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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシア3年生 悪戯心

サイラス視点


この友人はよく突拍子のないことを思いつく。

成績は悪くないのに、先生方に呼び出される常連だ。

悪いやつではないんだけど。

この感じはまたなにか思いついたんだろうか…。



「サイラス、なんでマールはあんなにルーン嬢の前で性格が変わるんだ?」


リオの中にはルーン嬢>>>>マール公爵家・ルーン公爵家>>>>>>知人>その他。

くらいのわかりやすい優先順位がある。

マール公爵家・ルーン公爵家と知人の間に果てしない差があるけど。


「大事だからじゃないの?」

「他のやつらには冷たいのに」

「性格だよ」


リオは自分の利のためにしか動かないから。

時々気まぐれを起こすけど。


「お前はよく親友やってるな」

「長い付き合いだから」

「俺は一度でいいからマールの慌てふためく姿を見てみたい」

「がんばれ。でも俺を巻き込まないで」

「ルーン嬢が俺に惚れたら、」

「家の取りつぶしと命が惜しくないなら」

「物騒だな。穏便に困らせる方法を」


リオは物騒な性格だから…。リオは優秀だから慌てふためくことなんて中々ない。彼女のこと以外では…。

でも、あの冷静なリオは彼女が入学してからは、


「リオ、結構慌ててるし、よく困ってるよ。」

「嘘だろ?」

「見慣れないとわかりずらいか。よく観察してみたら」

「わかった」


リオはルーン嬢のことでよく慌ててるし悩んでるからわざわざ困らせなくてもいいと思うんだけど。

まさか友人がリオじゃなくてルーン嬢の観察をするとは思わなかった。

間違ってはないんだけど。



「ルーン嬢、あの手紙読んでいただきましたか?」

「お手紙ですか?」

「ええ。」

「申しわけありませんが、いただいてませんわ。ルーン公爵家に届いたのかしら」

「え?」

「ご用件は?」

「シア、どうした?。ああ。これは家の関係だから任されるよ。」

「わかりました。失礼します」



リオの害虫駆除場面に出くわしてしまった。

ルーン嬢が少し進むと振り向いてキョロキョロしてる。


「ルーン嬢?」

「グランド様ごきげんよう。」

「どうしたの?」

「最近いつもとは違う視線を感じるんです。ただどこからかわからなくて」

「リオには?」

「気のせいかもしれないので話してませんわ。最近忙しそうなので。」


気配に敏感な彼女が見つけられない?。


「きっと気のせいです。失礼しますね」


ルーン嬢が去っていった。なんともないといいけど、この時俺はちゃんとリオに伝えておけばよかったと後日後悔するとは思わなかった。



今日も友人はリオの慌てふためく姿をみたいらしい。


「マール、知ってるか?」

「興味ない」

「ルーン嬢のことなのに?」

「レティシア?」


リオが本から顔ををあげて、友人に視線をむけた。

友人が愉快に笑ったけど、バカなのかな。ルーン嬢関連は要注意だよ。

確かにリオが興味のもつ話題はルーン嬢だけだよ。

必要な情報は自分で集めてるし。


「レティシア嬢」

「俺、おまえに名前を呼ぶこと許してないんだけど」

「ルーン嬢、最近お前といないだろ?」

「俺、気が長くないからさっさと言ってくれる?」

「興味ある?」

「いい。自分で調べる」

「後悔するかもよ」


リオが不機嫌になってるから。お前さリオの機嫌も読めないのに友人を名乗るのやめたほうがいいんじゃないか…。リオは一応、男たちとは比較的友好的に過ごしている。

勉強も訓練も付き合ってくれるし。


「リオをこれ以上不機嫌にさせたらまずいから勿体ぶらずに教えてやれよ」

「サイラスも知りたい?」


興味ないとは言えないよな。


「ああ。知りたい」


俺の返答に満足した友人は偉そうな顔を作った。

バカだけど憎めない奴なんだよな。


「連日、ルーン嬢はビアードのところに通ってるらしいよ」

「は?」

「え?」


その情報は知りたくなかった。

リオにも知られたくなかった。


「驚いた?」

「なんで?」

「知らない」


無言で立ち上がったリオを止める。


「リオ、もう授業はじまるよ」


座った。

友人に話しかける。


「満足した?」

「なにが」

「リオ、慌ててるよ」

「わかりずらい」


納得がいかないみたいだな。

公爵家の人間がわかりやすく慌てたりしないよ。授業が終わると、公爵家なのにわかりやすい人物がきた。


「マール、いいか?」

「ビアード?」

「あいつの事」

「何があった?」

「相変わらずだな。本人には言うなって言われてるんだけど、ここ数日、放課後になると視線を感じて怖がってる。お前には話せない理由があるらしい。俺にもそれ以上は話さない。」

「悪いな。後は任されるよ」

「俺から話したって言うなよ。あいつ、うるさいから。最近機嫌悪いから、小言言ったらキレるから気をつけろよ。本当にうるさいから」


ビアードの顔が歪んでいる。

ルーン嬢がうるさい?


「キレる?」

「あいつ短気だろ?すぐ怒るよな」

「シアに何した?」

「なにもしてない。まどろっこしいからかかってこいって怒ってる。」

「シアが?」


ルーン嬢はビアードにだけ態度が違うもんな。

リオは動揺してるけど、これがお前の望んだ光景?


「ああ。昔から短気なところは変わらないよな。麗しのルーン公爵令嬢が。」


ビアードはそろそろ黙ろうか。

最近側にいないルーン嬢がビアードの側で素直に感情表現してるってまずい。

俺も混ざろうかな。ビアードがこれ以上リオの地雷を踏まないように。


「ルーン嬢は今日もくるの?」

「今日は俺は殿下に用があるって言ってあるから来ないだろう。」

「どこに行くっていってた?」

「知らない」


そこを聞かないあたりがリオとビアードの違いだよな…。

ビアードはルーン嬢の話を聞くだけなんだろうな。

リオと違って。


「リオ、どうする?俺が行こうか?」

「いや、俺が行く。ビアード助かった。」


リオが帰り支度もしないで去っていった。


「ビアード、あんまりリオを刺激するなよ」

「どのあたりが?」

「ルーン嬢はお前には態度が違うんだ」

「本当にあいつは失礼だよな。俺さレティシアは視線の正体わかってると思うんだよ。あいつがわめく時ってどうにもならないことを我慢してる時だから。マールに頼らないのはマールの関係者。あいつがうるさいから俺が動こうかって聞いたら必要ないってさ」

「よくわかってるんだな」

「それなりに付き合い長いからな。」


ビアードなりにルーン嬢を心配してるんだろうか。

これがルーン嬢の言うビアードのわかりにくい優しさだろうか。


「俺はこれで」


ビアードが去っていった。

ビアードは良い奴だよな。リオがビアードより人気があることが不思議でたまらない。


翌朝登校すると、リオを困らせたがってた友人がリオに掴みかかられていた。

俺はため息を我慢できなかった。


「お前、シアのあとをつけてた?」

「観察してただけだ」

「わざわざ気配を消して?」

「癖でつい。」

「俺のシアを怖がらせて覚悟はできてるんだろうな」


こんな所で喧嘩すんなよ。

リオは、生徒会役員だろ。

生徒の模範。学園の秩序を守るのが役目だろ?

生徒にしめしがつかなくなるよ。


「リオ、落ち着いて。悪気があったわけじゃ」

「どうでもいい」

「ルーン嬢はどうだった?」

「こいつが犯人って気づいてたよ。シアは俺の友情が壊れるのも俺の指示でもどっちも嫌だって。シアに怯えた目で見られた俺の気持ちがわかる?」

「トラウマ再発?」

「本当に勘弁。あの悪夢が蘇えるのかと思ったよ。しかも頼ったのがビアード?ニコルでもセリアでもなく。なんであいつなの?元凶はこいつだろ」


確かに、もしスワンを頼ればこんなことにはならなかった。

シオン嬢はおもしろがって引っ掻き回すかもしれないけど。

彼女はルーン嬢には優しいけどリオには冷たいから。


まずいな。リオが暴走してる。いっそルーン嬢来ないかな。

あれは、


「リオ、ルーン嬢来たけどいいの?」


リオが友人を解放した。


「シア!!」


さすがリオ。行動が早い。

もうルーン嬢の所にいる。


「サイラス、俺は助かった?」

「わからない。念願の慌てるリオに満足した?」

「もうやめる。」


本当にもうやめて。面倒だから。

やるんならリオをなだめられるようになってからにして。

リオをなだめられる相手なんて一人しかいないけど。


「必要ない」

「でも、エイベルが迷惑をかけたなら謝りなさいって」

「朝からビアードの所に行ったの?」

「はい。シエルを立ち会わせてたので大丈夫ですよ」

「まさか、毎朝?」

「時々ですよ。」

「何をしに」


また雲行きが怪しくなってきたな。

自業自得の友人は放っておこう。


「ルーン嬢おはよう」

「グランド様、おはようございます」

「リオに会いに来たの?」

「いえ、はい、そうです。会いに来たんです」


ルーン嬢が察してくれた。

彼女、勘はいいんだよな。


「リオがルーン嬢のお茶が飲みたいって。放課後行ってあげてくれる?」


きょとんとしているルーン嬢に視線で訴える。

お願いだからリオの機嫌とって。この後の授業に影響がでるから。実技の授業なんだよ。

うっかり死人がでるかもしれないから。

ルーン嬢がリオの腕を掴んだ。


「わかりました。リオ、放課後伺ってもいいですか?」

「ルーン嬢もリオに会えなくて寂しかったでしょ?」

「い、ええ。ご一緒したいですわ。リオよろしいですか?」


うん、大丈夫。機嫌なおった。

ルーン嬢の上目遣いに弱いからな。

リオは隠しているけど、俺は知ってるよ。


「もちろん。教室に迎えにいくよ」

「それは、あ、はい、ええ、お待ちしておりますわ。」


最近、ルーン嬢と視線で会話できるようになった気がする。

リオが満足そうに笑ったからもう一安心。

ルーン嬢も一難去ったのがわかったみたい。


「私、授業がありますので失礼しますわ。」


颯爽と去っていったルーン嬢をみて、友人がルーン嬢が女神に見えると言う言葉は聞かなかったことにした。

お前さ自殺願望あるの?

次からは助けないよ。

その後の武術の授業で友人がリオにコテンパンにされたのは仕方ない。

訓練なんてそんなもんだよな。

これでこりると、いいんだけど。


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