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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティの情報1

リアム達の妊娠中にマール公爵家でお世話になっていた頃の話。

リオのお兄様のカナト兄様が訪問されました。カナ兄様はよく旅の話を聞かせてほしいと訪問されます。今回は海の皇国でのお話を知りたいそうです。いつもは私がお話を聞かせてもらっていたので不思議な気持ちがします。


「船を下りると海の皇国につきました。船の中で海の皇国のことを教えていただきました。海の皇国では魔石の価値が下がります。魔法の系統が違うので、ほとんどお金にならないようです。大きいギルドがあるので、向かうことにしました。ギルドは国によって特色が違います。海の皇国のギルドは自己責任なため自由です。冒険者が無理な依頼を選んで死んでも自業自得なのでランクづけはなく、好きな仕事を選べるそうです。依頼から帰らなくても捜索されません。ただ失敗すれば報酬はありません。報酬はすべてが後払いで前金もないため、準備も自分のお金でやらなければいけません。この頃は海の中でもディーネの水魔法が使えることがわかったので海の中での採集依頼を持って手続きすると怪訝な顔で見られました。


「自己責任ってわかってる?」

「はい」

「ならいい。気をつけて」


ギルドの事務の方に素っ気なく言われましたが気にしません。マジック袋を腰につけて、水の膜で体を覆い飛び込みます。採集すべきものはギルドの本で調べました。ディーネと一緒に泳いでいると

目当ての虹色の魚を見つけました。この魚の涙は輝いていて非常に価値が高いそうです。


「ディーネ、どうすれば泣くんでしょうか・・」

「私が行ってくるわ」


ディーネが魚と話してます。魚に意思があるんですね。ディーネに呼ばれて近づくと魚の目から涙が出たのでありがたくマジック袋に入れました。


「ありがとう。助かりました」


魚は泳いで去っていきました。ディーネはすごいです。その後もいくつか採集をして海から顔を出しました。


「生きていたか!!」

「全然、上がってこないから」


飛び込んだから心配をかけたのでしょうか・・。

私が海に飛び込む前の視線と向けられる視線に戸惑いましたが気にすることはやめました。


「ご心配ありがとうございます」


礼をしてギルドに戻り採集品を渡すと驚いた顔で見られました。


「は?」

「足りませんか?」

「この短時間でどうやって」

「海に潜っただけですが」

「潜っただと?いい。換金しよう。御苦労だった」



不信な目で見られてますが気にしません。お金が手に入ったので宿を取って休むことにしました。


「落とし子かい?」


宿屋の女将さんに期待をされた目で聞かれました。


「違います」

「言えない事情もあるわよね。これもどうぞ。」


上機嫌なおかみさんが1品おかずをくれました。ありがたく頂きました。子供の冒険者に同情してくれたんでしょうか。


「安くするからまた泊まって。食事代はいらないわ」


お金は貴重なのでありがたい申し出に甘えて当分はお世話になることにしました。私はディーネと一緒に海の魔物の討伐や採集の依頼を受けてお金を貯めていました。

海からあがると、綺麗な男性に肩を叩かれました。


「苦労をかけたね。迎えにきたよ」

「申しわけありません。どなたか教えていただけますか?」

「君の兄だ」

「私に兄はおりません」

「見つけてあげられなくてすまなかった。何も知らないのも当然か」


落とし子とは皇帝の血を引く者のことです。海の皇国の魔法は遺伝なので、海の魔法の使い手は皇族の血を引くことになるそうです。皇族の血を引いていても、皇族とは名乗れません。目の前の方は元皇子で今は魔導士だそうです。海の皇国では継承権争いが起っているそうです。海の皇族は上位・中位・下位と分けられているそうです。上位のみが継承権をもち、中位は他国でも皇族として扱いを受けられる、下位は名ばかりの皇族とのことです。上位皇族以外はほとんど力がないので、上位皇族の傘下に入る必要があるそうです。ロダ様は中位皇族だったのでしょうか・・。目の前の元皇子の魔導士様は第二皇子の勢力だそうです。

話を聞いて言葉を失いました。私は瞳を緑色に変えていたため落とし子と勘違いされました。


「申しわけありませんが、人違いです」

「これからは僕が守ってあげるよ。兄上にも紹介してあげる」

「私はこの国の者でもありません。単なる冒険者に過ぎません」

「君の魔法を見ていたよ。皇族として相応しい。それにその外見も皇族として申し分ないから安心して。兄として大事にしてあげるよ」


肩に置かれる手を水魔法で振り払い、逃げることにしました。皇族とは関わり合いになりたくありません。宿屋には、ディーネに手紙とお金を置いてきてもらいそのまま海の皇国を旅立ちました。」


カナ兄様の楽しそうな顔に見つめられます。


「レティ、わかる範囲で教えてほしい。まず、海の皇国の本は国外に出回っているかい?」

「いえ、海の皇国は情報規制が厳しいため、ほとんど出回ることはありません。ギルドには依頼に必要な本が置いてありました。貴重な本なので持ち出し厳禁とされていました」

「覚えている限りでいいから、複写できるかい?」


私は図鑑ばかりを読んでいました。


「カナ兄様、私は絵がかけません」

「絵はいらない。名前でいいよ。海の皇国の特産物は高級品だから、入手方法がわかると非常に助かる」


特産物を海の皇国以外から入手できないか知りたいんですかね。外交官は情報戦と聞いたことがあります。カナ兄様のお役にたつなら頑張りましょう。


「わかりました。」

「ありがとう。落とし子は民に好かれていた?」

「はい。民には海の魔法と他の魔法の区別はつきません。私の魔石やディーネの魔法も彼らには海の魔法に見えたようです。民の中では風と水の魔法が主流なようです。魔法が使え、薄い水色か緑の目を持っていれば髪の色は関係なく落とし子として大事にされます。よそ者には厳しいですが、落とし子と勘違いされたから態度がかわったんだと思います」

「わかる範囲でいいから海の魔法もまとめてくれる?落とし子として紛れこんでみたい」

「かしこまりました。」

「皇族の話はどこまで知られているかわかるかい?」

「民達は階級のことは知りません。ただ上位皇族の方は民達への影響力も強いので人気がありました。継承権争いの話も知られてませんでした。ただ私のお会いした方が皇族かどうかはわかりません」

「そうか。ありがとう。今日はここまでにしようか。また聞かせてくれるかい?」

「はい。私の話でお役にたてばいいのですが」

「うちの愚弟よりも役立つ情報だよ。リオ、お前の報告書抜け過ぎだ」

「俺は聞かれたことはまとめてます。頼まれたことも」

「最低限な。レティ、まとめるのはゆっくりでいいから。書くのが面倒ならリオに代筆させてもいい。海のギルドの本も気になるな」

「噂では海の皇国のどこかに秘蔵書庫があるそうです。そこには禁書や国に許されず消された本もあるそうです。いずれ行ってみたいですね。」

「シア、どこでそんな情報を?」

「宿屋やギルドですかね。ギルドの職員の方は冷たい分、冒険者の方が親切でした。当時は生きていくために情報を積極的に集めてましたから。宿屋では食堂で食事をするだけで、皆様色々お話してくれました。嘘か本当かわかりませんが」

「なんで目撃情報なかったんだ・・・」


リオは海の皇国も訪ねたと言っていました。


「たぶんですが、旅人だからですよ。海の皇国民はよそ者には情報を渡しません。他国の民が倒れても、気にしません。自国の民さえ無事ならいいんです。気持ちが良いくらいに、はっきりしている国ですわ」


「国民性か。確かに納得するな。ありがとう。有意義な時間だった。レティ、またね。何かあれば遠慮なく」

「ありがとうございます。またお会いできるのを楽しみしてますわ」


手を振って去っていきました。

カナ兄様はお忙しい方です。見送りが終わるとリオに抱きしめられました。


「シアが無事で良かったよ」

「ご心配をおかけしました」

「次があるなら俺も連れてって。」

「逃げるつもりはありませんよ」

「信用できない」


私はいつまでたってもリオに信頼されておりません。でもこの腕が安心できることはいつまでたっても変わりません。どうかこれからも一緒にいられますように。お腹に手を当てリオに体を預けます。


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