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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシアの片思い 3話 エイベル編

執事長視点


私はビアード公爵につかえる執事長です。


次期ビアード公爵であるエイベル様には幼い頃から手をやかされてきました。 

武術の腕は優秀なんですが、実直なお人柄がたまに傷です。

そんなところが家臣には慕われてるんですがね。

そこは優秀な夫人を娶りフォローしていただければと旦那様と私は思っておりました。


旦那様からお話があると呼び出されました。

奥様もいらっしゃいますね。

旦那様が神妙なお顔をしていますね。

旦那様とは子供のころからの付き合いなので悩みごとがあるのはまるわかりです。



「エイベルからルーン嬢と婚姻を結びたいと言われたんだがどう思うか?」


坊ちゃんが自分で婚約者を指名されるとは思いませんでした。

ただルーン嬢といえば、

「ルーン嬢はマール令息を慕っているんではありませんでしたか?」


「貴方にしては、情報が古いわね。その話はもう過去のことですよ。私は構いませんわ。」


奥様が反対されないのは意外です。

旦那様、わけがわからないと顔にでてますよ。


「なぜ?」


「ルーン嬢と話しましたの。彼女は公爵令嬢として利のある家に嫁ぐと。もしうちに嫁いで魔力持ちの嫡男が産まれなければ第二夫人や愛人も受け入れるそうですよ。自身の能力を必要と言ってくれたエイベルのためにならないなら切り捨てても構わないと。その心持ち気に入りましたわ」


「お前、そんなことを聞いたのか?」


旦那様に同意します。貴族なのに無属性の公爵令嬢に聞くのは配慮にかけます。


「いえ。エイベルとの婚姻についての意思を聞いただけですわ。ルーン嬢自ら魔力のことは言われましたの。あの子自分の欠点をよくわかってますわ。さすが、ローゼの娘。威圧にも負けない勝ち気さも評価に値します。あの真っすぐさはご令嬢では珍しいわ。」


奥様、ルーン嬢を威圧されたんですか…。この夫婦は揃って破天荒です。

ルーン嬢が嫁いでくれれば私の心の平穏は生まれるでしょうか・・。


「ルーン嬢の社交能力は問題ありません。エイベルより視野が広く、学生達にも慕われてます。あの子を慕ってうちの門下に入る子も多いでしょう。ルーン嬢は人を見る目もありますし、次期ビアード公爵夫人として問題ないと思います。」


奥様はすでに動かれていたんですね。さすがですね。奥様が社交能力を問題ないというなら能力は高いでしょう。奥様は他人の評価は厳しい方なので。

旦那様に視線を向けられますね。


「私は旦那様達の決断に従います。必要でしたら夫人として教育致しましょう。」


奥様がルーン嬢を認めた時点でこの婚約は決まりです。

公爵は奥様に坊ちゃんの婚約者選びを一任しておりましたので。

私は執事長なので公爵夫妻の決断に従うまでです。

この時の私は次期ビアード公爵夫妻が現公爵夫妻より手がかかるとは思いませんでした。


坊ちゃんが最終学年のときに二人は婚約を結ばれました。

奥様に公爵夫人教育を受けるためにルーン嬢はよく訪問されておりました。

玄関で偶然お会いした旦那様とルーン嬢の話に私は固まってしまいました。


「ルーン嬢、そなた魔法は使えないが自衛はできるのか?」

「ターナー伯爵夫妻に剣と弓と体術を教えて頂いております。」

「見てやろう」

「ありがとうございます。」


ルーン嬢の武術の嗜みがあるのは知っておりました。

ただ実力までは知りませんでした。


旦那様とルーン嬢は訓練場に向かわれました。

私はルーン嬢が準備をしている間にどうして奥様か坊ちゃんを呼びにいかなかったのでしょうか。

ルーン嬢の荷物に訓練着と剣を持ってきた侍女にも驚きが隠せません。

旦那様はルーン嬢の弓の腕を見て感服されておりました。

旦那様の魔法で出した的をほぼ的中させるものは中々おりません。さすが風つかいのローゼ様の娘ですね。

気を良くした旦那様は剣での手合わせを提案しました。

ルーン嬢はかわすのがお上手で段々旦那様の目も真剣になっていきました。

さすがにルーン嬢もかわしきれずに、剣で受けてますね。

そろそろお止めしないとまずいでしょう。


「旦那様、何をやってますの!?」


奥様の声に旦那様の剣が乱れました。

まずい。

ルーン嬢は旦那様の集中が切れた瞬間に斬りかかり旦那様は反射でルーン嬢の腕を斬りつけました。

なんで剣で手合わせをされてるんですか!?

ルーン嬢は顔を歪めましたが、また旦那様に斬りかかろうとするルーン嬢を結界が囲いました。


「レティシア、何をしてる。」


坊ちゃんが近づき、結界を解除され剣を取り上げました。

ルーン嬢はきょとんとされ


「ビアード公爵が訓練をつけてくださいました」


「旦那様、説明していただけますか?」


これは旦那様と奥様とで長い話し合いが始まりますね。

旦那様も、奥様には逆らえません。

ルーン嬢には奥様のかわりに私が指導しましょう。


ルーン嬢は傷口をハンカチで抑えて止血してますね。


「腕、みせろ」

「これくらいすぐ治りますわ。」


坊ちゃんがルーン嬢が傷口を抑える手を掴むと顔を歪められます。さすがにそれは痛いですよ。

坊ちゃんが無理矢理ルーン嬢の手を離し治癒魔法をかけていますね。

坊ちゃん、言葉が足りませんよ。


ほら、ルーン嬢は苦笑されてますよ。

「大丈夫ですのに」

「このままルーン公爵邸に帰せるわけないだろ!?」

「確かに。このありさまはお母様に叱られてしまいますわ。ありがとうございます。」


ルーン嬢、そこではないんてす。

旦那様に遅れをとって傷を作ったことではなく、貴方に傷をつくった公爵の立場がまずいんです。

外聞もですがなによりローゼ様がうちに押しかけてきたら大変です。

屋敷を吹き飛ばされたら笑えません。

ローゼ様は物理での解決を好まれますので。


「公爵に不甲斐ない所を見せたことをお詫びしたいんですが、お忙しそうですね。エイベル手合わせしませんか?」

「バカ。今日の目的は違うだろ。」

「失礼しました。」


この二人の会話に危機感を覚える私がいけないんでしょうか。

噛み合っていない気がします。

坊ちゃんはルーン嬢が心配で手合わせを拒まれたこと確実に伝わってませんよ。


時々不安を覚えることはありましたがルーン嬢は優秀です。

教えたことはすぐに吸収されます。

さすがルーン公爵の娘ですね。

素直で優秀なルーン嬢にいつのまにか私達も絆されてしまいました。

ルーン嬢がマール令息を慕っていたのは有名な話なので、私達使用人はあまり良い印象を持っていなかったんですが、気づいたら彼女の存在を受け入れていました。


時々暴走する坊ちゃんを叱り、坊ちゃんのフォローに走る年下の美少女を微笑ましく思えるのは仕方ありませんね。 

ルーン嬢の成人後二人は結婚され、数年後にはビアード公爵夫妻になられました。


前ビアード公爵夫妻は隠居されましたが、私は若いお二人を支えるためにビアード公爵邸で執事長を続けております。


今は殿下の視察のため旦那様のエイベル様は精鋭を連れて遠征に行かれてます。

留守の間は夫人のレティシア様が全権を預かり、私は補佐につくことになってます。


公爵領の騎士達は国境周囲で小競り合いがあり鎮圧にむかわせております。

そんなときに町に賊が目撃されたと報告がありました。

警備隊が探すも賊は見つからないそうです。

公爵邸に残されてるのは騎士見習いと奥様の護衛騎士達のみ。

奥様の護衛は8人の専属の騎士が回しております。


「私の護衛騎士の四人を町に行かせてください。ロン、人選は任せます。」

「レティシア様、私達は護衛騎士としてお側を離れられませんので、それはお受けできません」

「二人なら?」

「駄目です。」

「特別手当をつけましょう」

「いりません。私達はなにがあってもレティシア様の御身を優先させます」


護衛騎士達はレティシア様に心酔されています。

学園時代からのお付き合いだそうです。

旦那様もこの8人なら奥様を危険に合わすことはないと信頼されてます。

奥様がため息をつかれています。


「私が行けば一緒にいってくれますか?」

「もちろん。命に代えても御身をお守りします」


奥様がロンの頭を軽く叩きました。

「いつも言ってますよね。自分の命を守った上でって。自分の命を守れないような人に私は背中を預けられませんわ。」

「ごめんなさい」

「わかりました?」

「努力します」


奥様が笑われてますね。奥様は護衛騎士たちをどうしようもない子供をみるような目で見ています。


「頑固ね。私が賊を鎮圧するのに協力してくれますか?」

「おまかせください」


「執事長、出かけてきます。私がいない間は全権をあなたに預けます」

「奥様が行かれるなら私が行きます。見習い騎士で充分です」

「それは許せません。それに成功率が高いのは私達が行くことです」

「御身が危険です」

「なら尚更私が行きます。ビアード公爵夫人の変わりはいくらでもいますもの。ただ貴方の変わりはいないの。エイベルいえビアード公爵を支えるのに貴方は必要ですもの。」

「奥様」

「私の護衛騎士は優秀ですから大丈夫よ。心配しないでください。もし私に何かあれば書斎の机の引き出しに遺書を書いてあるのでそれを渡してください。ルーン公爵家からの非難はないと思います。離縁状にもサインしてあるので手続きはお任せするわ。これ鍵ね。」



うっかり鍵を受け取ってしまいましたがどういうことでしょうか。

奥様、自分の変わりはいくらでもいるって・・・。

遺書と離縁状を用意しているって、この方は。

いつ切り捨てられてもいいと思ってるんでしょうか。

旦那様、奥様としっかり話し合いが必要ですよ。


「執事長あとお願いしますね。もし先に旦那様が帰ってきたらゆっくり休ませてあげてください。では行ってきますね」


奥様は護衛騎士と共に颯爽と出ていきました。

書斎に向かい鍵をあけると確かに用意してありました。

ルーン公爵家とビアード公爵家にあてた手紙が2通。

封をあけることは致しません。このこと旦那様は知ってるんでしょうか・・・。

机の上には処理済みの書類の山。

さすが奥様、国境に派遣した騎士たちの報告書もきちんとまとめてありますね。

あとは派遣された隊長の報告とサインだけです。

旦那様の視察用の書類も記載できるところまで書き上げてあります。

公爵領の仕事もほとんど終わらせてあります。旦那様が帰ってきてゆっくり休めるようにですよね。

内助の功です。

こんな奥様が遺書を書いてるなんて知れたら騎士たちが反乱をおこしそうですね。

奥様は騎士たちにも好かれておりますから。

奥様が自ら訓練場に差し入れされ、労りの言葉をかけられますからね。

奥様専任の護衛騎士は騎士たちの憧れの職業になっています。



「執事長、旦那様が帰られました」


執事に呼ばれ、玄関に急ぎます。



「おかえりなさいませ。旦那様」


気まずい顔をしてますね。公爵に就任してから坊ちゃんから旦那様呼びに変わったことに慣れないようです。

成人しても坊ちゃん呼びは恥ずかしいからやめろと言ってましたのに。


「屋敷が静かだけど、何があった?兵の数も少ないが」


「旦那様、湯あみされますか?食事になさいますか?」


「レティシアは?」


いつもお出迎えされる奥様がいないことを不審に思われてますね。


「奥様より私は屋敷を守ることと旦那様のお世話を申し付けられてます」


旦那様が頭を抱えられました。気づいたようですね。


「俺が帰ってきたら家の全権はレティシアから俺に移るよな。レティシアはどうした?」


「奥様は賊の討伐に護衛をつれていかれました」


「あのバカ!!止めなかったのか?」


「止めましたよ。奥様は兵が少ないので護衛騎士を鎮圧に向かわせようとしましたが、護衛騎士が拒否しまして。なら自分が一緒に行けば問題ないとのことで。奥様は私の変わりはいくらでもいますが、執事長の変わりはいないから屋敷と旦那様のことをお願いしますといい、出かけられました」


旦那様の眉間に皺が寄りました。


「家を守れとは言ったけど治安維持に参加しろとは言ってない。

護衛、なんで止めなかった。レティシアを連れて行くくらいなら多少は離れてもよかったよ。誰が行くかで揉めたのか。あいつらレティシアの傍を離れたがらないもんな。レティシアに心酔しているから絶対に守るだろうけど、公私混同しすぎだ。」


旦那様、考えてることが言葉にでてますよ。気づいてないようですが。

扉が開きましたね。


「エイベル、おかえりなさいませ。誰かこの子達に食事と湯あみをさせて休ませてあげて」


奥様が子供を6人連れてきました。侍女が動きました。

怪我はなさそうですね。

奥様は旦那様に近づきふんわりと微笑まれました。


「お勤めご苦労様でした。怪我はありませんか?どうされました?」


旦那様が奥様の笑顔に気が緩んでますね。

事体に気付いたようようで顔をしかめ直しましたね。


「お前、どこ行ってたの?」


「勝手にごめんなさい。6人ほど子供を保護しましたので身元がわかるまでうちで預かりたいんですがよろしいですか?」


「保護のことじゃなくて、なんで賊の討伐に行った?親父に頼ればよかっただろ?」


「引退したお義父様に頼るのはどうかと思いましたので。しっかり討伐してきましたわ。ただちょっと怪しい感じがするのでもう少し調査を進めてから結果を報告しますわ」


「その件は俺が全部引き受ける。自分で討伐に行く公爵夫人がいるか。兵が足りない時は親父を頼れ。」

「二人の手をわずらわせるほどではありませんわ。お任せくださいませ」

「これは俺の仕事だ。俺が帰ってきたから全権は俺に戻るだろ。その前にお前身ごもってんのわかってんの?」


「ええ。今日は体調もいいですし私達の子供ならこれくらい大丈夫ですわ」


「お前は体が弱いだろうが。大人しくしてろ」


「ビアード公爵夫人の役目ですもの。貴方のいない間は家と領地をしっかり守りますわ」


「俺の留守は執事長に任せればいい」


旦那様さすがにそれは頑張ってる奥様に酷ですよ。

言葉を選んでください。


「ひどい。私、ちゃんとできますわ」

「できてないんだよ」


これはまずい気がします。奥様が睨んでます。

奥様が睨むのは旦那様と専属の護衛騎士だけです。


「わかりました。私では力不足ですね。私なんかにビアード公爵夫人は務まりませんね」

「は?」

「離縁していただいて結構ですわ。荷物をまとめてきますわ。シエル、行きますよ」


旦那様が奥様が部屋に向かおうとする腕を掴んで止めてます。


「バカ。なにを言い出すんだよ。そこまでいってない」

「できてないって。私は能力を見込まれて嫁ぎましたもの。能力がないならここにいる資格はありません。今までお世話になりました」


「暴走すんなよ。そんなこと思ってない。言いすぎた。悪かった。お前はちゃんとやってるよ。俺の妻が務まるのはお前だけだよ」


「言葉には気を付けてくださいませ」


「お前」


「なんですの?」


「言いたいことはあるが折れるしかないよな。こうなったらだめだ。

後で、落ち着いてから話せば通じるだろう。

昔から暴走癖あるよな。

こいつ、言葉にしないと全く伝わらない。

結婚してからこいつのトンチンカンさにめまいがしたのは数えきれない」


旦那様ブツブツ言ってますが、それ聞こえてたらまずいですよ。

奥様は不思議な顔をされています。聞こえてないみたいで一安心です。

旦那様が笑顔を作りましたね。


「無事でよかったよ。頼むから屋敷でおとなしくしてて」

「私も強くなりましたわ。」

「お前は自分が思ってるほど丈夫じゃないんだよ。この前も倒れただろう?」

「あれは、気が緩んだだけです。」

「普通は気が緩んでも人は倒れないんだよ。着替えてこい。その後、一緒に食事をしよう」

「わかりましたわ。シエル行きますよ」


奥様が立ち去られたので、旦那様に報告をしながら書斎に案内します。

奥様の処理した書類の山を見て固まってますね。


「レティシアは大丈夫だったか?」

「旦那様の留守中は気を張っていらしたので倒れてません。ただいつもより食が細いですね。」

「倒れるのはこれからか」

「旦那様が帰ってきて気が緩まれたら否定はできませんね。これどう思いますか?」


旦那様に奥様の遺書の入った引き出しの中をみせる。


「ルーン公爵家とビアード公爵家宛?」


ビアード公爵家宛の手紙を開封し顔が真っ青ですね。


「あいつなんで遺書と離縁状書いてんの!?このルーン公爵家宛って」

「自分に何があってもビアード公爵家に迷惑はかからないと」

「これはビアード公爵夫人の嗜み?」

「貴方のお母様が遺書を書いてるなんて聞いたことはありませんが」

「遠回しに別れたい?もしかして帰りたいのか?」

「坊ちゃん落ち着いてください。何があってもいいように準備しているだけですよ。レティシア様が坊ちゃん相手に遠回しなんて手段を選びませんよ。もし帰りたくてたまらないなら、さっさと出て行ってますよ。」

「俺は見ないふりするべきなのか?」

「できるんですか?」

「問い詰めてくる」


奥様の迎えに行かれましたね。

旦那様は着替えなくていいんでしょうか。


「レティシア、これなに?」


手紙を見た奥様が驚いてますね。ため息をつかれました。哀愁漂っている気がします。


「お守りです。」

「お守り?」

「この子が産まれて、魔力を持たなかったら離縁でしょ?エイベルの傍は居心地がいいから離縁状にサインしたくなくなるかもしれません。でもあらかじめサインしておけば手続きができるでしょ?」

「レティシア?」

「同情はいりませんわ。子供は覚悟の上で嫁いだんだけど、絆されたみたい。貴方を好きな令嬢は貴方の妻として失格でしょ?大丈夫。エイベルがいなくてもこの子がいるもの。離縁してもらって構いませんわ」


寂しそうに微笑む奥様に固まってる旦那様。旦那様、俺を好きな妻は不要とか言ったんですか?

旦那様、奥様に惚れてますよね?まさか無自覚なんですか?

仲の良いお二人は想い合ってると思っていたんですが両片思い状態ですか!?


「レティシア様、俺はどこにでも、ついていきますよ」

「気持ちは嬉しいけど、お給金払えるかわかりませんわ」

「仕方ないから俺が養って差し上げますよ」

「ロン、抜け駆けすんな。もちろん、俺も一緒ですよ」

「ビアード門下の貴方たちが?」

「俺はレティ様についてきたんです。レティ様もお子様もお守りしますよ」


旦那様、奥様離縁される方向に話が進んでいませんか。

やっぱり護衛騎士の忠誠は奥様にありました。


「坊ちゃん、大事なことはそのつど言わないと駄目ですよ。タイミングが大事なんですよ。このままだと離縁されますよ。私は夫婦が愛し合ってはいけないと教えてないんですが」

「いざって時に、家と妻を選ぶとき、即決できないと駄目だろ」


私達の教育が悪かったんですね。誰も愛せず大事なものを作れないなんて碌な人間ではありません。家を最優先に守るとは教えましたが公私はわけていいんです。


「そうならないように手を尽くすんです。愛する家族のために家を守るんでもいいんですよ。結果的にビアード公爵家を守れればいいんですよ」

「俺は、いざって時にあいつを切り捨てられなくてもいいのかな」

「そうならないように守ればいいんです。もちろん私も前公爵夫妻も力を貸しますよ。」


簡単に家族を見捨てるような公爵には誰もついてこないと思いますよ。

もう大丈夫ですかね。


「坊ちゃん、欲しいものはちゃんと言葉にしないと駄目ですよ。」


この方は手がかかりますね。


「レティシア、離縁なんてしないよ。俺はお前が良いって言ったろ?」

「エイベルはリオを好きな私が良かったんでしょ?」

「いや、俺を好きならそれでも構わない。マールより俺が好きなの?」

「意地悪ですわ」

「もしこの子に魔力がないなら、次の子供の時は俺の魔力で染めるよ。」


両親の魔力の強い方に属性はなりやすい。

ただ属性を引き継がせる方法として相手を自分の魔力で染め続けること。

男性の属性を引き継がせるのは簡単。妊娠中もずっと相手に自分の魔力を注ぎ続ける。

女性はある程度男性を自分の魔力で染めてから体を重ねる。その後は自分の子供に魔力を意図的に注ぎ続ける。

旦那様が奥様を魔力で染めれば属性は引き継がれるでしょう。

ただ体が弱く魔力を持たない奥様には苦痛を伴うかもしれません。だからやられなかったんです。


旦那様が遺書を燃やしました。


「なにするんですの!?」

「必要ないだろ。お前が死ぬのは俺がお前を守れなかったときだ。ビアード公爵家が滅びる時だよ」

「でも」

「お前は俺のために働くんだろ。ビアード公爵家は滅びる?」

「そんなことさせませんわ。」

「だろ!?だからお前は遺書なんていらない。婚約する前に言っただろ?。俺は結婚したら離婚しないって。ちゃんと覚悟をして嫁いできたんだろ。ルーン公爵令嬢は自分の言葉を違えるのか?」

「ありえませんわ。ルーン公爵令嬢としてルーン公爵家の醜聞になることは致しません」

「なら、これからもビアード公爵夫人頑張れよ。食事にしよう」

「はい。お任せくださいませ。エイベル、着替えは?」

「忘れてた。先に行って、いいよ。一緒に来るか?」


旦那様が出した手に奥様が重ねられました。

旦那様、奥様の説得に成功されたようですがご自分の気持ち伝えてないですよね?

支度を整えるので着いていきましょう。湯あみはあとで着替えだけでしょうね。

奥様は旦那様のお召し替えの間はクッションを抱えてソファに座っております。

お召し替えの終わった旦那様がクッションを取り上げられました。


「新しいの買ってやるからこれ捨てないか?」

「なんで?」

「それマールの部屋にあったやつだろ?」

「うん。卒業するときに貰いました」

「それないと駄目なの?」

「抱きつくものないと寂しい」

「大きい人形でも贈ろうか?」

「それならエイベルに抱きつきますわ」

「なら捨てていい?」

「まだ使えるのにもったいないです。それにエイベル、邪魔って言いますもの」

「できるだけ言わない努力はする」

「無理ですわ」


奥様が笑われてます。旦那様は素直じゃない。

他の男のものを愛用されてるのが気に入らないだけなのに。

全く伝わってませんね。


「奥様、旦那様はマール様からの贈り物を愛用されてるのが嫌なんですよ」

「エイベルとリオは仲が悪いですね。まだ仲直りしてないんですね。いい加減大人になってくださいませ。そんなに嫌なら移動させますわ。目に入らない所に置けばいいんですよね。隠し部屋ならいいか」

「マールが気に入らないんじゃなくてお前が俺以外の男の物を大事にしてるのが嫌なの」

「従兄妹ですよ?」

「昔、惚れてただろうが。妬いてんの。」


奥様がクスクスと笑い出しました。


「それだと私が好きみたいですよ。おかしい」

「なんでだよ?」

「エイベルは誰も好きにならないんでしょ?」

「あれは俺の勘違い。お前が好きだよ」


旦那様、言えましたね。奥様、お顔が青いですが・・。

なんで旦那様のことを睨んでるんですか?


「なにが目的ですか?」

「は?」

「私を好きという方は必ず思惑がありますの」


旦那様が笑い出しました。


「よくお前、絡まれてたもんな。お前がマールのことを忘れて俺だけを想えばいいと思う。あとでゆっくりな。食事が先だ。」


旦那様が奥様を連れて移動されました。

この夫婦がビアード公爵夫妻としてふさわしくなるために見守りましょう。

ビアード公爵夫妻はどの方々も手がかかりますね。

まさか奥様の子供が水属性を持ちまた離縁騒動がおこるとは思いませんでした。

旦那様、奥様の操縦方法をしっかり身に付けてください。

旦那様が照れずに愛を囁けばそれですむのに。

私達の育て方が悪かったのでしょうか・・・。

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