ショートショート:「全自動」
「やった、ついにできたぞ!」
家庭機器などを主に販売している大手会社、「HS」は、一年前からあるものを発明していた。
そのあるものとは、つまり、「ロボット」である。ロボットを作るなら、とっくの昔に「HD」がやっているし、「KU」や「ST」などの大手会社の他にも、いくつかの中小企業が作っていたから、普通のもののわけがなかった。
この会社のとある社員Sは、ずっと前からあることについて困っていた。
Sは、非常にめんどうくさがりやである。タバコに火をつけるのもめんどうくさい、トイレの水を流すのもめんどうくさい、しまいには歩くのでさえめんどうくさかったのである。
だが、仕事には熱心であった。会社からも評価され、出世間違いなしエリートであった。
ある日、会社で会議が開かれた。「今までにない、新しく、便利な機械を考える」という議題であった。めんどうくさがりやなSは、とっさに「全自動ロボットはどうでしょうか」と言った。
仕事熱心なSは、知識も豊富であり、ロボットの設計図もだいたい構想していた。普段から、欲しいと思っていたからだ。
そして、開発から一年、とうとうこのロボットが完成したのである。
Sが実験台となり、どんな効果があるかためされた。
大成功であった。ちゃんと動作してくれる。すぐに、販売が開始された。
値段はしょうしょう高めであったが、購入客からは大好評で、その噂をききつけたたくさんの客から注文が届いた。
それから約五年後の、とある家庭をのぞいてみよう。
「もういいって。そんなの自分でやるから。」
ロボットが、一人の男のズボンのチャックを下げ、用をたさせようとしていた。また、お風呂に入っている女の体洗いも、ロボットがやっていた。
「痛い痛い。そんなにごしごしこすらなくてもいいよ。」
「あーん、そのプラモは僕が組み立てたかったのにい。」
また、他の家庭では、こんな光景も繰り広げられていた。
「はあ・・・金が少ない。このままでは家族そろって飢え死にだ。」
「いっそのこと、一家心中でもする?」
「冗談はよせよ。死んだらもったいない。母さん、お前も働いてくれ。そうすれば・・・」
そう男が言っているとき、ロボットが大きなショベルを体にとりつけ、男と女、それにその子供を持ち上げて、ベランダから落とした。