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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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おまけ リアナの日記 1

マール公爵夫人視点


呼び出さなければ私のもとを訪ねないリオが突然部屋に入ってきた。

あの事件の後だからレティの側にずっといると思ってたわ。



「母上、お願いがあります」


先触れなく帰ってきたことに気づいてないのかしら。真剣な眼差しの息子と礼儀についての話は後にしましょうか。


「どうしたの?」

「今回の騒動はご存知ですか?」

「ええ。報告はルーン公爵からも」


ルーン公爵令嬢殺人未遂。

ステイ学園での警備の見直し等、色々と大変なことになっているみたい。

うちはそんなに関係ありませんが、ルーン公爵は忙しいでしょう。


「シアから当事者と気づかせずに、事後処理をどうしたいか話を聞いていただけませんか。俺も真相は全部知ってます。明後日、訴状をルーン公爵邸でまとめにいきます。ただこの事件の一番の被害者はレティシアです。俺は最低限しかシアに教える気はありません。耳に入らないように手配します。たぶんシアは真相を知ったら落ち込んで引きづります」


リオはレティが自分以外の男のことで思い悩むのが許せないのよね。

真相を知ればレティは伯爵家のことを気にかける。レティのことはルーン公爵家が決めること。他家の私が口を出すべきではない。



「レティシアへの説明をどうするかはルーン公爵と決めなさい。リオは何を知りたいの?」

「第三者視点で真相を知ったシアの考えを。俺は全員死刑と取りつぶしで構いません。でもセリアがシアが自分の所為で人が死んだと知れば引きづるって言うんです。被害者のシアがあんな奴らに傷つけられるなんて俺は嫌です」


レティの答えは考えなくてもわかる。妹と違い貴族らしいレディは陛下とルーン公爵の考えに従うって言うでしょう。

リオが本気で心配しているけど私はあの子がそこまで気にするかと思ってしまう。


「レティシアの話を聞かなくてもわかるんじゃないの?」

「なんとなくは。でもセリアは絶対に俺はわかってないって言うんです」


セリア嬢は変わらないわ。

身内以外でリオに容赦なくはっきりものをいえるのはセリア嬢とエドワードくらいよね。


「そのルーン公爵邸の話し合いにレティシアは」

「参加させません。許可はあります。叔父上には望むならマール公爵家の同席は構わないとも許可をいただいてます。セリアも同席するそうです」

「あなた達二人は本当にレティシアが好きね。昔から取り合いしてたわね。いいわ。うまく聞いてあげる。リオは同席する?」

「できれば」

「旦那様も参加しそうね。二人で泊まりなさい。いつにするの」

「母上の都合がよければ、これから連れてきますよ」

「貴方がここにいるんだからレティの体は大丈夫なのね。いいわ。お茶の用意をしておくわ。迎えには」

「俺が行ってきます」

「気を付けてね。ルーン公爵邸には私が手紙を書くけど、外泊届は出しなさい」


気付くとリオはいなかった。

あの子は時々人の話を聞かない。

旦那様にレティが来ると話したら仕事のスピードが早くなったわ。

リオの話をしたら、旦那様がレティに話しを聞いてくださるみたい。旦那様がレティを心配しているのか、過ごしたいだけなのかはわかりませんが。

サロンに移動して、旦那様のお土産を茶菓子として用意させましょう。旦那様はレティの好物の蜂蜜菓子をまた買ってきたので。

そろそろ帰ってきますね。


「レティ、いらっしゃい。突然呼び出してすまないな」

「お招きありがとうございます。久しぶりにお会いできて嬉しいです」


旦那様、レティの笑顔にお顔が崩れてますよ。


「レティ、体は大丈夫?」

「はい。大丈夫です。倒れるなんてまたお母様に叱られてしまいます」


ローゼなら注意がたらないって言うかもしれない。

あの子の注意の視点は時々おかしいのよね…。

レティは優秀だからほとんど注意をする必要がなかったのが救いかもしれない。


「お母様には伯母様が叱らないように伝えるから安心して」

「いつもごめんなさい」

「いいのよ。旦那様のお土産があるからいただきましょう」

「伯父様、ありがとうございます。いただきます」


レティが幸せそうにお菓子を食べてる様子に旦那様もリオも顔がにやけてます。可愛いのはわかりますが。この二人はそっくりよね…。

多分この後リオが自分の分をレティにあげるわ。


「レティ、辛かったら話さなくてもいいんだが他国の友人の娘にも似たようなことがあったんだ。ただ娘の話を聞きにくいみたいでレティの意見を聞かせてほしい。これはレティとしてね」


ルーン公爵令嬢としてではなく、個人として意見が欲しいと旦那様が話しました。


「はい。お父様達には」

「勿論私の友人の話だから話さないよ」

「わかりました」

「まず罪人の少女の話なんだけど」


旦那様がリアナ様の生い立ちから入学までの流れを話しました。首を傾げているレティ。私的な時のレティは表情豊かでわかりやすく可愛い。


「レティ?」

「お母様が家から全く出ずにご令嬢だけで外に出掛けるって危ないですよね。そんな家があれば領主が保護しなければいけません。村でいじめにあってるみたいです」

「その家は領主の愛人の家だったからね。村人も安易に関われないよ」

「お母様と少女での生活はさぞかしご不便だったんでしょうね」

「ロキとは違うよ。衣食住が保証されて自分の世界で好きなだけ生きられる。責任も仕事もない。別に親子は不自由してないだろ?」

「私はお母様を尊敬してますがお母様と二人っきりで時々しか帰ってこないお父様を待って家でずっと過ごすのはつらいです。きっとおかしい子になりますわ。さぞ味気ない幼少時代でしたと」


レティ…。確かに貴方がずっとあの家で使用人もなく育ったならどうなったのかしら。

見知らぬ少女に心を痛めるなんて本当にあの夫婦の子供なのかしら。

リオは嫌な顔を我慢している。


「幼い頃からたった一人の庇護者であるお母様に洗脳されるなんて恐ろしいです。そのお母様は絶対に療養が必要です。それにたくさんの殿方を娘の虜にさせたいなんて、恐ろしいです。虜になった殿方に追いかけられるのがどんなに怖いかわからなかったんでしょうか…」

「シア!?落ち着いて、大丈夫だから。もう変態は追い払ったから」

「どういうことだ?リオ」

「手配済です。ただ少し出遅れたのは反省してます」


うちの二人は放っておきましょう。


「レティ、大丈夫?」

「すみません。私は少女ではなく領主とおじさまとお母様が裁かれるべきだと思います」

「シアはどうすべきだと?」

「まずは少女に謝るべきですわ。親の理想を押し付けて、少女の子供時代を潰しました。それにこんな二人に育てられ、少女が貴族として生きれる訳ありませんわ。その後の少女が罪を犯すなら両親の責任です。そのお父様も貴族として失格です。愛人とはいえ自分の家族に満足な環境も与えずに子供に野望を押し付けて自分は美味しい思いがしたいなんて、貴族位を返上すべきですわ。そんな領主に仕える領民が可哀想ですわ。まず夢と現実が区別つかないならその方も病院でしょうか。ご両親にルーンの医務官を派遣しますか?」

「他国だから必要ないよ」

「貴族位の返上だけでいいの?」

「あとは少女が決めればいいかと。最大の被害者は少女ですから」

「最大の被害者…」


リオにはレティの考えは受け入れ難いようです。


「そうか。その少女なんだけど、」


リアナ様が伯爵令嬢に利用され村の友人に殺害の依頼をした話ですね。


「貴族の私情に平民を巻き込んだことが許せません。平民の少女を騙すなんて貴族令嬢には簡単です。だからこそ恥を知るべきです」

「シア、もし2年の武術大会の同じ事情があったらどうする?」


リオ、それは平気なの?


「もっと修行を頑張ります」

「違う、報復」

「殿下のお考えに従います。私的な意見は、私は無事だったので罪は求めません。ただアナ達を傷つけたことについては謝罪して二度とそんなことをしないように心を入れ替えてほしいです。でも貴族に脅されたなら事情は変わります。私は彼らを利用した貴族への抗議を。そんな方は私が性根叩きのめします」

「騙されて殺害を依頼した少女に罪はないと?」

「はい。騙されたのは仕方ありません。ただ疑問に思ったなら誰かに相談できればよかったのに」


リオが頭を抱えた。このままいけばほとんど罪にならないと。


「俺はどんな理由はあろうとも人を殺そうとしたなら重く裁かれるべきだと思うよ」

「まだ子供の平民です。裁かれるべきは騙した貴族達と領民が助けを求められないような領主です。その実行した方々が殺しを喜んでいたのなら重く裁かれるべきです。ただ私はあの方々の死刑は望みません。更生の道があるならそれを示してほしいです。あとはアナとリナとロン、クラム様やニコル様の考えに従います」

「それはシアを助けた俺も含まれる?」

「そうですね。ただご家族に恨まれ、ルーン公爵家に迷惑がかからないような落としどころがいいです」


リオ、レティを誘導したわね。


「これって私の話ですか?あの件はもう終わったのではありませんか?」

「いや、シアの話じゃない。俺が感情移入し過ぎた。悪い。依頼した家族はとりつぶし?」

「爵位を返上すべきだと思います。貴族が庇護すべき平民を騙すという禁忌を犯しましたもの。あと被害者と巻き込んだ方々への謝罪と慰謝料の支払いは望みます」

「そうか。あとは」


リアナ様の恋心と伯爵令息ハクのお話ですね


「伯父様、失礼ながら物語でしょうか?非現実的すぎます。少女のお母様の夢物語を信じる貴族がいたんですか?」

「世界には色んな人がいるからね。レティも気をつけなさい。レティならどうする?」


レティがリオを見て目を伏せました。


「好きな人に利用され、心をズタズタに引き裂かれて苦しいのに、これ以上裁く必要があるのかな。私だったら痛くて苦しくて水に溶けてなくなりたい。今度はちゃんと幸せになってほしいです」


リオがレティに手を伸ばそうか迷ってますね。リオ、ちゃんとレティの心が手に入ってよかったわね。

レティが目を開けました。


「でも少女を利用しようとした貴族は許しません。自分の利益のために無知な少女を利用した。人としても貴族としても許せません。しかも平民だった幼い少女に、手を出すなんて貴族位を返上して謝罪くらいじゃ許しません」

「例えば?」

「慰謝料はもちろんですが、少女の味わった痛み以上の苦しみを。死刑なんて楽も嫌です。伯父様、ごめんなさい。私は刑に詳しくありません」

「構わないよ。死刑は楽なの?」

「死んで当人は痛みや罪から解放されて自由です。被害者が遺族から恨まれますこともあります。残された人が後始末しますのよ。どうして一番悪い人間が一番楽な道を選べるんですか?ずるいです。自分の意思で人を傷つけたんですもの。それ相応の償いを。償い…。リオ、やっぱりわかりません」


レティが困ってリオを見ましたね。昔からレティは困るとリオを探すのよね…。


「いや、もういいよ。シア、この少女は裁かれなくていいと本気で思ってるの?」


「少女の貴族への無礼は少女の両親のせいです。しっかり教育してから貴族としてお披露目すべきでした。夢物語は自由です。幼い頃から洗脳するなんて最低です。過去に戻れるなら少女はうちで保護します。お母様は療養所にいれてお父様は貴族位を返上すべきです。馬鹿な夢を見るならお一人で。馬鹿な貴族に仕える領民が可哀想です」

「両親には怒ってるのに少女には同情するのか」

「はい。少女はしっかりした環境で教育され今度こそ自分で幸せをつかんでほしいです」

「シアはさ、ルメラ嬢への裁きは殿下に従うっていったけど、シアに任されたら?」

「私は特に気にしてません。無事ですし。できれば礼儀をお勉強してほしいくらいですね。」

「本当に?」

「はい。誹謗中傷なんて貴族の世界では当然です」

「階段から落とされたのは」

「あれは事故ですよ。お母様に不甲斐ないって怒られるのが怖いくらいです」

「なんでいつも報復しようとしないんだよ」

「それ必要ですか?ルーン公爵令嬢として必要な時しか動きたくありません」

「俺がかわりにやってやるよ」

「報復する時間があるなら訓練してください。強くなれば怖いものはありません。報復なんて無駄なことに時間を費やすなんてもったいないです。お忙しいリオ兄様の時間をたまにはシアにくださいませ」



「リオ、負けてないか?」

「昔からレティに敵わない子ですから」

「レティ、お土産があるんだ。執務室に行こうか」

「旦那様と行っていいわよ」

「たまには昔みたいに抱っこしようか」

「父上、犯罪です。絶対にやめてください」

「お前は心が狭いな。リオは気にしないでいこうか。きっと喜ぶよ」

「伯父様、リオ兄様より先にもらっていいんですか?」

「ああ。リオにはいつでも渡せるから」


レティが旦那様と去っていきました。旦那様はたぶんリオにお土産は用意していません。


「リオ、あれでよかったの?」

「母上、シアって優しいか厳しいかわかりません」

「両極端よね。でもリアナ様が裁かれないわけにはいかないわよね」

「はい。地獄の修道院に送って生き地獄の予定だったのに」

「まさかリアナ様だけでなく、伯爵令息・令嬢、ルメラ夫妻まで記憶さらしをするとは思わなかったわ」

「ルーン公爵家が怒ってますから」

「あの家は両極端なのよ」

「明後日揉めますね」

「今日はゆっくり休みなさい」

「はい。母上、ありがとうございました」


リオはきっとレティを取り返しにいったのかしら。

どうなるかしらね。

明後日妹が暴走しないといいんだけど。

念の為私も参加したほうがいいかしら。



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