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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシアの片想い エイベル編 おまけ

シエル視点


レティシア様がアルベルト様を出産されてから、使用人宿舎は連日お祭りです。今日も酒盛りが行われています。

レティシア様が目覚めたので、また一層盛り上がってます。



「シエル、お前もどうだ!?」

「シエルさん、せっかくなので」


レティシア様も目覚められましたし、連日お断りするのもいけないので少しだけ混ざりましょう。

席につくとワインを渡されます。美味しい。これは旦那様からのお祝いとして振る舞われてるものですね。

お嬢様、心配しなくても旦那様はアルベルト様の誕生に大喜びですよ。


「シエル、せっかくだから奥様がお嬢様だった頃の話を聞かせてよ!!」

お酒のせいかいい気分になりました。今日はビアード夫妻の両思い記念ですからね。


「そうですね。昔話にお付き合いください」

「おお!!」


周りの人は目を輝かせてますね。

ここにきてレティシア様の昔話をするのは初めてです。

最初のころは私もレティシア様と一緒で嫌われてましたので。


「エイベル様が出てくるまでご辛抱くださいね」

「俺はレティ様の話ならなんでもいい」


お嬢様の護衛騎士の言葉に笑えますわ。

相変わらずお嬢様にしか興味がありませんね。


「お嬢様はルーン公爵令嬢ですから、昔から厳しい教育を受けてました。あまりの厳しさに眉を潜めたマール公爵夫人が時々お嬢様を屋敷に招いて息抜きさせてくれましたの。その時にお嬢様の面倒をみてくださったのがリオ様でした。お嬢様は優しくされることを知らなかったので、マール公爵夫妻とリオ様が甘やかしてくださるので、大層懐いておりましたの。」


「子供のころから厳しかったの?」

「ええ。テーブルマナーを覚えるまでは一人でお食事されてましたわ。ルーン公爵家の晩餐はマナーの時間なので奥様が目を光らせて厳しく躾けてましたわ。」

「ルーン公爵家、怖い。」

「5歳の頃には三カ国語話せてましたわ。」

「奥様が書類仕事得意なのって、」

「ルーン公爵家の教育の成果です。学園に入って自由時間の多さに驚いてましたもの」

「俺、奥様を見る目が変わりそう。甘やかされて育ったお嬢様だと思ってた」


周りの方々が、顔を青くしています。

あのお嬢様が恐ろしい教育を受けてたなんて思いもしませんよね。


「シエル、続きは!?」

「お嬢様が魔力適性がないと分かってから周囲の目は変わりましたわ。お嬢様が周囲に魔力のないことをせめられると、いつもリオ様が庇って、励ましてくれました。それからお嬢様はリオ様に恋をされましたの。リオ様はお嬢様をかわいがっていましたが、お嬢様の想いは勘違いだと、いつも嗜めてましたわ。」


「弱った時に近くの優しい人を好きになるのはわかる!!それを勘違いなんてひどいわ」


「お嬢様はリオ様の前ではいつも笑顔で想いを伝えてましたわ。でも全然信じてもらえずこっそり落ち込んでましたわ」

「俺、レティシア様が落ち込んでるなんて気づかなかった」


貴方はお嬢様の同級生でしたものね。

お嬢様が落ち込んでいたのは私とセリア様しか知りませんわ。


「リオ様に叶わぬ恋をしているお嬢様に近づいてくる殿方は多かったです。ルーン公爵令嬢の婚約者の立場は魅力的ですから。実はお嬢様は怖がってましたけど、誰かに助けを求めたりはしませんでした」

「レティ様の人気すごかったよな。家柄もだけど、マール様へのひたむきさに憧れる奴も多かったもんな」

「あなたも?」

「俺は自分の立場をわかってるから。友人として傍にいれれば充分だよ」

「シエル、マール様には相談しなかったの?」

「ええ。お嬢様が自分からマール様を頼ったことはありませんわ。きっとマール様はお嬢様が困っていたことなど知りませんわ。困ってるお嬢様をよく助けてくださるのがエイベル様でしたの」


リオ様は社交会でお嬢様が誹謗中傷を受けるのを見つけると庇ってくれてましたが、学園でのことは知りません。お嬢様はリオ様に知られないようにしてましたしね。同情で選んでもらっても嬉しくありませんって。自分に厳しい方です。




「旦那様が!?」

「ええ。お二人はターナー伯爵家で親交を深めてましたから。お嬢様はいつも助けてくださるエイベル様に徐々に甘えるようになり、困ったことがあればエイベル様のもとに行きましたわ。エイベル様の仕事を手伝う代わりに、助けてもらう。お嬢様にとっては取引でしたが。」


お嬢様はお互いの利があるからエイベル様に頼れたんですよね。

お嬢様は無条件で誰かが何かをしてくれるなんて思いませんから。どんな思惑があるか考えこんでしまいますわ。

お嬢様、あれでも社交は得意ですから。

お嬢様は思惑だらけのドロドロの貴族世界に染まってます。お嬢様は善意なんて信じたりしません。



「旦那様はその頃から奥様に仕事を手伝ってもらってたんですか・・」

「お嬢様はリオ様のお手伝いもされていましたが、エイベル様のほうが量が多かったですわ。」


リオ様よりエイベル様との時間のほうが多かったですしね。

お嬢様は自分からマール様の部屋に押しかけるなどしませんので。リオ様に会いに行っても、呼び止められなければ想いを伝えて去っていくだけでしたから。


「リオ様、あんなに可愛いレティシア様に慕われて健気に尽くされたのにどうして全く見向きもしなかったんだろう。」

「リオ様はレティシア様は自分を親と勘違いしてるってよく嗜めてましたわ」

「マール様ひどいわ。恋する乙女は繊細なのに」

「お嬢様はそれでも笑顔で大好きと伝えてましたわ。リオ様と離れた後にはしょんぼりされてましたわ。」

「奥様可哀想。シエル、それで?」

「お嬢様の失恋は3年生の時ですわ。交換留学生がお嬢様に自分がリオ様に選ばれたと、伝えにきました。お嬢様はリオ様が別の方を選んだら諦めると公言してましたの。お嬢様は失恋の悲しみと、お嬢様に絡んでくる殿方に気が滅入ってましたわ。そんなお嬢様を側で守ってくれたのがエイベル様でしたわ」

「旦那様ってもしかして!?」

「お嬢様はエイベル様に救われましたわ。もう時効かしらね。皆様の胸にとどめてくださる?」

「もちろん。どんな話でも私たちが奥様を大好きなのは変わらないわ」


私の自慢のお嬢様はどこでも愛されますわね。


「あの頃、お嬢様にはたくさんの縁談がきてたんです。リオ様が卒業式で誰もパートナーを選ばなかったので、卒業後にはマール公爵から婚約の打診もきてたんです」


「奥様はなんで頷かなかったの?」


あの頃・・。

お嬢様が四年生になる前のお休みでしたね。

私とお嬢様は旦那様に呼ばれました。お嬢様はこの頃にはビアード公爵家に嫁ぎたいと旦那様に話されてました。


「レティシア、マール公爵から婚約の打診が来ている。お前の語学力が欲しいそうだ」

「お父様、この縁談に家の利はありますか?」

「私はお前には嫁ぎたいところに嫁がせたいと思ってる。お前の念願かなってリオと結婚できる」

「家の利がないならお断りしてください。」

「リオが好きなんだろ?」


お嬢様が目を伏せて、しばらくすると旦那様を強い瞳で見つめました。

お嬢様、強がってますね。まだ失恋の傷が癒えてないので、リオ様の話はつらいでしょうに。


「過去の話です。今までいつもリオのあとを追いかけてましたわ。でも全く振り向いてもらえなかったんです。私はリオに失恋して、苦しくて仕方のないときに、エイベルが私の能力を必要って言ってくれたんです。私、誰かに必要って言ってもらえたの、はじめてで、救われたんです。リオを追いかけるのをやめても隣にエイベルがいたから道を失わずに前を向けたんです。嫉妬に狂わず、公爵令嬢としての私を保てた。許されるなら、救ってくれて必要としてくれたエイベルの役にたちたいんです。お父様、私はエイベル・ビアード様との縁談を望みます。」

「後悔しないか?」

「はい。私個人の願いはエイベルに嫁ぎたいです。ですが私の縁談はお父様の判断に従いますわ。どこに嫁いでもルーン公爵令嬢として恥じないように努めましょう。」


旦那様は寂しそうに見つめてました。

旦那様はお嬢様を溺愛されてたので。うちではお嬢様だけが気付いていませんが。

その夜旦那様は執事長とお酒を飲んでましたわね。お嬢様の成長に色々複雑みたいです。



話を終えたら周りから歓声があがりました。


「奥様、格好いい!!」

「奥様、最初から旦那様を選んで嫁いできたんだね。悪いことしたわ」


お嬢様はリオ様に振られて、仕方なくエイベル様を選んだと思われてました。

ビアード公爵家の皆様には、執事長とビアード公爵夫妻以外は歓迎してもらえませんでした。

お嬢様は気にせず励んでましたが。

自分の家の人間が一番なので、お嬢様も覚悟されてましたしね。

ビアード公爵家の皆様の無礼を知れば、エドワード様が乗り込まれると危惧して必死に隠してました。

エイベル様にも手出し無用と言ってました。エイベル様は苦笑しておりました。

エイベル様はお嬢様なら大丈夫と信じていたんでしょうね。


「お前、意地悪してたもんな」

「全然効果なかったけどね」

「奥様、無理難題も、そつなくこなしてたもんな」

「マール様に振られて仕方なく嫁いできたと思ったんだもん。」

「シエルも、教えてくれれば良かったのに」


睨まれますが、あのころはビアード公爵家の方々を全く信用していませんでしたから。

私はお嬢様に、ルーン公爵家に残ってと言われましたが、私は生涯お嬢様に仕えると決めていました。

お嬢様は私の答えに困った顔をした後、私の決意が固いことに気づいて嬉しそうに嬉しいと微笑んでくださいました。

私のお嬢様は意地っ張りです。


「今日はお祝いですから。特別です」

「この話を聞いたら旦那様は喜ぶかな」

「他言無用ですよ。皆様の口が硬いと信頼してお話したんです。他言すれば二度とお嬢様のお話はしません」

「それは困りますね」


聞きなれた声に振り向きます。

執事長にはお世話になりました。お嬢様とともに嫌われていた私に色々教えてくださったのは執事長です。

周りの皆様も驚いてますね。この方は気配がないんです。


「執事長、いつからいたんですか!?」

「奥様のテーブルマナーの話からです」

「ほとんど最初から聞いてましたね」

「シエルの大事なお嬢様のお話は貴重ですから。まさか旦那様にそんなに甲斐性があるとは驚きました」

「近くにいすぎると見えないものですのね」

「ええ。その頃から無自覚で奥様に片思いをしてたとは思いませんでしたよ」

「片思い?」

「奥様をいつも助けられたのは、よく見ていたからでしょう?」

「そっか。旦那様はいつも奥様を見ていたんだ。夢中で見る理由なんて恋だけよね」

「旦那様の10年越しの片思いの成就に乾杯!!」


エイベル様は使用人に好かれています。

盛り上がる皆様を見ながら執事長に小声で話しかけます。


「婚約が決まった後のエイベル様は素敵でしたよ」

「坊ちゃんが?」

「ええ。エイベル様は武術大会で優勝した時のインタビューで婚約者のレティシア・ルーンに手を出すなら俺を倒してからにしろ。卒業後もビアード公爵家にくれば相手をすることをビアード公爵嫡男として約束しようと答えられました。会場は盛り上がりましたわ。お嬢様は羞恥で倒れましたが…。お陰でお嬢様は殿方に絡まれることはなくなりましたわ。エイベル様のファンに目をつけられましたが、社交上手のお嬢様は優雅に撃退してましたわ」

「坊ちゃん」

「私、この時にこっそりエイベル様を応援しようと決めたんです」

「薄々気づいてましたが、シエルはマール様に厳しいですね。嫌いですか?」

「気のせいですわ。確かにリオ様には思うところはあります。でも今はお嬢様が幸せだからいいんです。お嬢様に捨てられたリオ様は後悔すればいいんです。うちのお嬢様以上のご令嬢は存在しません。」

「シエル、大丈夫ですか?大分酔ってますね」

「リオ様には、お嬢様を渡しません。今更気づいても許しません。お嬢様は私が守ります」

「シエル!?」


お嬢様の幸せは私が守りますわ。

ビアード公爵家の未来が楽しみですね。

そして私は意識を手放しました。

翌日、お嬢様ではなくレティシア様に笑われてしまいました。

私が酔いつぶれたことを話したのは誰なんでしょうか。

お酒には気をつけないといけません。


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