一期一会
「余命宣告されました。」
画面を適当にスクロールしていた手が止まった。
"死にたい"と漠然と思っている僕は、自分と同じように人生に行き詰まっている人をTwitterで探していた。
案の定、Twitterにはそういう人が溢れていて、僕は「死にたい」とか、「消えたい」なんてツイートをしている人を見ては孤独感を埋めていた。
しかしどの人も、皆死にたいと言うだけで実際には死なない。
それは暗黙の了解のようなものだった。
僕達のような、"死にたい"と思うだけの人達は、死ぬのが怖いのだ。
「死にたいんじゃなくて消えたい」
そういうツイートもよく見る。
所詮、なんて言うと失礼かもしれないが、今"死にたい"と思っている人達の大抵は、今いる環境が辛いだけなんじゃないか。
今を生きるのが辛いから"死にたい"なんて思うんだ。
誰もいないどこか遠くへ行ってしまいたい。
そんな思いを短くまとめた結果が"死にたい"なんだろう。
だから、本当に死が目前にある人を、僕は初めて見た。
その人のアカウントを開いた。
名前は、ハル。
過去のツイートの内容は、どれもこれも僕が見てきた様な、「死にたい」とか「消えたい」とか、そういうものばかりだった。
しかしハルは、余命を宣告されている。
念願、だった死が目の前にある事を、どう思っているのだろう。
そんな疑問が僕の頭をよぎる。
迷う前に、指が勝手にハルをフォローしていた。
それから僕は、毎日ハルのツイートを見た。
彼女のツイートは以前と大して変わらなかった。
変わったものといえば、そのツイート一つ一つの言葉に重みができたこと、だろうか。
「人生に疲れた。」
「自分が生きている意味ってなんだろう。」
「自分が友達と思っていても相手の気持ちは分からない。」
ああ、ありきたりだなぁ。
正直な感想だった。
思春期鬱、というものだろうか。
学校という狭い空間に閉じ込められた学生がよく悩む内容だろう。
余生を楽しもうという気持ちは、ハルのツイートからは感じられなかった。
むしろ、早くその時が来るのを待っているかのような、顔も歳も知らないハルから、どこか寂寥感を感じた。
この度はお読み下さり、ありがとうございます。
初めての連載小説で至らぬ点も多々ありますが、
最後までお付き合い頂けると幸いです。