レティシア18歳 ギルドでの生活
リオ視点
フウタと魔法の修行をしている。
高いところが好きなシアに見られて上空へ飛びたいといわれかねないから・・。
上空での飛行は魔法のコントロールが難しい。
習得するまでは、シアには見つからないように訓練している。
「主、レティが探してる」
フウタの声に空から降りる。
「りお、どこ」
庭に降りるとシアが裸足で抱きついてきた。
「りお」
「シア?」
「リオ、いなかった」
ソファでうたた寝したから、ベッドに運んだんだよな。
「どうした?」
「いなかった」
どうしたんだろう…。寝ぼけてる?
シアの腕を解いて裸足のシアを抱き上げる。
「ごめん。もう少し寝る?」
「リオ、いなくなっちゃう」
「側にいるよ。」
「本当に?」
「もちろん」
シアが再び目を閉じた。
「何やってるのよ」
「ディーネ、シアどうした?」
「いつも起きたら側にいるリオがいなくて探し回ってたのよ」
「シアが?」
「そうよ。ずっと側にいられないなら一緒に寝るのやめなさいよ」
「無理。悪かった。気をつけるよ。」
「そのニヤけた顔で言われても。いいわ。さっさと行きなさいよ」
いつの間にかディーネが魔法で俺の汚れを落としていた。
俺の服を握って眠るシアに愛しさがこみ上げる。
俺がいなくて探し回るか…。
顔がニヤけるのは仕方ない。
シアはどこまで俺を魅了するんだろうな。
もう今日はこのままシアと一緒に眠るか。
安心しきった無防備な顔は昔から変わらないよな。
眠る時間が早すぎたので、翌日は早朝に目が醒めたのは仕方がない。
早朝から薬草を取りに行こうとするシアを宥めて、家でゆっくりした。
庭の手入れをしてからギルドに向かった。
「リオ、ギルド長が呼んでる」
「俺だけ?」
「ええ。ルリはアルクに預けて行ってきなさい」
レラさんと俺の様子に気付いたアルクがシアを呼び寄せた。
俺は嫌な予感がしてギルド長のもとにいく。
ギルド長と眉間の皺を見ると俺の予感が正しいことを確証する。
「リオ、悪いな。実は」
「断ります。」
「まずは話を」
「手短にお願いします」
「首都で王子の生誕祭がある。そのときにルリに雨乞いを」
生誕祭の見世物として雨乞いか…。
雨の少ないこの国で王子が雨をよべる魔道士を従えているとすれば大人気だよな。
そんな厄介なことにシアを関わらせるなんてごめんだ。
目をつけられて、逃亡生活なんてさせたくない。
まず俺のシアを見世物にするなんて許せない。
「断ります。シアにやらせるくらいなら村を出ます。」
「リオ、家を買ってなかったか?」
「あんな家、惜しくもありません」
「お前は…。」
「シアに話しても俺の結論は同じです」
俺の優先順位は決まっている。
ギルド長が困っていてもなんとも思わない。
生死が関わるなら多少は譲歩するけど。
「わかった。断る。」
「俺はこれで」
シアのもとに戻るとシアの前には生魚が並べられていた。
社交用の顔を浮かべて静かに食べるシアを見て、アルクを睨む。
「アルク、どういう状況?」
「リオははじめてか。時々、貴重な魚が手に入るんだよ。ギルド長が皆で食べろと振る舞ってくれるんだ」
シアから魚を取り上げる。
「シア、食べなくていいよ」
「リオ?」
「苦手だろ?無理して食べなくてもいい。」
シアが貼り付けた社交用の笑みを浮かべて食事をするのは、食べたくないときだから。
「ルリ、苦手なの!?笑ってるから好きなんだと、お前、まさか…」
驚くアルクにシアがどうしていいかわからず俺を見ている。
シアの様子を見て、魚を好きだと勘違いしたやつらが余計に魚をまわしてきたのか…。
悪意のない行動だから、言うに言えなかったか。
俺はこいつらには、そんな気遣いはしないけど。
アルクに、俺のシアのことを一つだけ教えてやるか。
「アルク、シアのあの顔は嫌なことを我慢してるときだよ。」
フラン王国には生魚を食べる習慣はない。
「リオ!?アルク、違いますよ。食べられますよ」
「レティ、前に生魚を無理して食べて寝込んだじゃない」
ギルドで唯一ディーネの声が聞こえるアルクがシアを睨んだ。
「ルリ、なんで言わなかった?」
「だって…」
「アルク、シアを睨むのは覚悟があるのか?ギルドの奴らに気をつかっただけだ。シア、ギルド長は別になんとも思わないから食べなくていい。残りはアルク達が食べるから。今日はもう帰ろう」
「ルリ、またな」
アルクに手を振られ戸惑うシアの手を取り引き上げる。
家に帰るとシアはトイレに駆け込んだ。
シア、お前吐くくらいなら食べるなよ…。
口直しを用意するか。
まだ蜂蜜残ってたよな。
シアに魚を回した奴らは後日仕返ししよう。
「シア、大丈夫か?」
返答はない。しばらくするとディーネが出てきた。
「リオ、今はそっとしておいてあげて。見られたくないって。」
ディーネにドアの前から追い出された。
シア用の口直しを用意して、しばらくするとシアが出てきた。
顔色は悪くない。
「大丈夫か?」
「はい。もう平気です」
「シア、無理して食べなくていいんだよ」
「お母様に叱られますわ。」
叔母上は確かに言うかもしれない。
あの人、時々おかしいから・・・。
寝込むなら修行が足りないって言いそうだよな・・・。
このシアは言ってもきかない。
俺が気をつければいいか。
シアを膝にのせて、蜂蜜入りの紅茶を渡すとふんわり微笑んだ。
やっとシアと俺の日常が帰ってきた。
シアがいなくなるとか勘弁してほしい。
それに、俺はどこにいっても自分に厳しいシアが無理をしないようにみていないと。
今は手を出したら、シアが赤面して俺から離れるからしばらくこのまま堪能するか。
俺のシアは昔から目が離せない。
可愛いシアに群がる害虫駆除も再開するかな。




