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12話


 アリスは周りが燃えるのを気にせず、どんどん炎を放っていった。炎は当たることはなかったが、足止めにはなっており、ハルを接近さていなかった。

 だが掌底と正拳突きのダメージが抜けているわけではなく、着々と体を蝕んでいた。


(長期戦はムリ。かといってこっち攻撃は当たらない。下手な範囲攻撃だとさっきみたいに炎を突っ切って接近される……。やるなら一撃でやらないと……)


 一方ハルのほうは服の端が炎で焼かれ少し黒くなっているくらいで目立った変化は一切なし。疲労している様子など少しもなかった。むしろますます早くなっているように感じられた。


 炎が地よりハルの足を狙い這進む。それをバックステップで避けていく。


「ヒヒッ、楽しいな……」

「ええ、楽しいですね!」


 大変な戦いであった。ついこの間までは研究三昧の戦闘経験が全くなかった人間がやることではなかった。だがアリスはこの状況を楽しんでいた。


「ヒッヒ、じゃあこんなのはどうだ?」


 そう言ったハルはその場で横蹴りをした。アリスにはどうやっても当たりはしない距離だ。そのときアリスの頭に浮かんだのは()()()()()。アリスはすぐさまその場を離れた。

 アリスがいたところで砂埃が舞う。


「ヒヒッ、どんどん行くぞ!」


 次々と蹴りを放っていく。その度にものすごい風圧が衝撃波を生み、アリスを撃たんとする。そこへ拳も混ざり、衝撃波の数は増していく。

 魔術で相殺しようとしたが、炎は容易に吹き飛ばされ、霧散してしまう。


「こんにゃろ……」


 アリスは何とかハルへ攻撃を当てるべく頭を回す。

 必死にどこかスキがないかと探すアリスであったが、そんなものは見当たらなかった。目の前に映るは、不気味に笑いながら攻撃を出し続けるハル。技のキレは時間が経つにつれて良くなっていき、回避するのも難しくなってくる。

 辺りの木々は燃え上がり、アリスの体力をジワジワと奪っていく。だが撃つのをやめてしまえば、その瞬間アリスの体にはさっきの掌底や正拳が叩き込まれるだろう。


(こうなったら、今すぐにケリをつける)


 アリスは決心すると今までの倍以上もの数の炎をつくり、ハルを囲うように攻撃を仕掛けた。

 例えここまで多くても、このままでは一部分をほかの炎のようにやったように衝撃波で霧散され、囲いなど壊されるだろう。だがそれは炎がこれだけだったらの話だ。

 アリスは炎を放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。放つ。

 放ち続けた。

 炎たちはハルを飲み込んでいく。中からは空気が破裂するような激しい音が何度も炸裂する。その勢いは炎を放ち続けていたアリスの肌まで届いていたが、炎の檻が破られることはなかった。

 しばらくするとその音も静かになっていき、そして聞こえなくなった。


「はあ、はあ、はあ…………。

 も、もしかしてやりすぎちゃったか?……」


 アリスは肩で息をしながら言った。


「ヒャハッ」

「!」


 だがそんなアリスの思いとは裏腹に段々と火力が小さくなっていく檻の中から笑い声が聞こえてきた。そして中から何かが飛び出す。

 心臓を握られるような思いだった。

 アリスはそれに向かって渾身のフレイムを放つ。

 それはふわりと舞うように進み、炎と衝突。燃え上がった。


「……ミスった」


 燃え上がったものを見てアリスはすぐに失敗を悟る。

 それはハルが着ていた()()だった。

 檻をつくっていた炎は消えた。そこには誰もいない。ハルの姿を探すがどこにもいなかった。

 ハルは自身の外套をおとりとして攻撃させ、その攻撃に隠れ脱出したのだ。


「!」

「ヒヒッ! こっちだよ!」


 そのとき背後から気配を感じるとともに笑い声が聞こえてきた。


(やばいやばいやばいやばいやばい)


 頭の中で警報が鳴りまくる。

 これはハルの間合いだ。この距離では魔術より拳の方が早い。


 掌底が背中へ当てられる。

 再びあの衝撃が広がっていく。

 体が痺れる。力が抜ける。そのまま倒れそうになる。

 だが、


「もう……、もうひと、踏ん張りだっ!!」


 アリスは踏み止まる。後ろを振り返る。敵を見据える。

 そこにいたのはボロボロになった小さな少女だった。少女はニカッと笑いながら正拳を放つ。

 アリスは少女へ拳を放つ。

 両者の攻撃はほぼ同時に両方へと命中した。

 アリスの体が九の字に曲がり吹っ飛ぶ。

 少女の顔が横へ殴り飛ぶ。

 少女が二人地に落ちた。

 そして……


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