レティシア3年生 自覚
92話あたりのお話です。
セリア視点
リオ様はレティを溺愛している。
私がリオ様に出会ったのは神殿でレティを通して紹介された。
あの頃からリオ様はレティに惚れ込んでいた。
昔からリオ様はレティに必要以上に人が近づかないようにしていた。
レティは私とリオ様がいれば満足していたので、気づいてない。
レティは変わっている。
リオ様はレティは自分には厳しいのに、周りには甘いと勘違いしている。
レティは周りに興味がないだけなのに。
だから嫌がらせも全く気にしない。
リオ様が学園に入ってからの周りへの牽制は笑えたわ。
婚約者なのに、全く余裕がない。
レティに近づく殿方にも容赦なかったわ。
あの二人は昔から距離が近かったのよね…。
リオ様はレティに惚れ込んで大事にしているのにレティには身内贔屓としか伝わってないから失笑よね。
レティもリオ様のことは大好きだったけど、恋愛ではなかった。
口うるさい保護者?って聞いたら目をそらしたから図星よね。
「レティ、リオ様とビアード様だとどっちが好き?」
「エイベルは敵」
「嫌いではないでしょ?」
「はい。二人とも幸せになってほしいと思いますよ」
レティには好きはまだ難しいか…。
ビアード様には余計に素直じゃないからねぇ…。
「頼りがいがあるのは?」
「リオ」
「一緒に遊びたいのは?」
「セリア」
これを聞いたらリオ様が悔しがるわ。
即答するレティは可愛いな。
過保護なリオ様とは、できることが限られるもんね。
「リオ様とビアード様なら?外聞とかは気にしないで」
「エイベル」
「どうして?」
「エイベルと一緒にいるのは楽だから。うるさくないし、お説教しないから。」
「ビアード様と婚約したかった?」
「どうして?私は殿下以外なら誰でも良かったわ」
「リオ様じゃなくても?」
「うん。お父様の命令に従うだけだから」
レティはリオ様よりビアード様のほうが好みか…。
全く報われない。
リオ様がレティに片思いしてるという噂は真実と知っている人間はどれだけいるのかな。
レティは噂を聞いて、ありえませんわと笑っていた。
レティの即答に思わず笑ってしまった。
きっかけはわからない。
でも2年生にあがると、時々レティがリオ様に見惚れることがあった。
リオ様は全く気づいてない。
微笑むリオ様にぼんやり見惚れるレティ。
「シア、どうした?」
「いえ、なんでもないです、本当に」
「また隠し事してないだろうな」
レティの顔が変わった。見惚れたことを勘違いと思ったみたい。
「悪いことなんてしてません。セリア!!」
抱きついてくるレティを抱きとめる。
「レティ。」
リオ様が忌々しげに見つめてくるので、笑顔で見返す。
レティにだってリオ様に言えないことくらいあるわよ。
当然でしょ。
「リオ様、レティ嫌がってるので帰ってください」
「シア、ごめん。」
「今日はセリアといます」
「嘘だろ?訓練付き合うから。」
「レティ、行こう。お昼は一緒に作りましょう」
「シア、俺の部屋使っていいから」
「リオ兄様、失礼します」
最近社交で忙しいレティの貴重な休養日にレティに振られたリオ様が睨んでくるのは気にしない。
ルーン公爵家長女のレティは貴重な戦力。
休養日にお茶会や社交会に参加している。
なぜか外出届けはビアード様に提出しているけど。
きっとリオ様に提出して、細かく聞かれるの嫌なのよね。
リオ様はレティがしつこく聞かれるのが嫌いなことに気づいてない。
あの子面倒なこと嫌いなのよ。
相変わらずリオ様はレティへの嫌がらせを心配して、細かく聞いてくる。レティに嫌がられたくないなら、自分で調べればいいのよ。バレなければいいんだから。
教えないけど。
リオ様の小言に怒ったレティの無視は楽しかったわ。
事情を聞かなくても様子を見てたらわかるわよ。
いつかは、レティがこうなるのは予想してたし。
リオ様は本当にうるさいもの。
リオ様はレティに避けられたことがないから動揺して挙動不審で笑えたわ。
グランド様が宥めたおかげで、あっさり幕を閉じたけど。
レティ、グランド様を尊敬しているからあっさり言うこと聞くのよね。
最近のレティは社交会で忙しい。
エドワード様と二人で出席している。
社交会でレティはよく口説かれているみたい。レティは全て社交辞令としてかわしているらしいけど…。
レティの話を聞いてると、リオ様が動揺している顔が目に浮かんで愉快だわ。
3年生になった時にリオ様からルメラ様をレティに近づけないでほしいと言われた。
意味はわからなかった。
いつも通り危なかったらフォローすればいいかと見守ることにした。リオ様の過保護に付き合っていたら身が持たないもの。
恒例行事の茶会が近づくにつれて、リオ様がレティに会いにこなくなった。
いつも会いにくるリオ様が来なくなってレティは動揺していた。
「レティ、リオ様に会いにいかないの?」
「忙しいから邪魔しちゃだめです」
「会いたいなら行ってきなよ」
「大丈夫です。バイオリンの練習行ってきます」
意地っ張り。
リオ様が会いにこなくなったレティは寂しそうだった。
レティはやっぱりリオ様が特別か。
リオ様、何やってるのよ…。
次の日、レティはまた沈んでいた。
「シオン嬢、大丈夫かな?」
「落ち込んでるわね。理由気づいてないんだろうな」
「今は、リオ様とルメラ嬢の噂が出回ってるからね。レティシア嬢も知ったみたい」
「うそでしょ!?」
「今朝、ルメラ嬢の取り巻きに囲まれてたから。リオ様のこと知ったみたいだね。僕はリオ様がレティシア嬢を捨てるとは思えないんだけど」
レティはリオ様のことは気にしないように茶会に向けてバイオリンにうちこんでいった。
レティが逃避してるとはわかっていたけど、そのまま見守ることにした。
レティが話さないなら聞かない。まだ大丈夫そうだから。
リオ様とルメラ様を偶然見かけた。
リオ様は社交用の顔でルメラ様と接している。
私に気づいたリオ様はルメラ様と別れて近づいてきた。
「セリア、シアは大丈夫?」
「はい。変わりなく。」
表面上は。
「そうだよな。茶会頑張れって言っといて」
寂しそうな顔をするリオ様に失笑を我慢した。
「言いたいことはご自分で。レティは必死に練習してますよ」
「シアらしいな。今は忙しいから茶会が終わったら連れ出すかな」
「失礼します」
リオ様はやっぱりレティが一番か。
でも、今のレティを放っておくならもう知らない。
レティの演奏をききにエイミー様の茶会を見学しているとリオ様とルメラ様を見つけた。
レティが動揺するから追い払うことにした。
リオ様はレティの様子に安堵したみたい。
あれを元気ととらえたリオ様の目は狂っている。
もう本格的に邪魔しような…。
部屋に戻って暫くするとステラ様がレティを連れてきた。
レティの能面みたいな令嬢モードに驚いた。
これは限界かな…。
レティにお茶を出してゆっくり話を聞くとやっぱりリオ様のことだった。
リオ様とルメラ様…。
勘違いだけど、それは私が言うべきことじゃない。
それにレティは私が言っても信じない。
慰めてると思うだけ。
胸の痛みと苦しさで泣き出すレティを見て自覚させるしかないかな。
レティはリオ様が特別だと気づいたみたい。
勘違いしたレティはリオ様を諦めると決めた。
レティが決めたなら応援するだけ。
私はレティの相手はリオ様じゃなくてもいいから。
抱きついてくるレティを抱きしめる。
レティは可愛いからリオ様以外でも引く手数多だからね。
レティの気持ちが前向きになるまでは手を回そう。
この儚げなレティを野放しにしたら危険だわ。
もし、レティがリオ様を選ぶなら見守るけど…。
でもどっちにしてもリオ様への報復はする。
翌日、スワン様とロダ様に協力を取り付けた。
二人がリオ様側についたら厄介だから。
察しのいい二人はレティの様子を見せて圧力をかけたら頷いてくれた。
廊下の歓声が聞こえたので、廊下に行くとやっぱりリオ様がいた。レティに会いに来たのよね。
「リオ様、レティがリオ様には会いたくないそうなんで帰ってください」
「は?」
「顔を見たくないから追い払ってって」
「シアが?」
「はい。」
「嘘だろ?なんで」
「リオと会いたくないから手伝って」
「シアに何をふきこんだ?」
「そんなことしませんよ。授業がはじまるので消えてください」
リオ様が動揺しながら去っていった。
レティはぼんやり窓の外を眺めている。
諦めの悪いリオ様とレティの鬼ごっこがはじまった。
レティはビアード様のもとに逃げようとしたけど、ことごとくビアード様は捕まらなかった。
とうとうレティが捕まった。
「シア」
「リオ、やだ」
レティの泣きそうな顔にリオ様が呆然と腕を離したすきにレティが逃げた。
リオ様は固まっている。良い気味だわ。
「リオ様、レティは私に任せて近づかないでください。これ以上近づくと泣きだします」
リオ様はレティに弱い。
泣き顔は特に。私はリオ様を放っておいて、レティの部屋を訪ねることにした。
レティはリオ様にひどいことを言ったことに落ち込んでいた。
レティの頭を撫でる。
リオ様が動かなければ終わりかな。
レティは決めたら揺るがない。でもリオ様も執念深いのよね。
うーん。
ビアード様あたりに任せたいけど、たぶんリオ様が手を回してる。不自然すぎるほどビアード様に会えないと、レティがこぼしていた。
リオ様は優秀なのにレティに関してはポンコツよね。
二人は婚約者だけど、この婚約はリオ様が手を回した。
たぶんレティが破棄したいと願えば破棄される。
エドワード様が喜々として手続きすすめそうだもの。
もう少しレティの中で気持ちの整理がつけば、リオ様のために婚約破棄に動き出すんだろうな…。
長い付き合いなのに、全く噛み合わない二人よね…。
突然、寝込んだレティの見舞いに行くと、レティから話を聞いて驚いた。
グランド様が二人を取り持ったみたい。
レティはグランド様はリオの味方だからもう相談しませんって苦笑してるけど。
レティはリオ様に落ちたのか。
照れ笑いするレティは可愛い。散々泣かせたのに、自分で動かなかったリオ様に腹が立ったので、手紙を書くことにした。
エドワード様とリオ様のお兄様に。
私の兄はリオ様のお兄様と知り合いだから。マール嫡男夫妻がレティを溺愛しているという噂もある。
レティと両想いになったリオ様は慌てるだろうな。
きっと怒ったマール嫡男夫妻から仕事をたくさん押し付けられ、エドワード様からの嫌がらせも始まるわ。
レティといる時間がなくなるよね。
学園で見たリオ様は浮かれていた。
長年の片思いが報われたからよね。
でも現実はそんなに甘くない。
レティの代わりに報復はきちんとするから安心してね。
リオ様、レティとゆっくりできるなんて思わないでくださいね。
当分邪魔しますからね。
復帰したレティを赤面させて上機嫌のリオ様を見て、徹底的に邪魔することを決めた。
自覚したばかりの初心な婚約者への気遣いはどこにいったのよ!?
レティが可愛いのは当然よ。
いい加減にしないと被験者にしますからね。
グランド様を呼びにいかせてリオ様を回収してもらうことにした。
自業自得よ。いつも私の邪魔をするグランド様だもの。
リオ様の回収くらい、責任もってお願いします。




