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13話


「………………!」


 アリスが目を覚ますとそこはさっきまで戦っていた森の中ではなかった。何日かぶりの柔らかいベットの上だった。


「ここは、確か……」


 アリスは体を起こし、周りを見渡した。周りは白いカーテンに囲まれていた。何やら不思議な匂いもしてくる。

 この場所にアリスは見覚えがあった。魔術学園の医務室だ。


「痛たっ」


 痛みを感じた、体を見てみると簡素な服に着替えさせられてた。服の下には包帯に巻かれたボロボロの体があった。だがその痛みも戦闘中に比べるとかなり和らいでいた。

 するとカーテンがバッと開かれボサボサ髪をした白衣の男が現れた。


「目、覚めた? 意識ははっきりしてる?」

「あっ、大丈夫です」

「そっ、それは良かった。しばらくしたら担当来るからちょっと待ってろ」


 男はアリスへ確認をするとそう言ってカーテンを閉めた。カーテンの外では作業する音がする。よく耳を澄ましてみれば、寝息や息遣いなどが聞こえ、他にも人がいるということが察せられた。ひどく静かな医務室ではその音だけが響いていた。

 アリスは自分の怪我を見つつハルとの戦いのことを思い出していた。


(殴って、飛ばされて……どうなったんだ?

 試験は?

 それにあの子は……?)


 最後に少女に正拳突きを入れられ、その勢いで飛ばされたまでの記憶はあったが、そこから先は何があったのか思い出せなかった。

 あの後試験はどうなったのか? リタイアとなってしまったのか? 集めたコインは? 多分大丈夫だろが、まさか0点扱いになったりはしてなよな?

 様々な不安が脳内を巡っていた。


 しばらくすると何やらにぎやかな声が医務室へ近づいてきた。そして扉が開く音がし、カーテンが再び開いた。今度現れたのは試験監督のアプルだった。


「グッモーニング、アリスちゃん」

「えっと、私はどうなったんですか?」

「模擬戦してたのは覚えてる?」

「はい」

「アリスちゃんはねハルちゃんと戦ってそのまま気絶しちゃったの。どっちもかなりの怪我もケガだったから、まあこちらの判断でリタイヤにしたよ」

(引き分け、いや負けかなこれは。まあ楽しかったから良しかな……)

「あっ、でも集めたコインは0扱いとかにはしないから安心してね]

「良かった……」


 アリスは安心し、肩を下した。アプルはその様子を見ながら何かお思い出したかのような顔をして言った。


「ちなみに隣のベットで寝てるのが君と戦ってたハルちゃんだよ」


 そう言ってアプルは隣のカーテンを開いた。

 そこにはアリスの方を見てる少女――ハルがいた。ハルは何かを言いながら頭を下げると、布団へもぐりこんだ。だが声が小さくアリスは聞き取れなかったが、なんとなく頭を下げ返した。

 その様子は森でのものとは全く違っていた。もはや別人のようにも感じられた。だがその姿があの森で戦った少女の姿であることが、何よりの証明であった。


「良いね~、青春だね~」


 アプルはそれを見ながらニヤニヤとしてそう言った。


「おいアプル、うるさい、静かにしろ。やることはさっさとやれ」

「分かってますよ」


 アプルは書類を二枚取り出すと、それをアリスとハルへ渡した。それは合格証明書だった。


「2人とも合格おめでとう。こんなにすごい特待生が入るとはなかなかにうれしいよ。

 最後までギリギリを争った2人同士、学園生活でも今回の試験みたいに切磋琢磨していってね」


 魔術学園への入学、それはとても軽く出来事のように知らせた。だがアプルの言葉には確かな祝福が入っていた。

 アリスは余裕で入学できるだろうと考えてはいたものの、やはりうれしいモノであった。


 その後これからの簡単な説明がされた。

 内容は、既に治療は終わっているため、念のため一晩医務室で療養したら寮の部屋へ移動。入学式まで準備などをしたりして過ごす。などであった。

 話し終わったアプルは「それじゃあ」と言い部屋から出ていこうとした。


「それと君たち相室だから。はい、これが鍵」


 扉の前で止まり、小さな鍵をアリスへ投げ渡した。

 アリスは金なし宿無しのため、合格できたらそれと同時に寮に入れるようにしていた。寮は相部屋となるのは知っていたが、それが最後に戦っていたハルになるとはと、アリスは驚いていた。

 横を見るとハルが布団から顔を出し、アリスを見ていた。


「えっと、これからよろしく?」

「よろしく……」


 ハルからの声は小さなものだったが、今度はアリスの耳に届いた。


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