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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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手紙の真相

リアムの日記5あたりの時間軸のお話

リオ視点


リアムとティアからシアへの手紙をエドワードから預かった。

シアがいないけど、書斎か?

書斎をノックして入ろうとすると制止の声がかかった。


「ごめんなさい。すぐ出ていくので、空けないでください。片付けます」


本を散乱させて読みふけっていたのか・・。俺に怒られると思ったんだろうな。

睡眠と食事さえとれば、散らかしても文句は言わないんだけど・・。


リーファを連れたシアが出て来た。

シアに手紙を渡すときょとんとして手紙を開封して読み始めた。


シアが震えだしたので、慌ててリーファをシアの腕から抱き上げた。

シアの横から手紙を覗いた。


母様へ


元気ですか?初めて手紙を書くのは照れますね。

今日の授業で褒められました。僕は父様にそっくりだって。

またお手紙書いてもいいですか?  リアム


普通の内容だよな…。


「シア、どうした?」


シアの目から涙が溢れていた。


「シア!?」


抱き寄せてしばらくすると落ち着いた。こんな状態でも眠っているリーファは将来、大物になるかもしれない。


「嬉しくて、手紙ってこんなに素晴らしいものだったんですね」


涙を拭いて愛しそうに微笑むシアに見惚れる。こんな顔を自分以外がさせてるのが悔しい。息子相手に複雑だ。

シアにとっての手紙は良いイメージの物はないんだよな。嫌がらせか社交辞令か招待状。

こんなに喜ぶんだな。

シアから手紙が来ないからって意地をはらずに、手紙を書いてやれば良かったかな。俺も若かったから仕方ないか。

セリアがリオ様からの手紙だと無理ってあざ笑う顔が脳裏に浮かんだけど、忘れよう。

リアムからの手紙を愛しそうに眺めているシアにティアの手紙のことを教える。

息子に妬いてるんじゃなくて、ティアがきっと拗ねるからだ。ずっとリアムの手紙を眺めて幸せそうなシア。やっぱり悔しい。シアは俺にはこんな顔はしない。


「ティアはなんだって」


シアがティアの手紙を開封した。


母様へ

ティアは元気です。

母様はティアが好きですか?ティアよりマートン様のほうが好きですか?

ティアは寂しいです。お手紙書いたらティアにもお返事くれますか?    ティア



ティア、何があったんだ?

シアはクスクス笑い出しました。


「マートン様は存じませんがティアより好きなんてありえません。手紙って凄いですわ。リオ、私はお買い物に行ってきてもいいですか?」


目を輝かせたシアに見つめられた。


「俺も行くよ」

「リーファを見ていてください。すぐ戻りますわ」


絶対に今のシアは一人で行動させたらいけない。

興奮してるから。サーカスを前にした子供の頃のシアとそっくりだ。目的のもの以外は目に入らない。


「母上に預ける」

「私、一人で平気です。行ってきます!!」


シアが飛び出して行った。


「主、レティ、ローブ忘れてる」


「フウタ、シアに急いでローブを届けて戻ってきて」

「わかった」


フウタが行ったから大丈夫だろう。ローブを忘れるほど興奮してるのか。きっと馬で行ったな。

シアは知らないけど、ルーンの使用人はシアが帰ってきてることを知ってるからいいけどさ。教えたら喜々としてケイトやダンの傍に入り浸るからシアには教えるつもりはない。気づかないシアに驚きだけど。

ルーンはマールよりも守秘義務を徹底しているから安全だ。シアのことを外に漏らせば命はない。ルーン公爵家の使用人はシアに骨抜きにされてるから、そんなことしないだろう。それにルーンの怖さを知っているから間者や裏切者が出たことはない。叔父上とエドワードが知を叔母上が武で抜け目がない。執事長も曲者だ。間者は叔母上が追って、仕留めるだろう。叔母上は社交は苦手でも直感がすごいから、外敵は見逃さないと母上が言っていた。だからルーンの使用人の最終面接は叔母上が隠れて見ているらしい。


俺はリーファを抱いてエドワードの所に行った。


「エドワード、リーファを預かってくれ」

「姉様は?」


第一声がシアのこと。このシスコンはいつになれば治るんだろうか。


「リアム達の手紙に感動して飛び出して行った。あとを追うから」

「わかりました。」


リーファを預けて、戻ってきたフウタに探させると町にいた。

シアはやっぱり馬で行ったな…。馬を預けてフウタの後を追う。



露店の商品をうずくまって真剣に見ているシアを見つけた。

シアに声をかけてる周りの奴らには気づかないみたいだ。ローブを着ても声をかけられるのか・・。周りの男に殺気を飛ばすと逃げていった。

シアの肩を何度か叩くとようやく振り向いた。驚いた顔をしている。


「リオ?」

「リーファは預けてきた」

「わかりました」


リーファのことを聞いたらシアは俺への関心をなくして視線を商品に戻した。

シアが便箋を見て、悩んでいる。


「シア、全部買えば?」

「いえ、そんなにはいりません」

「余ればティア達にあげればいい」

「便箋もいいけど、絵葉書も、どうすればいいんでしょうか」

「シア、他にも店はあるから」


シアが見ていた物を購入し、手を引いて移動した。

露店じゃなくて、貴族御用達の店に連れて行くか。シアは行ったことないだろう。店に入るとシアの目が輝いた。露店の商品よりは質が良く、デザインも豊富だ。この感じだと露店の商品はそれほど気に入ったわけではないのか。あの中から相応しいものを選ぼうと必死だったのか。店を移動することさえ気づかなかったのか・・。


「どうしましょう。ティアはこれが好きかしら?紙の素材が、リアムは、うーん。これ、可愛い!!」


シアが店から動かない。シアはあんまり物欲がないから、物を見て興奮しているのは珍しい。本と蜂蜜以外で見たことはない。

またシアが目に止まった商品を適当に購入していく。このまま放っておいたら閉店時間になりそうだ。いつまでもシアを見ていたいけどエドワードに預けてきたので、そろそろ帰らないと。

エドワードも忙しいからな。それでも侍女に預けずエドワードが面倒を見てるだろうが・・。


「シア、そろそろ帰ろう。もう買ったから」

「え!?」


驚いた顔をするシアの手を引いて店を出て歩くとシアの足が止まった。

今度は栞をじっと見ている。シアが即決して購入したな。これで帰れるか…。

昼に出たのに、外は暗くなっていた。

エドワードからリーファを引き取り、別邸に帰った。

食事をして、リーファを寝かして、寝ようとしたけどシアが寝室に来ない。

リーファをフウタに頼んでシアを探すと書斎で唸っている。

周りには書き損じた手紙の山がある。こんなに書いたの?大量に買っておいてよかったかもしれない。このままいけば足りなくなる。


「シア、どうした?」

「お返事が上手にかけません」

「シア、このままだと便箋なくなるから下書きしようか。」

「うーん。どうしましょう」



俺の言葉は耳に入ってないな。

2時間たってもシアは出てこない。書き損じた便箋を読んでも何が気に入らないかわからない。

俺はリアム達に返事が遅れる謝罪の手紙を書くかな。シアはこのまま、放っておいたら倒れるだろう…。

昔から興奮して夢中になるといつも倒れるんだよな。それにきっと便箋が足りなくなる。

俺はリアム達への手紙を書いて、シアを宥めて寝かせることにした。翌日また便箋を買いに出かけて、手紙が書き上がったのは夜だった。これで一安心かと思った俺は甘かった。


***


早めに仕事が終わったので家に戻るとシアがリーファと一緒に書斎にいた。

書斎から大きな音がして、駆け寄るとシアが俺の顔を見て固まった。これは、何かやらかした時の顔だよな。

床に落ちている本を拾うと、シアが読むには簡単すぎるものばかり。学生の低学年向けの本だよな・・。シアが机の上を慌てて片付けているけど、大量の手紙が目に止まる。ルリ宛だった。嫌な予感がして一通、手に取り開封する。シアの制止の声は聞こえないフリをする。


ルリ様へ

アドバイスありがとうございました。

おかげで成功しました。またおすすめの本を教えてください。



「シア、どういうこと?」


シアが目をそらした。


「お友達からのお手紙です」


重ねてある手紙に目を通すと知らない名前ばかりだった。


「俺の知らない友達がこんなにいるわけないよな。正直に話さないと」

「言います。怒りません・・?」

「内容による。無理矢理言わせるのと自分で言うのどっちにする?」


顔を青くしたシアから聞いた内容に絶句した。セリアと一緒に変装して学園に行った!?なぜか挨拶したら手紙を貰うようになり律儀に全部返事をしていたらしい。しかも随分前から…。


「シア、リアムとティア以外の手紙は俺が返事を出すよ」

「私に貰った手紙ですから、きちんと対処します」


シアは責任感強いもんな。


「書いたら全部俺に預けてくれる?きちんと書けてるか確認するよ。シアは知らないけど学生の手紙にはルールがあるから、ちゃんと書けてるか確認するよ」

「お仕事大変でしょ?ルールを教えていただければ」

「俺は優秀だから。それにシアが癒やしてくれればいいよ。今夜は叔父上の願いを叶えようか」


リーファを抱いたシアを抱き上げて寝室に行く。

まだ昼と騒ぐシアの言葉は聞こえない。リーファはフウタに任せよう。


***


翌日シアの書いた文章に一筆書き加える。シアの筆跡を真似るのは簡単だ。

遠方に行くので返事は書けない。自分のことは忘れて下さいと。

これでも手紙を書くやつには不幸の手紙を書くかな。

シアがセリアとの仲を取り持ってほしいと頼まれたという手紙を見て、シアが鈍くて良かったと思った。これを書いたのは、リアムが言ってたマートンだろう。レティシアの名前が書かれて、ほのかにルリへの恋慕も。バカだよな。シアはお前になんて、捕まらないよ。触れるのも許さない。マートン侯爵になろうと王になろうともな。シアは俺だけのものだから。


俺の腕の中で無防備に眠るシアを眺める。

今度からはセリアとシアが出かける時は絶対について行く。セリアは、絶対に面白がってシアを振り回すから。シアはセリアに弱いからすぐに流されるんだよな。

もし過去に戻れるならセリアと友達にならないように手を回したい。シアには俺だけの世界になってくれればいいのに。俺は過去に戻ったらシアよりもうまくやれると思うんだけどな。


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