レティシア3年生 社交会
ある伯爵令嬢視点
私は舞踏会に来ております。
社交界デビューしたばかりですが、良縁探しは早いうちから動かないといけません。今回の社交会はなんと、上位貴族の方々も出席する豪華な顔触れです。
私はしがない伯爵家出身なので、上位貴族の方と接点の作れる機会は貴重です。
招待状を手に入れてくださった従兄に感謝しかありませんわ。
主催への挨拶が始まりましたね。
あれは!?
ルーン公爵家のご令嬢レティシア様と子息エドワード様ですわ!!
ルーン公爵嫡男のエドワード様はまだ婚約者は決まってません。
令嬢達の目がギラギラしてますわ。
私もお近づきになりたいですが、さすがに恐れ多いです。
せっかく従兄が招待状を手に入れてくださったのに、年上のご令嬢達のように積極的にはなれません。
お父様、ごめんなさい。私は自分で良縁探しは難しいです。
エドワード様は主催の家のご令嬢と踊ってますね。
レティシア様は当主様と踊られるんですのね。
レティシア様は何曲か踊られ、その場を離れましたわね。
あら?近くにいらっしゃいますわね。
「ルーン令嬢、よければ一曲いかがですか?」
「申し訳ありません。お誘いいただいて光栄ですが婚約者がいますので、お受けできません」
「公爵家だと大変ですよね。もし、貴族のしがらみに疲れましたらいつでも声をおかけください」
「お気持ちだけいただきますわ。ご心配いただきありがとうございます」
優雅に礼をして、誘いを断りました。
すごいです。その後もレティシア様は様々な方々とお話されていました。妾にどうというお誘いも笑顔で流してましたわ。
『よければ一曲いかがですか?』
外国の殿方に声をかけられますが、言葉がわかりません。
どうしましょう。
『お話中に失礼します。ご挨拶をさせていただけますか?』
レティシア様が来てくださいました。
異国語で話されてますね。
『ルーン公爵家のレティシア・ルーンと申します。婚約者のリオ・マールがお世話になっております』
『噂のリオの婚約者か。会えて光栄だ。噂通りの美しさと聡明さだ。リオが嫌になったらいつでも私が迎えいれよう』
『お気持ちだけいただきますわ。大変恐縮なんですが、彼女はまだフラン王国語しか話せませんの。』
『失礼した。この国はわが国の言葉を話せる者が少ないのか。』
『申し訳ありません。彼女は武門の出ですから。ですがマール公爵家の方々はもちろん、私も弟も話せますわ。いつも貴国のすばらしいお話を聞かせていただいてます。後で弟にもご挨拶をさせてくださいませ。これからもマール公爵家共々仲良くしていただければ嬉しいですわ。』
『歓迎するよ。』
この方は隣国の侯爵家令息。
壁の花になっていた私を気遣い声をかけてくださったそうです。
一曲踊らせていただき、戻るとエドワード様がいました。
エドワード様がご挨拶をされています。
握手をして親睦を深めてますね。
ご挨拶が終わったみたいですわね。
「エドワード、社交会に慣れない令嬢のエスコートも殿方の努めですわよ。」
「姉様」
「私はここで自慢の弟の勇姿を見てますわ。」
「今日はもう踊らずにここで待っていてくださいね」
「ええ。」
「ご令嬢、一曲ご一緒させていただけますか?」
エドワード様が誘ってくださいました。
エドワード様の手に手を重ねます。
頷くしかできない私を優しくエスコートしてくださいました。
まさかエドワード様と踊れるとは思いませんでしたわ。
エドワード様は私より1歳年下です。ダンスのエスコートも完璧ですわ。
曲が終わると礼をして離れました。エドワード様と踊った後に何人か殿方からダンスに誘われご一緒させていただきました。
私、ちゃんと社交をこなせている気がします。
「エドワード、お疲れ様です。素敵でしたわ」
「姉様、もう帰りませんか?」
「疲れましたか?」
「ここには姉様を邪な目で見る方々が多くて」
「気のせいですわ。私はもう少し自慢の弟を披露したいけど、またの機会にしましょうか。今日のお役目も終わりましたしね」
「本当は僕、一人でもいいんですが」
「もう姉様のエスコートは嫌になってしまいました?」
「ありえません。姉様のエスコートができるなんて光栄です」
「エドワードはきっと将来モテモテね。もう姉離れですか・・。寂しいですわ。」
「僕は姉様が一番です」
「嬉しいけど複雑ですわ。そろそろ帰りましょか。エスコートしてくださる?」
「もちろんです。」
レティシア様とエドワード様は仲が良いんですね。
二人は帰られていきました。
私は、エドワード様と隣国の侯爵令息と踊ったことで友人達に羨望の目で見られました。
ただ残念ながらそこまで親しくなれませんので、パイプを求められても困ります。
ルーン公爵家とのパイプがほしい貴族はたくさんいますから…。
「サイラス様、招待状ありがとうございました」
「良縁は見つかった?」
「難しいですわ。ただエドワード様と踊っていただけましたの!!」
「よかったな。もしかしてルーン嬢も来てた?」
「ええ、隣国の侯爵令息に声をかけられて困ってたのを助けていただきました。」
「そう」
「レティシア様は凄かったですわ。声をかけてくる殿方を笑顔で足らい、ダンスも既婚の方々としか踊りませんの。レティシア様を口説こうとされてた方も拍子抜けされてましたわ。やっぱり公爵家のご令嬢は違いますわね。褒められても赤面せずに笑顔で全て受け流してましたもの。ただエドワード様と踊ったことでうちとルーン公爵家とのパイプを期待される方が多くて・・」
「そこはうまくお断りしないとな。ルーン公爵家なんて恐れ多いよ」
「やっぱり公爵家は恐ろしいですか?」
「公爵家なんて化物の集まりだ。俺達には荷が重い。特にルーン公爵家には関わらない方が身のためだよ」
「さすが、マール公爵家とお付き合いの深いグランド伯爵家ですね。うまく断りますわ。また社交会があればお誘いくださいね」
「ああ。そんなに焦らなくてもいいと思うけど」
「令嬢達の戦いは始まってますのよ。早くしないと素敵な方々はすぐに売れてしまいますのよ」
従兄は苦笑してました。ただ公爵家と付き合いの深い従兄の言葉には従いましょう。
まさか従兄がレティシア様とも知り合いだったなんてその時の私は知りませんでしたわ。




