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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシア2年生 帰省

セリア視点


明日から休みなので今日から帰省する生徒が多い。

教室にもほぼ人はいない。

カーチス様達もすでに帰っている。

笑顔で友人達に帰りの挨拶をして見送ったレティは席に座って途方にくれている。


「レティ、帰らないと」

「セリア、私、帰れません」


レティは今期の成績表を見て呟いた。

武術の成績が悪くて落ち込んでいる。

公爵令嬢だから成績優秀じゃないとって思い込んでるのはわかるんだけど・・。

どんなに頑張っても小柄なレティが武術で優秀な成績をおさめるのは難しいわ。

一緒に授業を受けている生徒もレティに負けるのはまずいわよ。

特に武門貴族はレティに負けるなら返上したほうがいいわ。

レティには言えないけど…。


レティのお母様のルーン公爵夫人は武門貴族の生まれだから武術が得意だけど・・。

宰相一家の長女で婚約者はマール公爵家。

レティはこなすべき社交が多い。

だからレティには武術だけに時間をさくわけにはいかない。

かけている時間が違うんだから、成績が悪くても仕方ない。

レティ、騎士を目指すんじゃないからそこまで武術の成績は重視されないわよ。


帰らなければいけないのに、動かないレティを見かねてシエルがリオ様を連れて戻って来たわ。

レティのことはリオ様に任せるがルーン公爵家の常識って大丈夫かしら…。


「シア、帰ろう」


リオ様の声も届いていない。

リオ様がレティの肩を叩くとようやく顔を上げた。


「リオ、成績表見せてください」


リオ様がレティに成績表を渡す。

レティと一緒に覗き込むと、これはレティに見せてはいけない成績表だった。

全て最優秀の成績をおさめている。


レティは成績表を閉じて返した。


「リオにはわかりませんわ。一人で帰ってくださいませ」


「送るから帰ろうよ」

「いりません。放っておいてください」


リオ様、レティの拒絶にショックを受けてるわ。


「レティ、エドワード様も待ってるから帰ろう。」

「こんな成績表を持って帰れません」


リオ様がレティの成績表を見て笑った。


「武術の成績上がってるな。頑張ったな」

「お母様は最優秀だったそうです」

「叔父上は武術で補習を受けたことがあるって。きっとこの成績を見たら叔父上は喜ぶよ」

「お父様が…。でもお母様は・・・」

「お前のお母様の成績の話は聞いたことがあるけど、シアの勝ちだよ。武術以外は全部最優秀だろ?」

「勝ち?」

「お前のお母様にも苦手はあったって。母上はシアは叔母上よりも優秀ねっていつも褒めてるよ。」

「山に籠ったら強くなれますか・・。お母様は経験があるようですが」


レティ、山籠りって。


「山籠もりする時間があるのか?」

「無理ですわ。このお休みもルーン公爵令嬢の予定が詰まっております。」

「もし山籠もりするなら相談しろよ。シア、本当に時間大丈夫なのか?」


リオ様は、レティを絶対に一人で行かせないわよね。

止めないあたりが最近のリオ様よね。

レティにうるさいって避けられてから、レティにいい聞かせるんじゃなくて、周りに手回ししてるものね。

それもどうかと思うけど。

レティは楽しみにしていたビアード様との訓練をリオ様が手を回して参加できなくしたことを知らない。


「大変です。今日はルーンの分家の皆様とお約束が。セリア、リオ、また休み明けに。失礼しますわ」


レティがシエルを連れて去っていくのを見送る。


「リオ様、追いかけなくていいんですか?」

「シアはまだ荷物を積み終えてないから、ゆっくり追いかければ平気だ」

「よかったんですか?ルーン公爵夫妻の成績の話をしても」

「口止めされてないし、ある意味有名な話だろ?」

「ルーン公爵夫人の武勇伝は多いですからね。レティ、お母様が武術以外は成績が悪かったって知ったらどうするんでしょう」

「信じないか、何か事情があると思うだろうな。叔母上の面子もあるから詳しくは言えないけど。シアの成績のことはうちの母上に話しておくよ」

「ルーン公爵夫妻はレティの前だと堅物ですものね。そのほうがマール公爵家は美味しいですね」

「まぁな。きっとうちの両親はシアの成績を見て褒めるんだろうな。父上なんてデレデレに甘やかすよ」


さすがリオ様のお父様。


「リオ様も褒められるんですか?」

「まさか。当然と言われるだけだ。成績落とすと怖いけどな」

「マール公爵家はレティに骨抜きですね」

「お前の家もシアには甘いよな。シアの持ち物にシオン伯爵お手製が時々混じっているだろ?シアは気づいてないけど」

「あれはルーン公爵の所為ですよ。ルーン公爵はレティのためといえば魔力も魔石も無償で提供してくれますもの。良質な魔力は貴重ですもの。リオ様も私にくださる?」

「まさか。俺の魔力はシアのものだよ。他をあたれ」

「レティのためになりますよ」

「必要な物は俺が手に入れて持たせるからいい。」

「なんで外交一家なのに魔道具を作れるのよ。」

「俺、器用だから。そろそろ行くよ。じゃあな」


昔はリオ様は魔道具なんて作れなかったのに気づいたら作れるようになっていた。

薬品等の解析を頼んでくることはあったけど、最近は全然。

リオ様の魔石は良質だからもらえれば助かるんだけど。

リオ様はレティのためにしか動かないわ。

帰るために馬車の待合い場所に行くとレティ達が揉めている。


「シエル、どうしてマールの馬車なんですか?」

「シア、送るから俺と帰ろうよ」

「今日はリオの馬車には乗りません」

「なんで?」

「複雑なんです。」

「レティ、私が送ろうか?」

「セリア!?」

「セリア、邪魔するなよ」


リオ様がルーン公爵に迎えの馬車はいらないって伝えてあるのよね。


「レティ、うちの馬車で送るわ」

「セリア、ありがとうございます」

「シア、嘘だろ!?俺と帰ろうよ」


レティはリオ様との実力差を気にしているから。

あの最優秀だらけの成績表を見たら一緒に帰りたくなくなるわ。


「セリアと帰ります。リオも忙しいでしょ?」

「俺、叔父上にシアを任されてるんだよ」

「リオ様、レティは私が送り届けます。安心してください」

「シア、何が嫌なの?」

「それは」


どうしてわからないのかな。


「レティはリオ様との成績の差に」

「セリア、言わないで」

「シア、本当に俺と帰らないの?」


リオ様が悲しそうな顔を作った。


「俺と一緒にいたくないか…。」


落ち込んだ様子のリオ様にレティが悩んでるわ。レティもリオ様に弱いのよね。



「リオ、違います。リオと帰ります。セリアまたね」


レティに見えないからって、リオ様が笑ってるわ。

レティがリオ様の方をむくと暗い雰囲気を出して、この男…。


「リオ、ごめんなさい。送ってください。リオ兄様とご一緒したいです。」


馬車でも、リオ様にひどいこと言ったって動揺しているレティを堪能するんでしょうね。

必死に慰めようとするレティは可愛いけど。

性格悪いわよね。

リオ様ファンの令嬢の気がしれないわ。

こんな男のどこがいいのか…。

レティがリオ様と馬車に乗り込んで、手を振るので振り返す。

レティの後ろのリオ様の満足げな笑み…。

私、リオ様に負けたとは思ってないんだけど…。

今更だけどレティも悪い男に目をつけられたわね。

来期は少し邪魔しようかな。


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