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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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ロダの記録

ロダ・メイル視点。


私は海の皇国の皇子として生まれた。

皇族でも、伯爵家の母を持つ私は地位が高くない。皇帝になる気もなかったので無難に社交をこなしながら突然姿を消した母上を探していた。

父は妃がたくさんいたので、母上の捜索は形だけだった。父は愚かな者が嫌いだった。攫われようが殺されようが、自己責任と切り捨てる男だった。

母上が見つかったのは偶然だった。そして、弟と妹も。私は母上達を連れて帰りたかったが、誰も望んでいないことに気付かされた。記憶喪失の母を見て冷たい皇族の世界に戻すことが最善とは思えなかった。

弟も妹も保護してくれたルーン嬢を頼りにしていた。ルーン嬢も親しみのこもった瞳でロキ達を見ていた。私はここに母上達の幸せがここにあるなら、今度こそ傍で守ろうと決意した。

帰国し父上に話すと、母上よりもロキに興味を持った。金の瞳を受け継ぐ兄弟はいなかった。金の瞳は海の皇国神話の始祖と同じだった。金の瞳の皇子を連れて帰らなかったことを責められた。どうせなら父上の怒りを買うことにした。私は皇族位を返上しフラン王国に亡命することにした。父上は皇族が亡命など恥をしれと激怒した。私の祖父にあたる伯爵が仲裁し、亡命を整えてくれた。


***

私は祖父母と一緒に母上達を迎えに行った。引っ越しの話をすると戸惑う母上達を説得したのはレティシア嬢だった。私達にも、困ったらいつでもルーン公爵家を訪ねてくださいと言葉をくれた。レティシア嬢はロキ達のことを心配して時々訪問してくれた。ロキもナギも彼女がくると、嬉しそうだった。ロキはレティシア嬢に褒められると誇らしげに笑った。


「ロキ、そろそろ終わりにしないか」

「兄上、もう少しだけ。ナギをすみません」

「まだまだ時間はある。焦らなくていい」

「エドワード様は俺より幼い頃から1日中勉強してました。お役にたてるようになりたいんです」


ロキは時間が許すといつも勉強していた。遊ぶのはナギにねだられた時くらいだった。

学園で私がずっと勉強しているロキの様子を話すとレティシア嬢は困惑した顔をして頭を下げた。


「申し訳ありません。うちは他家より少し厳しくて・・。ロキの基準がおかしいのかもしれません」

「レティ、少しじゃないわ。物凄くよ」

「シア、気にするな。シアの所為じゃないから。ロダ、やらせたいならやらせればいい。ロキはしっかりしている。本人のやりたいことを手助けしてやりながら見守ればいい。」

「兄として、」

「あんまり構うと嫌がられるよ」


レティシア嬢がよわよわしく微笑んだ。


「今度の休養日にエディの予定が空いていれば、一緒にお伺いします。エディはロキと仲が良いから、きっと・・。」


リオが残念そうにレティシア嬢を見ている。


「シア、次の休養日の予定は?」

「ドレスの採寸と夜に社交です。空いてる時間に伺います。」

「ロキは大丈夫じゃないか?最近、忙しいな。夜の社交付き合うよ」

「いえ、お話してみます。うちのせいですから。リオほどではありません。お気持ちだけで。小さな夜会ですから」

「シアの小さい夜会は立派な夜会だから。せっかくだからエスコートさせてよ。シアと踊る権利を俺にくれないか?久々にシアと踊りたい」

「物好きですわね。よろしくお願いします」


レティシア嬢の言葉に彼女に夢中なリオが嬉しそうに笑った。たぶん休養日も一緒に過ごしたかったんだろうな。申しわけないけど弟のために譲ってもらうことにした。

友人を作って穏やかに過ごすことができるとは思わなかった。殺伐とした世界で生きてきた私にはフラン王国での日々は暖かかった。


***


休養日にレティシア嬢とエドワード様が訪問された。レティシア嬢を見ると、ナギが飛びついた。祖母は複雑そうに見ていた。皇族出身の祖母はレティシア嬢達の方が身分が高いことを受け入れられていない。特に王家の金の瞳を持つロキを子供のように扱うことも。


「ロキ、お勉強を頑張ってると聞きました。もちろんエディが頑張ってるのも姉様は知ってますよ。でもたまには休憩も大事ですよ。」

「頑張ってお役にたちたいんです」

「もう充分ですよ。私はエディにお友達ができて安心してます。せっかくだから二人で遊んできて構いませんよ」

「僕は姉様と一緒にいたいです」

「レティ様、ご本読んで」


レティシア嬢がナギを膝にのせて本を読み始めた。もう二人はレティシア嬢の隣に座り一緒に聞いている。レティシア嬢といるとロキが子供らしくなる。重ねた時間が違うから、ロキ達が私よりレティシア嬢に懐くのは仕方ない。一度父上にロキと会わせろと言われたけど、どうするかな・・・・。レティシア嬢が帰るとますますやる気をだしたロキは勉強していた。エドワード様から本を借りたので覚えると部屋に閉じこもってしまった。

本人がやる気ならリオの助言通りに見守ることにした。

弟としては過度に構われるのは迷惑だと二人の兄を持つリオの言葉を信じることにした。


***


ある日、嫌な魔力を感じて外に出ると王宮に靄が見えた。ただしばらくすると靄が消えた。杞憂だったかと安心したが翌日王宮に呼ばれて言葉を失った。クロード殿下とレオ殿下、マール公爵が部屋で待っていた。驚いたのは、皇女である義妹が魔法陣の上で拘束されて眠っていた。義妹は公爵令嬢を母に持ち、皇族の中でも地位が高かった。レオ殿下に義妹は私を探し求めて魔力を暴走させたと説明を受けた。私には頭を下げることしかできなかった。

義妹が私を追いかけて来るとは思わなかった。父上に義妹のおこしたことが知られれば皇族位の剥奪、奴隷に落とされるかもしれない。天真爛漫な義妹が他の世界で生きていけるとは思えなかった。父上は容赦のない人だ。


「咎は私にあります。どうか義妹をお許しください。」


クロード殿下は口を閉ざしたまま静かに私を見つめている。レオ殿下が静かに答えた。


「被害も多く、内輪の話にはできない」


それでも頭を下げるしかなかった。妹は皇族の中でも魔力が強い。魔力の暴走など皇族の恥。またこの国の対処によっては父の逆鱗に触れる。


「おやめください。許可のない者は御通しできません」

「皇族に口答えとは恥をしりなさい」


聞き覚えのある声に嫌な予感がした。


「賠償金でかたをつければよろしいかと。陛下も惜しみますまい」


兵を押しのけて入ってきた祖母が土下座をする私の姿に眉を潜めた。

祖父が止めようとしても、祖母に声は届いていない。祖母が皇族から降嫁され伯爵に嫁いでも、海の皇国なら敬意を持って厚遇される。ただそれは海の皇国だけの話だ。海の皇国には皇族が多い。魔法は血に宿るので、皇帝はたくさんの子供を作る。そして降嫁させたり臣下に落とし魔道士として育てる。その時点で皇族としての権利が剥奪される。ただ魔法を受け継ぐ子どもを産む皇族は敬意を持って扱われる。皇位がなくても多少の横暴を許される。ただ他国ではそうはいかない。

祖母の言葉に空気が凍った。祖母は空気に気付かず、両殿下を見下している。


「皇族に無礼を払ったのはこの国でしょ?」

「黙りなさい」

「事実確認よ。来賓を怒らせたのはフラン王国。接待が」


接待が悪いとフラン王国を責めようとする言葉を私は慌てて遮った。殿下の許しなく話すことは不敬でも、そんな場合ではない。非は海の皇国にあるのは明らかだ。どんな理由であろうとも他国で魔力の暴走など許されない。

両殿下が若く優しそうな顔立ちもしてても王族だ。


「申し訳ありません」

「そなたが頭をさげるべきでない」


声を荒げる祖母の声を無視して頭をさげる。私にできるのは許しを乞うだけだ。


「殿下、発言をお許しください。参内を命じられたのはロダ・メイルのみである。誰の許しがありここにいる」


マール公爵が祖母を冷たい目で見ている。海の女は強い。祖母は睨み返している。余計なことをしないでほしいという私の願いは伝わらない。祖父の咎める声も届かない。


「私への無礼は」


「殿下の温情で伯爵位を授けられた者が何を言う。そなたたちは発言を許される立場ではない。立ち去られよ」


祖母が眉を顰めている。海の皇国なら祖母にそこまでいう相手はいない。祖母は自分より身分の高い皇族には敬意を払える。


「この国はなんて無礼じゃ。皇族の血を持つものに敬意を払えぬとは」

「殿下申しわけありません。咎はあとで受けましょう。皇族か。そなたの国の皇族の魔法の暴走を止めたのは、我が国の15歳の令嬢だ。民にも貴族にも慕われていた令嬢が命をかけておさめた。」

「よきことじゃ。その娘も本望じゃろう。」


命をかけておさめた15歳の令嬢?

空気がどんどん冷えていく。愉快に笑う祖母の言葉が海の皇国語に戻っている。

伝わらなければいいという願いは三人の顔を見て甘いと知った。


「そなたの娘かえ?皇女より価値がある命かえ?」

「海の皇国での価値はわかりません。ただわが国では私の姪のレティシア・ルーン公爵令嬢は他国を力でねじ伏せる皇女様よりも価値のある令嬢です。彼女は私怨で人の命を脅かすことは絶対にしません。我が国が誇る公爵令嬢です。」


祖母が高笑いをした。


「正しき価値もわからんか。愚かなことじゃ。あやつは、身の程知らずじゃ、自身の分をわきまえられぬとは。あんな娘の命でおさめられたなら、やすいものじゃ。小娘の喧嘩じゃの。賠償金も必要なかろう」


レオ殿下が不快な顔をした。彼はレティシア嬢の友人だ。この言葉を聞いた私の弟は激怒するだろう。安い命じゃない。


「メイル伯爵夫妻を連れていけ。不敬だ。牢でも構わない。俺達の視界に入れるな」


祖父母が兵に連れて行かれた。皇族に無礼と叫ぶ言葉に誰も耳を貸さない。自国の王族の命を聞くのは当然だ。伯爵家が公爵令嬢への不敬は許されない。この国の身分の厳しさはリオが教えてくれた。

ロキだけでなくリオの最愛の人を奪ったのか。


「私は事を荒げたくなかった。決めたよ。これが海の皇族の答えか。」


冷たい声が響いた。私の知るクロード殿下はいつも穏やかな人だった。


「兄上、」

「レティは望まないだろうね。でも、なんでレティが犠牲にならければいけなかった?ロキ達の保護は認めよう。ただこれ以上は譲れない。皇女は貴族牢に魔封じして閉じ込めろ。マール公爵、私が直接出向く。咎はいらない。準備を整えよ。」

「畏まりました。」


兵に妹が連れて行かれ、マール公爵が立ち去った。

穏便におさめることは無理だとわかった。祖母の言葉は怒らせた。さすがにあの言葉の後にどんな謝罪も意味をなさない。


「レオ、私のいない間は私の全権は委ねる。国の防衛を」


戦争がはじまるかも知れない。クロード殿下の瞳は冷たい。


「兄上、落ち着いてください。」

「私は落ち着いている」

「勅使をたてましょう。兄上が行くべきではありません。レティシアなら諌めますよ。御身を大切に。事を荒立ててはいけませんって。兄上、俺だと駄目か。リオ・マールかエイベル・ビアードを呼んでくれ。ロダも下がっていい。また事情をきくために呼び出すかもしれないが。ご苦労だった」


私は礼をして立ち去った。クロード殿下にとっても彼女は大事な人だった。国を案内してくれた時に二人は仲が良く二人の間に絆があるのは見ていてよくわかった。

レティシア嬢が、妹を止めるために命をかけたのか・・。私の浅はかな行動が恩人を。

祖母の言う皇女の義妹よりもレティシア嬢がいなくなったほうが嘆く者が多いのは優にわかった。

私は気づくと屋敷にいた。罪悪感でおかしくなりそうだった。慰める祖父の言葉は耳に入らなかった。

部屋にロキが訪ねてきた。


「兄上、ご気分はいかがでしょうか」

「ロキ、すまない」


ロキは私をいつもと変わらない瞳で見つめた。


「俺はお嬢様を探しにいきます。許可をください」


「探しに?」

「お嬢様の死体がありません。探しに行きます」


自分の罪悪感に襲われている場合ではなかった。悲しい現実を突きつけなければいけなかった。


「ロキ、彼女はいないんだよ」

「お嬢様を探します。」

「ロキ、許しません」


祖母が部屋に入ってきた。もうフラン王国語に戻っている。今さらだがよく、許してもらえたよな。不敬罪で首をはねられてもおかしくない状況だった。


「俺は兄上に聞いてます。海の皇族が令嬢を犠牲にしたなら責任をとるべきです。」

「たかが公爵令嬢よ。冷静になりなさい」

「この国ではルーン公爵令嬢は王家に引けをとらないほど人気があります。お体を探します。」

「許しません」

「許してもらえないなら家を出ます。兄上だって、レティシア様のこと悲しいでしょ?それなら見つけて差し上げればお心が軽くなるのではありませんか?」


優しく笑う弟に亡骸を探しに行かせるわけに行かない。咎は私が受けるべきだ。


「ロキ、それなら私が行くよ」

「兄上は母上達をお願いします。兄上よりもお嬢様のことは詳しいです。だから行かせてください。ルーン公爵家を後見に頼みます。考えて動きます。伯爵家には迷惑をかけません」


父と同じ瞳に見つめられて頭が冷静になった。父上は決めたら揺るがない人だった。

ロキの瞳に揺るぎはなく意思の強さが宿っていた。


「決めてるのか?」

「はい。」


祖母がロキを諫めている。ロキは静かに首を振るだけだ。


「ロキ、行きなさい。」

「ローナ!?」

「あなたの人生だもの。悔いのないように生きなさい」

「ロキはまだ子供よ」

「ルーン公爵家の後見です。それにロキは優秀です。なにも心配いりません」

「ルーン公爵家がなんなのよ。貴方達には尊い血が」


この国では私達の血に価値はない。


「尊い血でご飯は食べれません。あの時、ルーン公爵家に救っていただけなければ俺達は生きていなかったでしょう。地獄のような生活から救い出してくれたのも、優しさや暖かさを教えてくれたのもレティシア様です。血は助けてくれなかった。俺は幸せをルーン公爵家で教えられました。レティシア様のためなら死ぬことは怖くありません。尊い血の価値はわかりません。もしこの血に価値があるなら教えてください。」


ロキなら大丈夫だと思った。大事な存在を失っても前を向く姿が誇らしかった。それに比べて自分が情けなかった。守ると決めた者たちの方が強かった。血の価値。権力の使い方。私は自分のできることをしようと決めた。ロキならやり遂げる気がした。父上と向き合っても渡り合える気がした。


「わかったよ。行ってきなさい。力になろう。ロキ、皇帝陛下に会う気はあるかい?」

「必要でしたら」


俺はロキに権力の使い方を教えることにした。祖母は祖父と母上に任せることにした。


***

海の皇国から皇帝陛下が訪問された。フラン王国で皇女のおこしたことは、一歩間違えれば戦争になる。皇女の暴走の場には諸外国の貴族も招かれていた。フラン王国と手を組まれて攻め込まれたら海の皇国に勝ち目はない。皇女の暴走は諸外国の貴族の目に焼き付いた。目に見える形での償いが必要だった。またルーン公爵令嬢は他国にも有名だった。外交公爵家の婚約者の顔は広かった。彼女の弔い合戦のためなら喜んで力を貸そうという国もあった。皇帝陛下が自ら謝罪し、賠償金を支払いことをおさめた。皇女は海の皇国に連れて帰られた。私は会うことは許されなかった。

皇帝陛下は義妹を許さないだろう。

極秘で皇帝陛下はロキと面会した。二人だけだったため話の内容は知らない。ただ部屋から出て来た皇帝陛下の機嫌は良かった。ロキに気が変わったらいつでも会いに来いと言葉をかけて帰国された。父上がロキに皇子位を授けていた。ロキが望むなら皇位争いに参戦できる高位皇子位を。私はそれに伴う権利のことを教えた。父上は位を授けたが義務や仕事はロキには与えなかった。ロキは父上の御眼鏡に適ったのだろう。

ロキの旅立ちの準備は極秘で進められた。


***

学園が再開されるため私は学園に戻った。教室にレティシア嬢がいないことが違和感だった。私の所為でレティシア嬢が姿を消したことを責められると覚悟したが、何も言われなかった。

家ではロキを見て、無理やり前を向いていたけど、ふとした瞬間に罪悪感に押しつぶされるようになった。いっそ責められるほうが楽だった。

クラムに誘われ、訓練室に向かうとリオがいた。リオはサイラスと剣を合わせていた。手合わせをおえた二人は俺達に視線を向けずに立ち去っていこうとしたので呼び止めた。


「リオ、すまない」


足を止めたリオにサイラスが何かつぶやいた。


「興味ないから」


リオは立ち去った。


「ごめん。リオはルーン嬢以外にはこれが平常運転だから気にしないで。まだ口を聞くだけマシだから」

「大丈夫か?」


クラムに肩を叩かれた。


「誰も責めないんだ」

「責められるべきはロダじゃない。レティシアって根に持たないんだよ。殺されかけても、誘拐されても。水を頭からかけられたり、階段から落とされたこともあったな。まだまだ止まらないんだけど、あいつよく今まで生きてたな。悪い。でもさ、レティシアは自分のせいで周りの顔が曇ると悲しい顔するんだよ。どうしても責めてほしいならエドワード様かシオン嬢に頼めよ。ただ俺はレティシアは罪悪感に押しつぶされそうなお前を見たら悲しむと思うけどな。訓練しようぜ。モヤモヤするときは体を動かすのが一番だ」


クラムの言葉が余計につらかった。そんな優しい彼女を失わせたは私だった。

訓練をして、体はすっきりしても心は晴れなかった。


***

気づくとロキが旅立つ日を迎えていた。一緒に見送ったあと、エドワード様に謝罪をすると冷たい笑顔を向けられた。


「僕の姉様のことで貴方に謝罪を受ける謂れはありません。姉様の決断を僕は誇りに思います。貴方の罪悪感に価値がありますか?姉様を理由に落ち込まれるのも迷惑です。不甲斐ない自分を責めたいのはわかりますがそれを姉様の所為にするなんて不愉快です。償いたいなら伯爵家をちゃんとおさめてください。姉様がロキ達を保護して貴方に会わせたことを後悔させるようなことはやめてください。罪悪感を感じる暇があるならしっかり働いて国に恩を返してください」


この国の貴族は矜持が高いと言われる意味がわかった。

私は私にできることをしようと決めた。前を向く弟がいなくなってもやらなければいけないことがある。こんなことを起こしても私達を受け入れてくれている殿下達に恩を返さないといけない。それに兄を元気に送り出した妹も前を向いている。長男が後ろを向いていたら恰好がつかない。まずは祖母に自分の立ち位置を理解してもらわないといけない。私は安心して弟が帰ってこれる場所を作ってあげないといけないから。


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