レティの情報2
カナ兄様が訪問してます。今日は森の国の話が聞きたいそうです。
森の国とはもともとフラン王国とは交易がありませんでした。ただ森の国は貴重な素材が多いので今後は親交を深めることも視野にいれているそうです。フラン王国には森の国の情報はあまりないそうです。
「森の国の特色はギルドと貴族の結びつきの強さです。私が訪れた国の中では国とギルドの結びつきの強さは一番です。森の国は魔力を持つモンスターが多いため、冒険者や魔道士が重宝されます。他国からの冒険者も歓迎します。民も冒険者に好意的です。冒険者を通して、情報を手に入れ、国を強くしているそうです。よそ者にも優しい森の国は移民も多いそうです。森の国の将軍は冒険者としてAランク以上の資格を持つことが条件なので、森のギルドには貴族が紛れていることも稀にあります。王子様がお忍びで現れても、誰も驚かないそうです。ギルド長は王族とも面識があり、ギルドの中では無礼講で、身分の貴賤はないそうです。森の国の王族の始祖は冒険者だったと言われているそうです。本当かどうかはわかりません。」
「知らなかったよ。冒険者が起こした国か・・。移民が多いのは知っていたけど、そんな理由があったのか。レティは王族に会った?」
「いえ、私はギルドでは王族や貴族とはお会いしたことがありません。ただ一人だけ珍しい魔法を使う魔導士がいました」
「珍しい魔法?」
カナ兄様が口角をあげ興味がある時のお顔をしました。
「森の国には移動する魔木と言われる木があります。追いかけてくるんです。ただたった一人だけその魔木を使役する魔導士の方がいました。特別な血を持つ者しか扱えない魔法らしいです。この魔法のおかげで、木こりはいらないそうです。
初めて見たときは驚きました。
魔道士が笛を吹くと、動いている木が一斉に動きを止めました。音もなく呪文を唱えると、魔木が薪になったんです。魔木は魔力が宿っても意思はないそうです。この魔木で作られた建物の中で生活すると、体に魔力が満たされます。魔木は自然界の魔力を吸収してくれるので、とても重宝されています。ただ魔木は決った魔法でないと材料にすることはできないので、とても高価と言われています。私はあまりに見事だったので魅入ってしまいました。ぼんやり見ていると魔木について解説をしてくれました。森の国の冒険者は親切な方が多いんです。
「ルリ、魔木に魔法をかけてはいけない」
「どうしてですか?」
「魔木は魔力が大好物だから気に入られると吸収される。特に水や土の魔力を持つものは要注意」
恐ろしい言葉に固まりました。魔力が吸収されて、ミイラになんてなりたくありません。私はディーネを抱きかかえました。
「その笛があれば安全ですか?」
魔道士に渡された笛を吹いても音が鳴りませんでした。
「この笛は特別な者しか吹けない。ルリがずっと一緒にいてくれるなら教えてあげるよ」
私はずっと森の国にいる予定はなく、魔木のために修行する気は起きませんでた。
「お気持ちだけいただきます。ありがとうございます。」
「ルリなら大丈夫だよ」
「いえ、私はいずれこの国を出ますので」
「森の国は気に入らない?」
私は貴族と関わりのあるギルドが怖かったので、力がついたら国を出る気でした。
「いえ、私は貴族と関わらない世界にいきたいんです。」
「私なら貴族と関わらない暮らしを与えてあげるよ」
私は少しだけ悩みました。その頃は、まだ森を抜けられるほどの力はありません。ギルドでの生活は無礼講と言われても時々王族や貴族がいると教えられていたので警戒してました。部屋はギルド長が格安で貸してくれました。森の国のギルド長は所作が綺麗な方でした。
「ルリ、駄目。嫌な感じがする」
ディーネが嫌がるなら答えは一つです。
「私はディーネと二人で頑張ります。」
「残念だ。もし気がかわったら教えて。うちの国で困ったことがあればこれを見せて。きっと助けてくれるから」
魔道士から木片をいただきました。お断りしたんですが、無理やり預けられました。その後から魔道士に会うことはなくなりました。」
「レティ、その木片は持ってる?」
マジック袋の中から取り出して、渡しました。リオとカナ兄様が見つめあってます。
「レティ、これ貰ってもいいかな?」
「はい。どうぞ」
「リオ、何をしに森の国に滞在した?」
「兄上の望みの手形と情報は手に入れましたよ」
リオに教えてもらいましたが森の国の貴族は手形を渡す習慣があるそうです。その手形も種類豊富で様々な使いみちがあるそうです。
「お前が手に入れたのは、商人との取引用。レティのものは貴族や王族への厚遇」
貴重な物をいただいたとは知りませんでした。カナ兄様に言われるまで、木片のことを忘れていました。
「そんな凄い物をいただいたんですね。私はなにもお礼をしてませんわ。」
「シア、勝手に押し付けられたんだから気にしなくていい。」
「魔物を操れるのは怖いな」
「そうですね。ただ知能の低いものしか操れないそうです。選ばれた血のものの、血と魔力に染められれば他の者もその力を得ることができるそうです。ただとても時間がかかることなので、生涯を誓った相手にしか与えない力だそうです」
二人にじっと見つめられます。
「レティ、どれだけの人に求婚された?」
カナ兄様の冗談が言うのは珍しいです。
「私は男装してましたので・・。3度ほど縁談の仲介をいただきました。未成年の冒険者への親切心ですわね。」
リオの視線が痛いのはどうしてでしょうか・・。
「レティ、リオ以外からの贈り物を見せてくれる?」
「カナ兄様、申し訳ありません。あとはリオとセリアに渡しました」
「リオ」
「兄上、そろそろ戻りませんか」
「久々に兄弟で話をしようか。よもや物の価値がわからず捨てたりしてないよな」
リオがカナ兄様に連れられて、出て行きました。兄弟水入らずの時間も大切ですよね。マジック袋は容量が大きいのでついつい入れたまま忘れてしまうものもあります。マジック袋の中身を出したら、よくわからないものがたくさんありました。処分しようとしたらセリアに怒られたので譲りました。貴重な研究材料がたくさんあったそうです。セリアが欲しい物は譲りました。私には必要のないものですから。
***
おまけ
「愚弟」
「他の男からの贈り物なんて、当然捨てますよ。シアは贈り物を換金するのは気が引けたようなので、俺に譲ってもらいました」
「貴重なものを。レティはどこの国でも王族と会ってるんだな」
「砂の国は会わせてません。シアへの王族からの依頼は断りました。しがない冒険者が王族に…。」
「引きが強いよな。」
「俺は森の国のギルドでは貴族も王族も会いませんでしたよ」
「レティを一人で放り込んだら、貴重な情報を引き出してきそうだよな」
「絶対に許しません」
「お前がいたら邪魔するだろうが」
「妻に近づく男は排除するのは当然です。もう俺達は充分働いたので、当てにしないでください」
「レティシアはな。お前は足りない」
「レティシアは俺の妻です。妻の功績は俺のものです。」




