()()()()をか。今回のは分かりやすい試験でよかった……)


 アリスはそう考えながら学生時代に聞いた過去にあったという試験のことを思い出していた。その試験は一定時間内で部屋から脱出するというものだったのだが、そのための仕掛けがあまりに多く、まともに脱出できないものだった。そのときの成績一位は仕掛など解かず、強力な魔術で部屋に穴を開け脱出したそうだ。ちなみにほかにもそれをやろうとした人間はいたが、部屋の強度が高く、一位の人以外壊せなかった。

 もしそのような頭を使うタイプの試験だった場合アリスは少しキツかったかもしれない。頭を使うタイプは下手したら何もわからないということも起こりえる。魔力量でゴリ押ししようにも、使える攻撃魔術はフレイムのみ。そんなでは部屋を壊せなかったかもしれない。



 アリスたちが到着したのは何もない広い部屋だった。300人くらいは余裕で入りきれそうだ。

部屋の真ん中に試験監督が立ち、魔術を唱える。すると地面から人間大くらいの一本の石柱が生えてきた。

 そして自分が連れてきた受験生が全員入室したのを確認すると口を開いた。


「試験監督のグレイだ。特に名前は覚える必要はない。先ほど試験内容の発表はあったが、これからその詳しい説明をする。

 まずは第一試験石柱壊し。ここにある石柱へ攻撃魔術を打ってもらい破壊してもらう。攻撃魔術が使えない者は身体強化などをして石柱を殴るなどで破壊しろ。……ただし石柱壊しと言っているが、完全に壊せなくても構わない。ここで測るのはあくまで君たちの魔力量だ。そのことを考え、そして次の試験があることも考えたうえでやるように。まあ特待の者はこれくらい問題なく壊せた方がいいが……。まあ私からは以上だ。

 何か質問はあるか。ないなら始めるぞ」


 試験監督の男――グレイはその強面の顔で受験者たちを威圧するかのように早口でしゃべり切った。

 質問がある人はおらず、すぐに試験が始まった。


「クラン」

「はいっ!」


 彼は大きな土塊を生み出し石柱へぶつける。石柱は半分に折れた。


「マリ」

「は、はい」


 彼女は緊張した様子で詠唱を何度も噛んだりしつつ水を放つ。石柱を少し抉った。


「ハル」

「……」


 フードを深くかぶった性別がよくわからないその人物は深く息を吐きだすと、一気に石柱に接近し、拳を叩き込んだ。石柱は音を立てて震え、ヒビが広がった。


「ガラン」

「は~い」


 彼は水で石柱の表面に自身の名前を彫った。


 名前がどんどん呼ばれ、前に出て挑戦していく。

 石柱は何度も傷ついたり壊れたりするが、その度にグレイによって石柱が元の形に戻る。


「アリス」

「はい」

(さてと、どうするかな。魔力量は多分あの眼鏡で詳しくは見てるから別にすごいのをやる必要はないけど……)


 グレイは試験開始後から眼鏡を装着しており、それは魔力を感知するとその量を見れるという魔道具であった。


(火力できれいに壊す、一点突破できれいな穴、全部をドロドロに溶かす……。

 うん、ここは目立ってみたいし全部吹っ飛ばそうかな)


 方針を決めると魔力を手に集めていく。

 するとそれを見たグレイの表情が僅かに変わる。


「フレイム!」


 放たれた巨大な炎は石柱を飲み込む。炎はその熱で床をジリジリと焼きながら、しばらく石柱を巻き込んで渦をつくり、爆発した。爆風が部屋中に広がり、砂埃が巻き上がる。

 さすがに火力がデカすぎたとアリスは爆風を受けながらほんの少しだけ反省した。

 少し経つと砂埃が晴れていった。

 石柱があったところは黒く染まり窪みができていた。周りには無残にもボロボロに砕け、床に転がる石だけが残ってた。


「「「!!!」」」


 グレイは分かりにくいが目を見開きそれを見ていた。他の受験者たちも驚きの表情を浮かべていた。そしてざわめきとなる。


「なに今の?」

「なんだ今の火力」

「ヤバすぎない?」

「いや馬鹿だろ。こんなデカいのやれば魔力も空っぽだ」

「それでもすごいだろ……」

「てかあの子かわいくね」

「まあ、確かにかわいいな」

「あとで話しかけようかな」


 ざわめきはどんどん大きくなっていく。

 アリスは全員が自分を注目し、意識し、話しているのをじっくりと堪能していた。


「静かに!」


 部屋にグレイの声が響いた。

 受験者たちのざわめきはなくなってはいないが静かになった。


「試験は続いている。アリス、下がれ。

では次やるぞ」


 グレイはそう言うと試験を再開した。

 アリスは満足そうな顔をしながら下がっていった。

 その後も石柱壊しは続いていったが、アリスほどの火力が出ることはなかった。


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