レティシア7歳 お嬢様の焼き芋
庭師見習いダン視点
庭で枯れ葉を集めているとお嬢様が現れた。
うちのお嬢様はお転婆だ。
また何か思いついたんだろうか。
今日は奥様は、家にいないのかな?
「ダン、この枯れ葉どうしますの?」
「半分は肥料にして残りは捨てますよ」
「捨てる分の枯れ葉をくださいませ」
「何に使うんですか?」
「焼き芋します!!」
「焼き芋?」
「本にのっていたんです。枯れ葉に火をつけて中でお芋をやくんです」
この興奮したお嬢様は俺には止められないな。
「シエルとケイトが一緒ならいいですよ」
「すぐに連れてきますわ!!」
「お嬢様、ここではできないので使用人宿舎の庭でもいいですか?」
庭園でそんなことしたら師匠に殺される。
「わかりましたわ」
お嬢様が駆けていかれた。師匠に説明し枯れ葉を片付け庭に向かう。
お転婆お嬢様の思い付きに屋敷のみんなが振り回されてる。
みんなお嬢様が可愛くて、喜んでるみたいだけどな。
うちの師匠もその筆頭だ。
お嬢様に連れられて、シエルが袋とケイトが芋を持って来た。
「お嬢様、本当にやるんですか?」
「お父様とお母様もいない今日がチャンスです。枯れ葉に出会ったのも運命です」
お嬢様が目を輝かせてシエルを説得してる。この時期ならいくらでも枯れ葉ありますよ。
ケイトは苦笑してる。
「シエル、このお嬢様は止まらないよ。諦めよう。お嬢様、水は?」
「水?」
「火、消すときに必要でしょ?」
きょとんとした顔をしてる。忘れてたな。
お嬢様に任せたらバケツをひっくり返すだろうな。
「俺が持ってくるよ」
俺がバケツに水をくみもどると枯れ葉と手紙!?
「お嬢様、これ本当に燃やしていいんですか?」
「ゴミですもの。有効活用しましょう」
「わかりました。お嬢様は離れていてくださいね。火はどうやってつけるんですか?」
「ケイトの魔法で」
「だから俺をご指名だったんですね。」
「魔法はついでですよ。お友達と焼き芋したかったんです」
「ダン、シエルとお嬢様と離れて見てて。お嬢様が近づかないように」
「お嬢様、行きますよ。不満な顔してもだめです。」
二人を連れて、木まで離れる。
ケイトが芋をしこんでお嬢様の手紙を破いている。
「ダン、結界はれ」
詠唱をして結界で覆う。
突然燃えた紙をケイトが消そうとコントロールしている。
お嬢様が近づこうとするのを抱きあげておさえる。
お嬢様が小声で何かブツブツ言っている。火が消えたみたいだ。
もう安全なので腕から解放するとお嬢様はケイトに向かって走っていく。
「ケイト大丈夫ですの?」
「はい。突然魔力の気配がしたんで、もう大丈夫です。そんなに落ち込まないでください」
「ごめんなさい」
お嬢様、落ち込んだな。
仕方ないか。
お嬢様の頭を撫でる。
「お嬢様、焼き芋しましょう。枯れ葉を集めてくるから。今度は手紙は混ぜないで。」
「そうですよ。俺、怪我してませんよ。大丈夫ですよ。芋がまだ焼けてません。やり直しましょう、ダンと枯れ葉を集めてきてくれますか?俺はシエルと芋を準備するんで」
「お嬢様、みんな無事ですよ。安心してください。せっかくなので焼き芋しましょう」
「お嬢様、俺は大丈夫なんで笑ってください。ずっとやりたかったんでしょ!?」
「お嬢様、行きますよ。」
お嬢様を連れて枯れ葉を集めにいく。
できるだけゆっくり。たぶんシエル達は手紙の回収をして、執事長に報告に行くつもりだろう。
「お嬢様大丈夫ですか?」
しょぼんとして落ち込んでるな。どうするかな。
お嬢様いつも元気だから調子狂うな。
うーん。困ったな。妹はお菓子をあげれば喜ぶんだよな。
仕方ないな。
お嬢様を抱き上げて肩の上にのせる。
瞳を大きく開いて驚いてるな。お嬢様はすぐに顔に出るからわかりやすい。
「高いです!!景色が違います。」
「お嬢様、暴れないでくださいね」
お嬢様が固まった。可愛いな。
お嬢様、軽いな。
「多少、なら動いていいですよ。楽しいですか?」
「はい!!楽しいです。」
お嬢様も元気になったかな。
「そろそろ枯れ葉を集めましょう。手伝ってくれますか」
「はい。頑張ります。」
お嬢様を降ろして枯れ葉を集める。
お嬢様に箒を渡したから時間がかかるだろうな。
集まったみたいだな。ちりとりにうつして、運ぶ。
お嬢様は自分で持ちたいみたいだけど転んだらシエルが怖いから譲ってもらった。
お嬢様はいい意味でも悪い意味でも期待を裏切らないから。
シエルも戻ってるな。片付けは終ったみたいだ。
二人共お嬢様の顔をみて、安心してるな。
ケイトも憎まれ口ばかりだけどお嬢様を気に入ってるしな。
お嬢様は枯れ葉で焼いた芋にご満悦だった。
これからも俺はこのお転婆なお嬢様に振り回されるんだろうな。
手紙が発火した件は執事長に報告しお嬢様への届け物は全て安全確認が行われることになった。
俺はこのお転婆なお嬢様の成長をそばで見守ろうと思う。
お勉強が大変そうなので気分転換くらいは付き合いますよ。
お嬢様は俺の肩の上に乗るのがお気に入りらしい。
お嬢様は小柄なので抱き上げるのは簡単だ。
あと3年くらいが限界かな。
その頃にはお嬢様も、お年頃だからねだってこなくなるかな。