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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシアの片思い 2話 リオ編


リオ視点


「リオ兄様、失礼してもいいですか」

「どうぞ」


レティシアが俺の部屋にくるのは珍しい。


「どうした?」


レティシアは俺の机の上の書類を何部か手に取った。


「お仕事が大変と伺いまして、頂いていきますね。私、暇なので翻訳も引き受けますよ」


侍従がレティシアに書類を渡している。

俺、命じてないけど。


「お邪魔致しました。失礼しますね」


レティシアが礼をして去っていった。なぜか仕事が忙しくなると俺の部屋に来て書類を持っていくんだよな。

今回は隣国から留学生がくるので余計に仕事に追われていたから正直ありがたい。

終わった書類も俺のところではなく、殿下や父上に提出してある。

レティシアの仕事には殿下達も満足しているので、やりたいなら任せている。

仕事が落ち着いたら、たまにはお礼に連れ出すかな。

誘ったらまた満面の笑みで喜ぶんだろうな。




1週間、交流のため他国の留学生が来ていた。俺も生徒会で接待に付き合わされていた。

外交のためだから仕方がない。ご令嬢の相手は面倒だ。

長かった留学の1週間をやっと終えた。

親睦を深めるための婚姻を結ばないかと令嬢に誘われたが遠慮した。

家の利もないし、俺は隣国に婿入りする気もない。気ままな三男に生まれたから気ままに生きたい。

侯爵なんてなりたくないしな。

レティシアもだがどこの国の令嬢達も積極的だな。

そういえば最近、レティシアが全く姿を見せないな。

具合でも悪いんだろうか?よく寝込むもんな。

元気ならたまには連れ出してやるかな。


レティシアの様子を見に行くと、自分の席にうずくまっている。

保健室に連れてくか。

無理してよく倒れるもんな。

レティシアのもとに行こうとするとセリアに腕を掴まれた。腕を引かれて廊下に連れていかれた。

セリアに睨まれる理由がわからない。


「リオ様、レティにもう近づかないでください」

「レティシア、具合悪いだろ?保健室行かせないと」

「そうゆうことするから駄目なんですよ。」

「は?」

「ご婚約おめでとうございます。」

「は?」

「レティの面倒は私が見るのでご心配なく。妹分のことを思うならもう構わないであげてください」

「セリア、意味がわからない」

「そんなの自分で考えてください。もう近づかないでくださいね。では」


セリアが冷笑を浮かべて去っていったけど、意味がわからない。

セリアがいるなら任せて平気だろうな。


その後も全くレティシアを見かけなかった。

あいつ、大丈夫なんだろうか?

無理して寝込んでるわけじゃないよな・・。


「なぁ、リオ、これでいいの?」

「サイラス?」

「レティシア嬢のこと気になるんだろ?」

「いや、別に」

「レティシア嬢来たよ」


久しぶりにレティシアを見た気がする。

よかった。元気そうだな。

仕方なく出迎えようと立ち上がる。

教室に入りずらいだろうと思ったがそんな心配無用だった。

急ぎ足で向かっていくのは、こっちじゃないの?


「失礼いたします。エイミー様!!」

「あら、レティシア、どうしたの?」

「楽譜ありがとうございました。」

「弾けるようになった?」

「ええ。またお時間あるとき付き合ってくださいね」

「もちろん。もう少し難しい曲、弾いてみる?」

「是非、ありがとうございます」


リール嬢から楽譜を借りて笑顔で去っていったけど、俺のところ来ないんだな。

レティシアがうちの教室に来て、俺に声をかけないなんてはじめてだ。


「リール嬢、レティシア嬢どうしたの?」

「音楽の教養を高めたいんですって。最近はいつも演奏室かビアード様の元で練習しているみたいですよ」

「演奏室はわかるけどなんでビアード?」

「殿方はご存知ないのね。マール様が交換留学生を選ばれたので傷心のレティシアに近づく殿方が多いんですのよ。演奏室にも来るのでビアード様のお部屋で練習しているそうですわ。最初はビアード様も嫌がってましたけど、レティシアのお願いに折れたみたいですわ。」

「よく知ってるね」

「令嬢の嗜みですから当然ですわ。」


俺が交換留学生を選んだ?

シアとビアードがずっと一緒ってこと?

でもいい機会なのかもしれないな。


「リオ、大丈夫?」

「ああ。いい機会だな。やっと俺への気持ちが刷り込みだったと気づいたんだろう」

「へぇ」


サイラスの哀れみの視線にイライラするのはなんでだろう。

レティシアは時々リール嬢に楽譜を借りにくるが俺のところに全くこない。

学年が違うとこんなに会わないもんなんだな。今までは、ほぼ毎日レティシアに会っていたから気付かなかった。

あれは、ビアードとレティシアか。言い争ってビアードが頭を撫でて宥めてるな。

あの二人こんなに仲がよかったか・・。

レティシアが他の男といる記憶なんてないんだが。

レティシアが固まった。なんで泣きそうなの?ビアードの背中に抱きついてる光景に絶句する。

ビアードは苦笑してるだけ。戸惑う様子もない。それ、いつもの光景なの?


「マール、色々言いたそうだけど何?」

「いや、それ大丈夫なのか?引き受けようか」


視線でレティシアを促す。


「レティシア、腕緩めて、苦しい。そのままでいいから、力だけ緩めて。引き渡さないから」


なんでビアード、シアの手に自分の手を重ねてんの。


「最近、宥めるコツ覚えたから平気。レティシアは俺が引き受けるから安心して幸せになれよ」

「は?」

「俺たちはこれで。歩きにくいんだけど。嫌なの?仕方ないな。悪い、マール先に行ってくれ。たぶんこれお前が傍にいる限り動かない」


ビアードの背中から顔をあげる気配が全くない。レティシアといつから話してないだろう・・。

このモヤモヤするのはなんだろう。

とりあえず、二人の横を通り過ぎる。抱きしめてレティシアを宥めるビアードを亡き者にしたいのはなんでだろう。


「リオ、殺気もれてるからやめて」

「悪い」

「何があったの?」

「わからない」

「ほんとうに?」


サイラスに隠しても無駄か。


「子供の親離れに複雑なだけ」

「それさ、嫉妬じゃないの?相手がビアードじゃなくてカナト様で想像したら?」

「兄上は結婚されてる。」

「例えだよ。リオがレティシア嬢を任せてもいいと思う相手で想像しなよ」

「思い当たらない」

「レティシア嬢はいずれ誰かと結婚するよ。リオの許しに関係なく」

「公爵令嬢だからな」


サイラスがため息をついて呆れた顔をむけてくる。


「じゃあ、今まで向けられてた好意が全部ビアードに向けられたらどうする?」


すでにシアはビアードに甘えている。シアが俺以外の男に抱きつくのなんてはじめて見た。

ビアードに満面の笑顔で抱きつくシアを想像する。


「おもしろくない」

「レティシア嬢の結婚式に祝福できる?」


ビアードと幸せそうに寄り添うシアを想像すると亡き者にしたくなる。殿下の差し出す手に小さく微笑んでエスコートされるシアを想像すると割り込みたくなる。


「無理そうだよね。リオとの結婚式は想像できる?」


嬉しそうに抱きついてくるシアは可愛いだろうな。頭を撫でたら幸せそうに笑うんだろうな。


「そのにやけた顔の意味わかる?」

「俺、シアのこと」

「認める?」

「認めたところで無駄だよ。俺たちは政略結婚から逃れられないよ」

「やっぱりバカなの?」

「は?」

「レティシア嬢がなんでお前をあんなに必死に落とそうとしてたの?」

「それは・・・・。」

「違うよ。惚れてるからじゃない。お前のことが好きな気持ちだけであのルーン公爵令嬢が動く?」


ルーン公爵令嬢として厳しくしつけられたレティシアは家の不利になるようなことは絶対にしない。

確かにレティシアの行動は未婚の令嬢として褒められるものではない。

入学してから行動が激しくなったよな。

ただそれが家の望む縁談なら・・。

叔父上はああ見えてシアに甘い。


「まさか、叔父上の了承を?」

「さぁね。ただ縁談を控えたルーン公爵令嬢が恋心だけであんなに素直に動くとは思わない。ただ好意を全面的にぶつけることが駆け引きかどうかは怪しいけど。社交の駆け引きは上手いのに不思議だよね」

「俺が他の令嬢を選べば素直に諦めるって言ってたのは」

「リオらしくないね。頭使うの得意なのに。」

「今はビアードが一緒にいるのは?」

「あの二人はもともと兄妹弟子で仲がいいからね。きっとビアードが慰めてるんじゃないの。レティシア嬢は有言実行。お前に他の相手がいると思い込んでるなら諦めるだろ」

「どうすれば」

「それは自分で決めないと。ただ、レティシア嬢は武術の名門一族からすれば理想だよ」

「は?」

「家を最優先に考えてくれる。戦地にも快く送り出すだろ?当主の命令に絶対逆らわない。私情より家の利を優先してくれて社交に優れる。きちんと家を守ってくれる能力もある。武門貴族の嫡男なら是非夫人にしたい」

「ビアードが傍にいるのって」

「俺は思惑があると思うけど。ビアードは単純だけどバカじゃない。レティシア嬢、留学生にも気に入られてたし。」

「留学生?」

「一人、侯爵令息いただろ。レティシア嬢の同級生に」

「いたな。そんなやつ。」

「レティシア嬢が外国語に堪能なのを知って必死に口説いてたみたいだよ。彼女の容姿もあるだろうけど」

「そんな話聞いてないけど」

「レティシア嬢がお前に話すわけないだろ。あんまり積極的に口説かれすぎて困ってるレティシア嬢を見かねてカーチス達が間に入ったみたいだけどな。連れ攫われなくて良かったよな」

「俺が知らないだけで、シアって人気あるの?」


なんで、そんな馬鹿にした視線むけんの?


「レティシア嬢より身分が低いやつは自分から話しかけれないからわかりずらいか。ルーン公爵家の後ろ盾、容姿端麗、品行方正、お前に惚れてるという欠点を覗けば理想の令嬢だろ?」


シアの価値なんて考えてこなかった。人気あったんだな。

確かに可愛いもんな。


「お前、まさか知らなかったの?」

「ああ。」

「男に絡まれてるの見た事ない?。そっか、お前を見つけたら周りのやつなんて見向きもせず抱きついてくるもんな。それはわからないよな。どうするの?」

「わからない。シアと話してみるよ」


レティシアと話してみるか。

レティシアの教室に行くとセリアが出てきた。シアは本を読んでいるな。

読書好きだよな。兵法なんて読んでどうすんだろうか。


「リオ様、私、言いましたよね?」

「誤解だよ。婚約なんてしていない」

「だから?」

「は?」

「別に私はリオ様の婚約なんてどうでもいいです」

「なんで?」


セリア、機嫌悪いな。


「レティ、やっと笑えるようになったんですよ。せっかく初恋を諦めたのに蒸し返すようなことはやめてください。さっさとお帰りください。レティのことは私に任せてください。取り巻きならいくらでもいるでしょ?女遊びはレティ以外でお願いします。」


諦めた?

嬉しいはずなのになんでショックを受けてるんだろう。


「リオ、授業終わったけど帰らないの?」

「悪い」

「話せたの?」

「セリアに近づくなって」

「このままでいいの?」

「それは」

「ビアードの部屋に行ってみなよ。きっといるから。そこで話してきなよ」


ビアードの所にいる…。

サイラスが知ってるくらい有名な話って相当一緒にいるんだな。

レティシアと話すためにビアードの部屋に行ってみるか。


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