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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシア2年生 昼寝事件

リオ視点


昼休みにニコルが駆けこんできた。


「リオ様、レティシア嬢を見かけましたか!?」

「シアがどうした?」

「朝から姿が見えないんです。シエルも教室にいると思っていたみたいで」

「わかった。俺も捜してみるよ」


ニコルが去っていった。念話でフウタに命じる。


「フウタ、シアを探して」

「行ってくる」


「リオ、俺も手伝うよ」


念のため手を借りるか。


「サイラス悪い。助かる」


「レティ、見つけたよ」


フウタが戻って来たのでサイラスとともに後を追う。

サイラスはなにも言わずについてくる。


フウタが庭園の離れに入っていった。


中には、三人の男子生徒。

シアはソファで倒れている。

俺に連絡がこないってことは、意識のない状態で運ばれたか・・・。

あの生徒は…。

昔、シアとラウルに手を出そうとして叩きのめした弟の兄とその取り巻きか…。


「お前、なんで!?」


驚いている生徒に殺気を向ける。


「俺の婚約者になにしてんの?」


殺気に怯えて身動きがとれないか…。

武門出身でなければ、殺気には慣れてないよな…。


念話でフウタに命じる。


「フウタ、シアに結界張って、連れて来て」


「ルーン嬢と話をしようと」

「意識のない彼女を使って脅すつもりだったと」

「違う。危害を加える気はなかった。ただ、ルーン嬢はこうでもしないと話せないから」


シアへ来る手紙は俺が処理している。

シアへの呼び出しに俺が応じるのは有名な話だ。

気弱な婚約者の変わりに俺が相手をすると広めている。

俺が溺愛する婚約者に男が近づくのは許さないとも。

それに下位貴族の男が婚約者持ちのルーン公爵令嬢には近づけないよな。

近づこうとすれば、シアのお友達という名の取り巻きが止めにはいる。

俺達を見守る会のメンバーも妨害するだろう。

時々俺が見守る会にお礼として差し入れをいれていることをシアは知らない。


こいつらがルーン公爵令嬢と話したいことなんて一つだけだ。

ただ、そのための行動が俺達の怒りを買うとは思わなかったのか・・。

シアに手を出すのは、俺とエドワードの逆鱗ってわかんないのかな。

まだ俺に直談判にくるほうが希望があったのに。

そしたら、これ以上手を回すことはなかったのに。



「レティシアに俺に取り潰されかけた家の支援を頼みたかったんだろう?」


シアに無礼を働いたから、こいつの家とのつながりをマール公爵家もルーン公爵家も切った。

上位貴族へ礼をつくせない家とのつながりは不要だから。

平等とはいえ学園という社交の場での失態は致命的になることもある。

どこであろうとも、下位貴族の上位貴族の無礼は許されない。

特にうちの派閥の筆頭派閥ルーン公爵令嬢への無礼は。

シアがその気になれば、幾らでもさばけるんだけどな。

学園では無礼講と無礼を許すシアを見て勘違いする奴らが多くて頭が痛くなる。

俺のシアは優しく甘いからなぁ。その分俺が締めるからいいか。

シアは俺の隣で無邪気に笑っていればいい。


フウタがシアを保護したな。シアを抱きとめる。

良かった。怪我はないな。寝てるだけか。


「いつの間に」


シアが俺の腕の中に移動しているのに驚いても、もう遅い。


「俺の婚約者に手をだそうとしたってことは覚悟があるんだよな」


「話をしようとしただけだ。」


腕の中のシアが目をさました。


「ここは?」


あたりを見回すとシアの顔が真っ青になる。


「監禁、」

「落ち着いて、シア、俺がわかる?」

「やっぱり駄目」


シアが目を閉じて耳を塞いだ。

シアの背中をゆっくり叩く。


「シア、大丈夫だから、シア、」


しばらくするとシアが目をあけた。

泣きそうな顔に笑いかける。


「リオ兄さま…」


シアが耳から手を離して俺の首に腕を回した。

「レティシア、大丈夫だよ。俺はお前の味方だ」



サイラスが殺気を飛ばして、男子生徒を黙らせているな。

連れてきてよかった。

サイラスの察しの良さは頼りになる。


「監禁なんてさせない。大丈夫だ。守るから」


俺の顔を見て、シアが頷いた。

落ち着いたかな。


「リオ、おろしてください」


抱き上げていたシアを降ろすと、目の前の男子生徒を見てきょとんとしている。

誰だかわからないみたいだな。

そんな無防備な顔を見せないでほしい。


「こいつの家がマールとルーンに切られたからシアに取りなしてほしいんだと」


シアが深呼吸をして、社交用の顔を作った。

シアの強い瞳に見つめられる。この切り替えの早さがすごいよな。


「マール公爵家としては?」

「うちには不要な家だ」


シアが男子生徒に向き直った。


「ルーン公爵が決めたなら、従うまでです。申しわけありませんが私が取りなすことはありません」


「弟が」

「謝罪は不要だ。サイラス、シアを教室まで送ってくれ」

「わかったよ。ルーン嬢行こう」

「シア、帰りに迎えにいくから教室で待ってて。ニコル達が心配して探し回っていたから早く安心させてやれ」

「え?」

「ルーン嬢、行こう。リオ、あとでな」


状況のわからないシアをサイラスが誘導した。


こいつらの話を聞くと、木の下で眠っているシアを見つけて、眠りの魔法を重ね掛けして離れに移動したらしい。

半日寝てるって、どこまで重ねがけした? 

おれの魔石が反応しない程度の弱い魔法を連発か…。

魔法が効きすぎて起きなかったか。

無理矢理起こそうとしても、起きなかったんだろうな。

自分達がどれだけ危険なことしたかわかってないんだろうな…。

シアもいないし冷笑を我慢する必要もないよな。



邪魔が入らない離れでシアを説得しようとしたか。

お前らにとっては説得でも、見方によっては脅しだよな。

目覚めたら知らない男に囲まれてたら怖いよな。

勘違いしたシアが泣きそうだったし…。



弟のことを謝ればシアに取りなしてもらえると思っていたとは。

甘いよな。

誰にでも優しいルーン令嬢なら取り込めるか。

シアは社交が得意だし、その気になれば取りなすことは簡単だ。

本気になれば俺より社交はうまいよ。

うちの両親も俺とシアを組ませれば取れない契約はないって笑ってるし・・。

ただシアをその気にさせるのは、ルーン公爵の命令だけだ。

ルーン公爵令嬢のシアはルーン公爵の判断に異を唱えたりしない。

当主の命令は絶対だから。

そこは下位貴族だからわからなかったんだろうか…。



俺としてはシアに魔法をかけて、触れただけでも重罪だ。


シアには危害を加える気はなかったみたいだけど。

この状況を知ったらシアは見逃すよな。

危害も加えられてませんし、問題ありません。って絶対に言うよな…。

シアには話すつもりはないからいいか。

たぶんシアは教室に戻ったらセリア達の説教で頭がいっぱいでこいつらのことなんて考える余裕もないはずだ。



こいつらの家を取り潰すのは簡単。もともと風前の灯だから俺が手を回すまでもないか。

もし復興できそうなら、手を回すか…。


レティシアを監禁しようとしたことは広めるか。

ルーン公爵令嬢に手を出した家とは関係をきる家も多いだろう。

支援しようとする家は、ほとんどないだろうな。

レティシアのファン達に冷たくされながら残りの学園生活を送ってもらうほうがいいか。

殿下に報告して生徒会で処理しよう。

楽しい学園生活は送れないから覚悟しろ。

エドワードがどうするかは知らない。

俺が報告しなくてもシエルが報告するだろう。


彼らはサイラスが呼んだ先生に引き渡した。

レティシアは先生にも殿下にも気に入られているから重い処罰がおりるだろうな。



放課後、シアの教室に行くとシアの目が虚ろだった。


「シア?」


また泣きそうな顔で見られる。

セリア達にきつく説教されたか。

クラムでさえも、静かに見守っている。

俺にも怒られると思っているんだよな。


「リオ様、甘やかさないでください。」

「でもセリア達が言い聞かせたんだろ?」

「朝の散歩に出て、日の光が気持ちがよくてそのまま外で眠ったみたいですよ。一人で」


あいつらの話を聞いて俺も呆れた。

外で居眠りとは。ターナー伯爵家での生活のせいだよな・・。


「リオ、ごめんなさい。気持ちがよくてうっかり。ルーン公爵令嬢としてありえませんわ。お母様に怒られます」


そっちじゃないんだけど。

品位もだけど、危ないことを認識してほしい。

ただ潤んだ瞳で見られると強く出れない。

シアの頭に手をのせる。


「外で一人で寝るのはやめような。どうしてもなら俺が付き合うから」

「リオ様!?」

「シアも反省してるし、もういいだろ?泣きそうだし」

「レティ、わかってませんよ」

「俺が守るからいいよ。シア、もう外で一人で寝たりしないよな?朝の散歩はシエルか俺と行こう」

「え?」


首を傾げるシアは可愛いけど、これだけは言わないと。


「一人での散歩は駄目だ。今回攫われかけただろう」

「攫われた?」

「寝てる間につれ攫われたんだよ」


シアの顔が真っ青になった。


「シエルの首が!?」

「その前に自分の心配をしようか」

「帰ります。お父様にお話しないと、」


立ち上がったシアの腕をつかんで抱き寄せる。

飛び出さないように、しっかりと抱きしめる。


「落ち着いて。大丈夫だから。俺がなんとかしてやるから」

「リオ…」

「泣かないで。」

「シエルの首が、シエル」

「シア、大丈夫だから。落ち着いて。首はとばないから。」

「リオ…。」


シアの目から涙が溢れた。

シアはシエルが好きだよな。背中を叩いて落ち着かせる。


「叔父上には俺からうまく伝えるよ。一人で散歩はやめような」


シアが頷いたからもういいよな。

セリアの視線は気にしない。

たぶんシアは、わかってない。

シエルにシアの一人での散歩禁止を命じればいいだろう。

緊急時だけはシアより俺の命令を優先させるようにルーン公爵がシエルに命じている。


それに、今はシアの頭はシエルのことで一杯でなにを言っても届かないだろう。

セリア達が叱ってくれたならもういいよな。

弱ったシアをこれ以上責めることはできない。

俺の腕で静かに泣くシアをなだめながら、攫われて怖がっていたと噂を広めることを決める。

気弱なルーン公爵令嬢が泣いても醜聞にならないように。

泣き疲れて寝ないといいんだけど。

俺の婚約者は危なっかしくて目が離せない。

ずっと俺が傍にいるから、危機感皆無でも問題ないか…。

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