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レティシア7歳  嫌がらせ調査

リオ視点


レティシアの受け取っている嫌がらせの手紙に気付いてから、嫌がらせについて調べることにした。

シアが一人で出かけるのはマール公爵邸か大神殿。

シエルに話を聞くと神殿から帰ると時々擦り傷を作っているらしい。

シエルが傷を見つけるとシアは転んだと笑い、叔母上に怒られるから秘密にしてほしいと口止めしているらしい。


シアは定期的にお祈りに神殿に訪問している。

ルーン公爵家からの寄付金をおさめるためだ。

寄付金だけ渡し祈りを捧げずに帰ると信仰心が足りないと非難される。

特に宰相を務めるルーン公爵家は民の模範となるようにあらゆる面で注目を浴びている。

社交界デビューをしていないレティシアの唯一の役目だ。


馬車までは護衛騎士がつくけど、この神殿内は血の汚れが忌避され神官か上位貴族のみ立ち入りを許される。

安全のためシアの訪問着には命に関わる時に発動する守りの魔法陣が縫い込まれている。

このことはシアは知らない。

レティシアへの手紙が爆発したのをきっかけに叔父上が用意させた。もちろん秘密裏に調べて報復は行われた。影で処理するのはルーン公爵家の十八番である。

シアに手を出したなら当然だろう。詳細は調べられなかったが表で裁かれるよりえげつないことがされているだろう。



シエルにシアの神殿への訪問日を確認し予定を合わせた。

俺が寄付金持っていくって母上に言うと驚かれたが、何も言わずに役目を譲ってくれた。


神官に寄付金を渡したから後は祈りを捧げるだけである。

まだシアは来てないので人気のない柱の影に隠れた。時間的にはそろそろ来るはずだ。

しばらくすると辺りがざわめいた。

嫌な予感がしてざわめく場所に行くとレティシアが転んでいた。

レティシアとすれ違ったであろう年上の令嬢が卑しい笑みを浮かべている。


立ち上がったレティシアがゆっくりと歩き出すと、またすれ違った令嬢とぶつかった。

7歳でも小柄なレティシアと13歳くらいの大柄な令嬢との体格差は明らかでレティシアだけが転んでいる。

令嬢が何か言っているけど聞こえない。

レティシアはゆっくりと立ち上がり、上品な仕草で寄付金を拾い令嬢に礼をして立ち去った。


今日は見守ると決めたけど、すでに心が折れそう・・・。

神官に寄付金を渡し、祈りの間までゆっくりと歩いてる。

その間に3回、令嬢にぶつかり1回は柱まで吹き飛ばされた。

それ以上にすれ違いざまに何か言われている。

同世代で銀髪で青い瞳を持つのはレティシアだけだ。

一目でルーン公爵令嬢とわかるだろう。それに今はクロード殿下の所為で注目を集めているからさらに目立っている。



まさか跪いて祈りを捧げているレティシアの背中を突き飛ばす令嬢がいるとは思わなかった。

信仰心どうなってんの?俺が言える言葉でもないけどさ。

お祈りをしているフリをして観察する。


「どんなにお祈りしても貴方みたいな方に殿下は惑わされませんわ」


令嬢の声が静寂を保った室内に響き渡った。

レティシアは令嬢の声に反応せずに、ゆっくりと立ち上がりまた跪き祈っている。令嬢は祈っているシアの腕を掴み、無理矢理立たせて連れて行く。

シアはきょとんとしている。

腕を引かれながらも視線は精霊の像を見ている。まだお祈り途中だけど騒いじゃいけないからどうしようか迷ってるようだ・・・。

違うよ、シア。逃げようよ。むしろ声をあげてくれるなら助けに入れるんだけど。


令嬢は庭園を目指しているのか。

明らかに戸惑ってるシアが強引に連れていかれるのに周りの神官は動かない。

見て見ぬフリするの?

あれがいじめに見えるのは俺がおかしいの?

気配を消して近くの木に隠れる。


「ルーン様、私あなたにお手紙を書きましたのよ」


家格の高いレティシアに声をかけ、手紙の返事願うって無礼なんだけど・・。


「申し訳ありません。どなたか存じ上げません。」

「私のお手紙にも私のお友達のお手紙にもお返事はいただけないのに殿下にはお返事なさるのですね。」

「申し訳ありません。お手紙が多く不出来な私では一枚一枚のお返事に時間がかかってしまいますの」

「そんな学の足りない方が殿下と恋文のやり取りなんて。どれだけ不敬かわかりませんの?」

「殿下からはお茶会のお誘いを頂いてるだけですわ。私はまだ作法の勉強中なため、ご辞退させていただいてます。」

「まぁ!?」


声を荒げた令嬢がポケットから小瓶を取り出した。瓶を投げようとしているので、慌てて出て行きシアの腕を掴んで体を抱き寄せる。

レティシアの横を通り過ぎた瓶が木にあたり割れた。液体がかかった草が枯れている。

この液体は何?

確実に危険なやつだよな?

後でこの草と土を持ち帰って、セリアに分析頼むか。

違うな。そんなことより、


「お話中に申し訳ありません。うちのものがなにか無礼を働きましたか?」


「貴女は?いえ、ルーン様がお怪我をされてましたので、お薬をさしあげようとしましたの。手が滑ってしまいましたわ。幼いルーン様がお一人でしたので心配してましたの。お連れさまがご一緒なら大丈夫ですわね。失礼しますわ」


颯爽と令嬢は去っていった。

さすがに、この光景を見られてまずいと思ったんだろうな。

腕の中にはきょとんとしたシアがいる。

フードを脱ぐと驚いた顔で見られた。俺とは気づいてなかったのか・・・。知らない男の腕の中でじっとしているのもやめてほしい。


「リオ兄様もお務めですか?」

「ああ。大丈夫か?」

「ええ。大丈夫ですわ」

「いつもこんな感じ?」

「今日はまだ少ないほうですわ。皆様殿下の心を射止めたいみたいですね。頑張っていただきたいですね」


穏やかに笑ってるレティシアにため息を飲み込む。神殿で説教するわけにはいかない。


「あの令嬢は知り合い?」

「いえ、存じ上げません。そんなにお返事を心待ちにされていたとは思いませんでしたわ。」


笑っている顔は可愛いけど、これ駄目だ。

令嬢がぶつかってくるのもわざとだと気づいてないかもしれない。


「怪我は?」

「大丈夫ですわ。リオ、どうしたんですか?」


不思議そうに見られている。コテンと首を傾げて無防備に見上げる仕草が可愛い。

転ぶの見てたとは言えないからな・・・。

シアの頭に手を置いてゆっくりと撫でる。


「今度から神殿は俺と一緒に行こう」

「どうしてですか?」

「シアはまだ幼いから。叔母上も一緒に来れないんだろ?」

「はい。お忙しい方なので。」

「だから、俺と一緒に行こう。な?」

「リオも忙しいでしょ?私は一人でも大丈夫ですよ」


あと何年かしてエドワードが一緒に来れるようになるまでは付き合うか。

エドワードが一緒なら令嬢達も手を出さないだろう。手を出したらエドワードが報復するだろうし。

兄上に相談しよう。


「俺が一緒なら帰りに市くらい見に連れてってやれるかな」

「是非お願いします!!」


俺の提案に目を輝かせたシアの手をとり先を促すと動かなかった。


「私はお祈りの途中ですのでここで失礼します」

「俺もお祈りこれからだから一緒に行こう」


頷いたレティシアと手を繋いできた道を戻る。

俺の隣で祈るシアを突き飛ばすやつはいなかった。

シアを馬車まで送り、手を振って別れた。用があるのでルーン公爵邸までは送れないからな。

まずは、金で情報を売る神官に話を聞いてみるか。

場合によっては父上と叔父上に相談するかな。

あの二人ならシアへの危害を知ったら抗議するよな。

信心深いルーン令嬢が神殿で嫌がらせを受けていたなんて。マールとルーンは寄付金の額も国で五指に入るほど納めているしな・・・。

シアにぶつかった令嬢は学園の生徒だろう。

兄上に頼もうかな。うちの兄上もシアのこと可愛いがってるから話せば喜んで報復してくれるだろう。

うちの従妹は優しいからその分俺たちがしっかり報復しないとだよな。

社交界デビュー前に手を出したんだから保護者が動いても問題ないよな。

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