レティシア7歳 夏休みの出来事 おまけ
リオ視点
うちへの定期訪問日のためレティシアが俺の部屋に来ている。
「シア、そろそろ帰る時間だろ?」
「リオ兄様、帰る前にレイ兄様にご挨拶をさせてください」
兄上が学園の休暇で帰ってきている。シアは兄上に会えると期待していたけど、来客中だったので遠慮していたみたいだな。
兄上はもうすぐ学園に帰るので、今日を逃すと当分会えないよな…。
「今日は兄上は忙しいから。」
「お借りした本を返したいんです」
シアが本を重そうに持ち上げる。
その分厚い本、自分で抱えてきたの?
従者に預ければ良かったのに。
「もう読み終わったの!?」
「はい。楽しかったので夢中で読んでしまいました」
兄上は趣味で異国の本を集めている。教師に学ぶよりも読みたいもののために言葉を調べて覚えるほうが楽しいらしい。シアも兄上と同じみたいで、辞書を片手によく読書してる。
うちで一番多くの言語を話せるのは父上だ。最近の父上はシアの頼みで異国語で土産話を聞かせているらしい。
父上がシアにどの土産が一番気に入ったか聞いたら、「伯父様のお話が一番好きです。」と笑ったシアに陥落した。シアは教師より父上が好きみたいで「できれば伯父様の綺麗な異国語でお話を聞きたいです」って言葉を聞いた父上のにやけた顔はやばかった。
マール公爵を教師代わりに使えるのはレティシアだけだろうな。父上も楽しそうに、シアに言葉を教えてる。俺達への厳しさが嘘のようにシアには甘いよな。
シアを膝に乗せて、デレデレしているのが自分の父親と思うと虚しくなる。
兄上から借りる異国の本は難しくて、読むの時間かかるんだよな。
認めたくないけど語学力、シアに負けてる気がしてならない。
シアはよく異国の本を読んでるよな…。
才能かな?
もう張り合うのはやめてシアの話せない言葉を覚えるか。
シアから本を取り上げる。
「俺が返しておくよ」
「お邪魔しないので、少しだけ!!レイ兄様はお休みが終わったら中々お会いできません。」
この感じは、駄目だな。これ以上言い聞かせたらしょんぼりするよな。
「わかったよ。話すのは兄上とだけだよ?」
兄上の友人達の間ではシア探しが流行ってるみたいだ。
兄上の友人が来てる時は俺はシアの側にずっといることにした。
兄上とシアは10歳も歳が離れているけど、邪なやつがいないとも限らないから。
シアの挨拶に頬を染めてた兄上の友人を見て近づけないようにしようと決めた。うちの庭園で花を愛でるシアは確かに可愛いし、太陽の光がシアの髪をキラキラ照らす光景に見惚れるのもわかる。天使と呟く兄上の友人をシアが茫然と見ていたのに気づいて兄上が友人を強引に連行していったけど。シアは怖かったのか俺に抱きついてしばらく離れなかった。
「リオ兄様ありがとうございます。約束しますわ。」
嬉しそうに笑ったシアと手を繋いで兄上の部屋に向かう。
ノックをすると兄上が出てきた。
なんで連れてきたのか視線で問われる。
友人が来てるのは知ってましたよ。ただシアが兄上に会えずに寂しい顔して帰ったって知ったらのちのち怒りましたよね!?
シアが兄上と俺の様子にしょんぼりした。この顔、見たくなかったんだよな。兄上も同じだったみたいで、優しく微笑んでシアを抱き上げた。
シアは抱き上げられて嬉しいのか満面の笑みを見せた。
兄上とシアの身長差が羨ましい。ダンの肩に座って喜んでるのを見たときは悔しかったな。
でもシアが喜んでるならいいか。
兄上の友人が出てきたな。兄上、笑顔で隠してるけど、嫌そうだな。
シアは来客中に邪魔したことに固まってる。わかりやすいよな。
兄上があらたに本をシアに貸して気をそらしたな。兄上の視線を感じる。わかってるよ。兄上。シアを関わらせないように退散するよ。
シアに声をかけると兄上に会えて満足したシアは素直に俺の所に戻ってきた。
シアは兄上の友人に挨拶するか聞いてくるので、不要と伝える。俺の従妹にまた変なファンが増えても困るから接触は最小限にしないと。
シアの本を持って、シアの手をとり退散する。
兄上、シアに歴史書を渡してますが間違ってませんか?
シアを馬車まで送り届けた。晩餐のあとに兄上にシアを連れてきたことで苦言を言われたのは予想の範囲内。
シアの必死なお願いに折れたと話したら兄上の苦言はおわった。
兄上はもうすぐ学園に戻られる。
またシアと二人の穏やかな時間が帰ってくるのは待ち遠しい。
兄上が学園に行けば、シアが甘えるのは俺だけだしな。
シアの尊敬の視線を独り占めできるのは快感だ。
兄上には色々頼み事をしているが、きっとうまくやってくれている。
カナト兄上よりレイヤ兄上のほうが頼みやすい。カナト兄上は俺がどんな表情を作っても動じないから、願い事はいつもレイヤ兄上にお願いをする。俺が悪戯をするとレイヤ兄上は庇ってくれるけどカナト兄上は笑顔で父上達に報告しにいくから。
そのカナト兄上もシアには甘いけどな。シアの平穏のためにレイヤ兄上の手腕を期待しよう。