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16話


 アリスはとハルは特待生用のクラスであるSクラスの教室に来ていた。

 教室に入ると既に3人いた。教室には一クラス分の机が置いてあり、3人はそれぞれ離れるような感じで座っていた。

 顔を本に埋めている少女。

 スヤスヤと静かに眠っている青年。

 一心不乱に何かを書き記している少女。

 そして各自、思い思いに好きなことをやっていた。

 アリスはそれを見ながら前の方の席に座った。その隣にハルは座ってきた。


「なんでよだれ垂らしてんの」


 ハルはよだれを垂らしながら興奮しだしていた。


「みんな強そう。面白そう」

「どんな風に強そうなの?」

「本はアリス並みに魔力いっぱい。寝てるのは力強そう。……書いてんのは良くわかんないけど面白そう」

「へー、そうなんだ。……? どうして魔力量分かんの?」


 当たり前のように言ったがハルは魔力量を測定する魔道具の類は身に着けておらず、なのに本を読んでる少女の魔力が多いことが分かったような口ぶりだった。

 通常魔力は目で見ることはできず、専用の魔道具などを通すことでその量を見ることができる。


「なんとなくブワッて感じのが見える」

「ブワッてのが?」

「うん」


 アリスはハルの抽象的な答えに首を曲げた。


「魔眼の類?」

「魔眼? 知らない。とにかくブワッてのが見える」


 魔眼とはごく稀に人間が持つという特殊な目のことだ。魔眼はさまざまのモノがあり、アリスはハルの魔力量が分かるのを魔眼によるものだと考えた。


「おはよう!!!」


 教室へとても元気な声が響いた。

 入口を見てみると声の主である青年が楽しそうに笑っていた。その隣ではアワワワと緊張した様子の少女がいた。


「ちょっ、急に何やってんの」

「ん? いやこういうのは初期印象だからな、みんなと仲良くするため目立ってみたんだが?」

「私が変な奴の連れって思われるでしょうが!」


「うるさいよ……僕が寝てんのになんで起こすの」


 寝ていた青年が不機嫌そうな顔と声でそう言った。


「いやー、すまんすまん。邪魔をしてしまったか?」

「ああ、邪魔。僕の貴重な睡眠時間を奪わないで」

「こんな昼間から睡眠時間か?

それはもったいないぞ、すごくもったいない。睡眠よりも友との時間を過ごすべきだ」

「友? 別にいないしいらないよ」

「友がいない? ならば俺がお前の友となろう」

「いや、いらないって言ったよね。僕は寝たいんだよ」

「ならば拳を交わすしかないな、さあ勝負だ!」

「なんでそうなんだよ。友とかいらないし、それに僕は寝たいんだ」

「ハッ、ハッハッ。さあやろう!」


 話の流れはなぜか二人が勝負するという風になっていた。

 そして()()……彼女の前でそれを言えば、


「私もやる……。勝負、しよう」


 案の定ハルも混ざっていた。


「君も拳を交わしたいのか! いいぞ二人まとめてやろう」

「うん」

「いや僕はやんないからな! 僕は寝てるんだ! やるなら君らだけでやれ!」

「楽しみだな!」

「キヒッ……」

「聞けよ!」


 哀れにも彼の声など届かず二人は完全にやる気であった。ハルに至ってはあの不気味な笑い声が漏れ始めていた。

 それをアリスは笑いながら見ていた。


(アハハハハ、なにこれ。何だこれ。何この展開)


 さっそく魔術学園?を楽しみだしていた。

 そうやって笑っているアリスの隣へあの元気な青年と一緒にやってきた少女が近づいてきた。


「ほんと連れがうるさくてすみません」

「別に大丈夫ですよ。私的に、本当に面白いんで。

 えっと、二人は?」

「昔からの幼馴染なの。アルトは昔からあんな感じで、まあ元気で。それはそれでいいことなんだけどね」

「へ~」

「これからも迷惑かけるかもしれないけどよろしくね」

「よろしく」

「じゃあ失礼するね」


 そう言うと彼女は離れていき、ほかの人たちの方へ行った。

 その頃、二人を止められないと思った眠りたい青年はついに折れた。


「あー! もう、うるせぇっ! いいぜ、やってやるよ!」

「やる気満々だな!」

「ヒヒッ……」


「私も混ざろうかな」


 こんな絶好の訳が分からない面白展開、見てるだけではつまらないと考えたアリスはそこへ入った。


「おっ、君もか。いいぞいいぞ」

「それと提案なんですけど、いっそのことSクラス全員でやりません?」

「それはいいアイディアだ! クラスで拳を交わし、友となる。なんて素晴らしい!」


 元気な青年はなぜか感激しだした。

 アリスとしてはこの面白展開をさらに混沌とさせ、もっと面白くなんないかなという浅い考えであった。

 もちろんハルの興奮は昇りに昇っていた。


 二人が盛り上がり、一人が仕方がなくやると言い、状況をアリスが混沌に。周りの人たちはマジ?という顔となっていた。


「話は聞かせてもらったよ」


 そこへ声と共に一人の女性が入ってきた。

 彼女はふっふっふと意味深に笑いながら教壇に立った。


「私がSクラスの担任のカレンだよ。気軽にカレンちゃんて呼んでね。

 今日はこれからクソ面倒な話をだらだら話す予定だったけど……なぁに? みんなすんごい盛り上がっちゃって」


 ほんの何人かはこの盛り上がりを止めてくれるのだと期待した。


「そんな面白そうなことOK、OK、やっちゃって。みんな拳を交わしあっちゃって」


 だが彼女の口から出たのはそんなノリノリの言葉だった。

 期待していた何人かは肩を落とす。

 青年&ハルは大喜び。

 面白そうなことになってアリスも大喜びだ。


 というわけでガイダンスなどはそっちのけでクラス内バトルが始まることとなった。


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