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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシア17歳 シオンの悩み

シオン視点


俺は依頼から帰る途中で森で聞き慣れた声をして足を止めた。

兄貴がルリと狩りをしているのか。

ルリは俺の誘いは全部断るのに兄貴の誘いにはのるのか・・。


「ルリ、ちゃんと確認しろ。魔力持ちのモンスターには矢は効かない」


兄貴の言葉に首を傾げたルリが矢を放ち鳥が落ちてきた。


「常に矢に魔力を纏わせてしまえば問題ありません」

「魔力の無駄使いだろ」

「あるものは使わないと」

「お前、魔法が使えることを隠したいんだろ?」

「狩りはディーネと二人で行くから大丈夫です」

「これからも、単独任務だけ受ける気なの?」

「はい。」

「いいけどさ、魔力もちの獣の見分け方は覚えろよ。お前、狩る前によく見てみろよ。魔力を纏うの見えるだろ?」

「それ必要ですか?見てる間に逃げてしまいますよ?」

「この辺にはそこまで速い獣はいない。やってみろ」


ルリが森を見渡している。

矢をむけられる気配にまずいと姿を表した。


「シオン!?」

「兄貴、邪魔するつもりはなかったんだよ。」

「ルリ、ちゃんと確認しろ。魔力がないからって矢を向けるな」

「まさか、人がいるとは…。魔力が見えないから矢でいいかと。気配を消してたのでつい」

「ついで、矢を向けるな。村人だったらどうするんだ」

「すみません。気をつけます」

「獣の纏う魔力は見えるか?」

「集中すれば。あの鳥は魔力持ちですね」

「わかればいい。帰るぞ」

「アルク、さばき方を教えてほしいです」

「だめだ。もう暗い。」

「わかりました。今日はありがとうございました。失礼します」


ルリ、ここで別れて帰るの!?


「ルリ、一緒に帰ろうよ」

「いえ、私はディーネと二人で帰るのでこれで」

「ルリ、待て、鳥はどうするんだ!?」

「アルク、お礼にあげます」

「これからさばくけど、見る?」

「いいんですか!?」


ルリが足を止めた。

兄貴が鳥をさばくのを興味深々に見ている。

やっぱり可愛いよな。兄貴のさばく様子に見惚れるのはわかる。

いつも見事にさばくから。

兄貴がさばき終わった肉と魔石をルリに渡すも首を振り、拒否している。


「レラに渡して調理してもらうか。ルリ、行くよ」

「私はここで」

「ギルドに帰るよ、ルリ」


兄貴に睨まれたルリが頷き、ギルドに向かって歩きだした。

俺が話しかけるも空返事。なんか考え事してるのか・・。

ギルドに帰るとレラさんが迎えてくれた。


「ルリ、お帰りなさい。」


レラさんの目にルリしか映らないのはいつものことだ。

レラさんはルリを可愛がっているから。


「薬草をお願いします」

「お疲れ様。」


「レラ、これ、ルリが狩って、俺がさばいたんだけど、ルリはいらないってさ」


兄貴がさばいた鳥と魔石をレラさんに渡している。


「ルリは言い出したら聞かないのよね。いいわ。私が作るわ。ルリ、今日、行ってもいい?」

「レラさん?」

「食事を作るわ。アルクがご馳走してくれるから、甘いもの買って帰りましょう」

「シオン、お前も来るか?土産があるなら混ぜてやるよ」

「私、アルクは、誘ってないんだけど」

「ルリ、俺もいいだろ?あと一人増えてもいいか?」

「レラさん、アルクがさばいてくれたから」

「なら仕方ないわね。アルクとシオンは買い出ししてから来てね。」


兄貴はたぶんレラさんと二人でいたいから俺を誘ったんだよな。レラさんは兄貴の誘いは断るけど、ルリのためなら時間を作るらしい。

この二人の関係は、よくわからない。


兄貴と一緒に買い物をしてルリの家を訪ねた。


レラさんとルリが食事の用意をしている。

いつかルリと暮らせればいいんだけど。

他愛もない話をしながらレラさんの食事を食べた。

ルリは兄貴たちの話を相づちをうちながら聞いている。

食事が終わるとレラさんが片付けをはじめた。

レラさんはルリの手伝いを断っていた。兄貴がレラさんの傍で手伝いをはじめた。

気付くとルリがいなくなっていた。

兄貴はレラさんと二人になりたいよな・・・。

外に出るとルリがいた。

空を見てるのか・・。


「ルリ、何を見てるの?」

「星を。あんまり見えないんですね」

「今日は良く見えるほうだよ。星好きなの?」

「特に。」

「ルリの知ってる星空は違うの?」

「何度か満天の星空を見ました。」


空を見上げるルリは笑ってるのに全然嬉しそうに見えなかった。


「ルリ、あの一つだけ輝いてる星わかる?」

「はい」

「兄貴に聞いたんだけど、あの星はどこでも見えるんだって。ルリの見てきた星空にもあったんだろうな」

「どこでも。・・・・りおも見てるかな。」


ルリの言葉は聞きとれなかった。


「ルリ?」

「いえ、なんでもないです。戻りましょう」


俺はルリに促され部屋に戻るとレラさんたちが片づけをおえていた。

俺も慌てて帰り支度をした。


兄貴達と一緒にルリの家を後にした。


「シオン、名前覚えてもらえたか?」

「忘れてた。もう何度名前を伝えたかわからない」


ルリは全く俺に興味をしめさない。だから今日は名のるタイミングもつかめなかった。

「ルリ、全然名前覚えないものね。最近やっとアルクを覚えたわね」

「レラは一発だろ?」

「ええ」

「ある意味冒険者らしいな。必要な情報だけ覚えて不要になったらすぐに忘れる」

「俺さ時々ルリが消えそうで」

「そんなことより、お前はまずは認識されるとこからじゃないの?」

「わかってるよ。わかってるけど、どうしたらいいか。あんまりしつこくするとギルド長に睨まれるし」

「シオン、モテるんだからルリは諦めなさいよ。」

「レラさん?」

「可愛いルリと交際したなら私とギルド長に許可を取りなさい」

「レラ?」

「だってかわいいルリが騙されたら大変よ。あの子、時々危なっかしい。まだ子供よ。シオンのファンの女の子にルリがいじめられたらどうしよう」

「レラ、シオンは全く相手にされてないから安心しろ」

「兄貴!?」

「俺はレラを送るからここで」


兄貴達と別れて家に向かった。

帰る途中に女に声をかけられても全然その気がおきなかった。

どうしたらルリに近づけるんだろうか・・。



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