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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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おまけ リアナの日記3

ビアード視点


朝からシオン嬢から時間をつくってほしいと呼び出された。

火急の用と聞いたので了承の返事を出し、部屋で持っているとシオン嬢とレティシアが来た。


「ビアード様、私達用があるので夕方までレティを預かってください」

「セリア、なんでですか?私、大丈夫ですよ」

「学園内が今は慌ただしいでしょ。リオ様も今日は手が離せない。また何かあったら危ないわ。」

「自室で過ごします」

「今日はシエルがいないんでしょ?レティが食事もせずに倒れたら大変よ」

「倒れません。」

「ビアード様、お願いしても。もしお仕事に支障があるなら」


シオン嬢が俺にレティシアを預けたい?

あの事件がおきたばかりでマールもシエルも傍にいないだと?あの過保護なマールが?

あいつが傍を離れるって…。納得。

たぶん今後の方針を話し合うのか。レティシア抜きで。こいつがいたらうるさくて話し合いにならないか。

シオン伯爵家には世話になっているから、協力するか。


「レティシア、午後から訓練に付き合ってやる。だから仕事手伝え」


丁度書類仕事がいくつか残ってる。



「レティ、よかったわね。私はこれで失礼します」


シオン嬢が去っていったので侍従を呼んで控えているように命令する。

勝手にお茶の準備をする侍従は気にしない。


「座れよ」

「エイベル、一人で平気なので失礼します」

「せっかくお前のために侍従がお茶をいれてるのにな。うちのもてなしを断るのか?」


いつも勝手に居座るのに変だな。訓練って聞いたら喜ぶのに全く関心をもたない。

出されたお茶を断るのは失礼だよな。

礼儀はわきまえてるのかソファに座ったな。


「いただきます。」


レティシアがお茶やお菓子もおすまし顔で食べる。静かすぎて不気味だ。

レティシアの向かいのソファに移動する。

こいつが何かに夢中な時って目を離すとろくなことないんだよな。



「何が気になってるんだ?」

「なんでもありません」

「俺は聞いたことをマールに話したりしない。静かすぎて不気味なんだけど」

「不気味・・」

「やっぱり変だよ。いつもうるさいのに。調子狂う」

「ひどい」

「お前が言うな」

いつもの勢いが全くないな。

「たぶんこのままだとマールに問い詰められるけど」

「そんなにわかりやすいですか?」

「ああ」


レティシアが沈んだ顔をした。


「あれでよかったのかなって」

「あれ?」

「私、ルメラ様と関わるの面倒でしたの。だから放っておいたんです」


ルメラ嬢のこと?


「放っておいた?」

「ルメラ様の態度は男爵令嬢としてありえません。でも平等の学園だし、面倒だから放っておいたんです。でも貴族になったばかりの彼女に正しいことを教えるべきだったのでしょうか。自分のことだけじゃなくてちゃんと彼女の事を考えて関わったらこんなことにはならなかったのかなって」


よく自分を害した人間に、そんなことを思えるよな。

過度な甘さは身を滅ぼす。特にレティシアはルーン公爵令嬢だ。

匙加減の間違いは致命的になる。

ここでルメラ嬢をレティシアが庇えば、公爵令嬢としての評価はさがる。貴族として、罪を犯した相手を見過ごすことは正しい判断ができないととられる。また自分に危害を加えた人間を簡単に許せるレティシアを利用するために近づくバカもでてくる。マールが守るとしても限度がある。


「お前、やっぱりバカなの?」

「はい?」

「無理だろう。教育不足は家の責任だ。教育不足の子供を学園に送り込んだ男爵家の罪だ。もし動くなら同派閥の連中だ。それに他人を貶めたり脅したり殺そうとすることは地位に関係なく許されない。子供でさえも知っていることだ。それは人として裁かれて当然だ。彼女の罪も今までの無礼な態度で裁かれるわけではない。大人も子供も自己責任だ。それに彼女の周りには貴族がいただろう。それでも態度が変わらなかった。お前が何を言っても無駄だ。」

「無駄・・」

「それに学園には礼儀をわきまえない奴も多い。一人一人に向き合って教えるのか?本人にやる気がないのに」

「無理ですわ」

「そう、無理なんだよ。それにルメラ嬢はレティシアを嫌っていた。絶対にお前の言葉なんて聞かないだろう。ただでさえ人の言葉を聞かないのに」

「エイベルにしては一理あります」

「お前な。まぁ、いい。それにお前がルメラ嬢への態度に後悔してなんになるの?それ必要なことか?」


「わかりません」

「後悔しても過去は変わらない。沈んでるお前を見たらどうなるかわかる?」

「わかりません」

「ルーン公爵令嬢が殺人未遂に心身共に傷ついている。お前の弟と婚約者はどうするだろうな」


「エディとリオが怒ります。私を傷つけたら取りつぶすって言ってました・・。」

「それにうちの派閥が動くだろう。筆頭派閥のルーン公爵令嬢のためと」

「望んでません」

「だろうな。でもお前の様子を見て勝手に動くと思うよ。」

「私が沈めば、事が大きくなるんですね。もうやめます。忘れます。後悔するだけ時間の無駄です」


いつもの調子に戻って来たな。


「たまにはうちも動こうか?」

「いりません。私は気にしません。どんな事情があれ貴族となった時点で責任と家を背負います。罪は自己責任です。しかも社交デビューがすんでますもの。陛下に認められた時点で貴族の一員です。陛下の期待を裏切る貴族はいりません。私はもう関与いたしません。」

「吹っ切れたか?」

「はい。私、傲慢でした。私がどんなに頑張ってもどうにもならないことでした。エイベル、ありがとう」

「調子戻ったな。」

「心配しました?」

「まさか、仕事手伝え。たまには相手してやるよ」

「珍しい。今日は雨が降りますかね」

「帰るか?」

「ごめんなさい。嘘です。お仕事手伝います。早くお仕事を終わらせて訓練しましょう」


もう大丈夫か。

仕事をおえて訓練場に行こうとするレティシアに食事をさせた。

夢中になると食事を抜く癖は変わらないらしい。

昔もよくこいつを食事に呼びにいかされたな。

食事の時間を忘れて没頭していることが多かったからな。

軽く訓練するつもりだったのに、レティシアに付き合ったらあたりは暗くなっていた。

さすがにこの暗さはまずいか。

着替え終わったレティシアを連れて玄関に向かうと迎えがいた。


「マール、あと頼んだ」

「ビアード、大丈夫か?」


マールが珍しく涼し気な顔をしてない。

大丈夫?レティシアのことだよな。


「俺はお前と違ってわからない。相変わらずうるさい」

「エイベル、ひどいですよ。具合悪かったんですか?」

「悪くない。マールと帰れ。お前の迎えにきたんだよ」


首を傾げるな。それ以外にここにいる理由がないだろ。


「シア、送るよ」

「リオ、お仕事は?」

「今日は終わり。」

「わかりました。お疲れ様です。エイベル、失礼します」

「ああ。気をつけろよ」


レティシアがマールの手をとり帰っていった。

あの感じなら大丈夫だろう。

その晩、俺はマールに部屋に押しかけられた。

詳細は話さなかった。珍しく深く追求されなかった。

お礼を言って、あっさり出ていったマールが不気味だが気にしないことにした。

あの二人に関することは深く突っ込んだらいけない。どんな被害を被るか想像もできない。

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