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レティシア6歳 マール公爵家の結婚式

マール公爵家嫡男カナト・マールのお話です。

マール公爵家次男のレイヤ・マールと本編に登場してない方々が登場します。

カナト視点


今日は俺の結婚式。

マール公爵家嫡男の俺の結婚式の参列者は多い。

神殿での誓の儀式も終え、残すはマール公爵邸のお披露目のパーティーだけ。

俺は妻になったエレンと並び、笑顔で祝いの言葉を受け取り、親睦を深める役目である。

招待客の挨拶を受けながら、会場の一部がざわいているので目を向けると見慣れた銀髪を見つけ状況を理解した。

ルーン公爵家にも招待状を送っていたのでルーン公爵夫妻が来られると思っていたけど、予想は外れた。

会場の一部の視線を集めているのは母上と同じ美しい銀髪と王国でも屈指の美しさと称えられる青い瞳を持つ小さなルーン公爵令嬢。

叔母上ではなく社交デビューしていないレティシアが参加するとは思わなかった。

レティシアを連れたルーン公爵、俺の叔父上がこちらに向かってくるのに気付いたら人々が道を空ける。


「結婚おめでとう」

「ありがとうございます。叔父上」

「カナト様、おめでとうございます」


幼いのに貴婦人がするような社交用の笑顔で祝いの言葉を口にするレティに優しい顔を作って微笑み返す。


「レティ、いつも通りでいいよ」


俺の瞳をじっと見つめた後、小さく頷いたレティは人形のような感情の欠片もない固い笑みを消して、可愛らしくニコッと笑った。


「カナ兄様おめでとうございます。未来のマール公爵夫人にお花を贈らせていただいてもよろしいですか?」

「もちろん」

「ご結婚おめでとうございます。カナ兄様の従妹のレティシア・ルーンです。リオ兄様にエレン様のお話を伺って作りました」


レティシアの差し出す花束を妻のエレンが受け取る。


「ルーン様、自ら作ってくださいましたの?」

「レティシアとお呼びください。エレン様。はい。綺麗なエレン様の前では見劣りしてしまいますね」

「そんなことありません。嬉しいわ」


母上もレティに花束をもらったって嬉しそうにしていた。

エレンは花に興味はないのに嬉しそうに受け取っている。

公爵令嬢自ら花束を作ってくれるなんて思わないよな。そしてレティの社交用でない可愛らしい姿に心を揺さぶられているだろう。


「レティ、よくできてるよ。エレン様じゃなくてお姉様でいいよ」


レティの可愛らしい笑顔が消え、目を丸くしている。不思議そうにしているわかりやすいレティの表情にもうすぐ6歳になることを思い出した。そして隣で息を飲む音が聞こえて視線を向けるとエレンの目が輝いている。

エレンにじっとりと見つめられたレティが首を傾げた。


「エレン姉様?」

「まぁ!?」


レティの言葉にエレンの頬が緩んでいる。


「うちのレティは可愛いだろ?」

「ええ。レティシア様、これからは私とも仲良くしてくださいね」


エレンからの好意的な態度にレティが嬉しそうに笑った。

ルーン公爵夫妻の美貌を受け継いだが内面は全く似ていない素直な我が従妹は可愛い。


「嬉しいです。エレン姉様、レティシアかレティとお呼びくださいませ」

「レティシア、それくらいにしなさい」

「お父様ごめんなさい。失礼します」


叔父上の言葉にレティが顔を強ばらせた。

そして叔父上に促されるまま礼をして二人で離れていった。

二人の背中を見つめるエレンの頬はまだ緩んでいる。


「カナト様と結婚して良かったです」

「俺と結婚すれば外交し放題に釣られたんだろ?」

「他にも色々ありますが可愛い妹分は予想外でしたわ」

「俺の従妹は可愛いだろ?」

「ええ。貴方の血縁とは思えませんわ」

「うちの弟達もお前の兄弟も可愛くはないもんな」

「ええ。優秀ですけど。もっと早く紹介して欲しかったですわ」

「可愛いレティがお前の影響を受けたら大変だろ?」

「失礼ですね」


他の客が近づいてきたので、エレンとの会話をやめ社交用の笑顔で応対する。

あとどれくらい続くんだろうな…。



俺達と同じくらいに会場の視線を集めているのはルーン公爵。

ルーン公爵とお近づきになりたい貴族がルーン公爵を囲んでいる。

レティはいない。探すと夫人達と話していた。

ん?

よくみるとチラチラとレティを見てる奴らがいる。

ルーン公爵令嬢と親睦を深めたい奴は多いよな。

社交界デビュー前の令嬢に会える機会は少ない。しかも社交界デビューをしてもお近づきになれる保証はない。


弟のレイヤはマールにとって大事なお客様と話をしているのか。

もう一人の弟のリオは令嬢に囲まれている。

側にいる執事にリオを呼びにいかせるか。



「兄上、お呼びですか?」

「父上と叔父上には話しておくからレティを保護してやれ」

「レティシア来てるんですか!?」

「気づかなかったのか」


リオはレティに気づいてなかったのか。

まぁ気づいてたらレティを放っておいて令嬢達に囲まれてるわけないか。

きっとこのパーティーも面倒で適当に社交をこなしていたんだろうな。


「今日はルーン公爵夫妻がくるとばかり。祝いの席を退席させていただいても構いませんか?」

「ああ。エレン、リオがいなくてもいいだろ?」

「ええ。幼い二人が退席しても咎めるものなどいませんわ。貴族に揉まれるのは社交界デビューしてからで構いませんもの」

「義姉上ありがとうございます。父上達には兄上から説明をお願いします。失礼します」


勝手に席を外せば父上達に、怒られるからな。

リオの役目も終わってるし退席して構わないだろう。

さすがリオ。レティに目をつけた男共が声をかける前に保護したな。戸惑うレティを説得して、二人で退席したな。


エレンが二人の様子を興味深めに見ている。

「レティシアは将来の義妹かしら?」

「さあな」

「リオ様の驚いた顔なんて初めて拝見しましたわ。レティシアと一緒にいれば年相応なのね。」


リオは落ち着いてるから昔から年齢より大人びて見られる。

エレンは俺の年の離れた弟を可愛げがないと残念がっていた。



「リオはレティの世話をやくのが趣味だからな。友達とレティならレティを優先させるし」

「無自覚ですのね。貴方の弟にしては可愛げがありますのね。」

「やっぱりそうみえる?」

「ええ。うまくいくといいですね。」

「側で見守りたい?」

「カナト様一人だと不安ですわ。着いて行きますので安心してください。その代わり帰国したらレティに会わせてくださいね」

「レティは父上に異国語で土産話をしてもらうのがお気に入りだ。父上の膝で嬉しそうに言葉を教わりながら話を聞いてるよ」

「まぁ!?あの年で異国語がわかりますの?」

「レイヤの趣味の異国の本を借りるのも楽しいらしい」

「レティは将来有望ですわ。私が鍛えたいですわ!!」

「ルーン公爵家で厳しく躾られてるから、うちでは甘えさせてやってくれ。」

「異国の物語でも読んであげたら喜ぶかしら。」

「俺達はしばらくしたら当分は外国暮らしだけどな。」

「帰国する楽しみが増えましたね。私とレティがいればマール公爵家はもっと繁栄しますわ。」

「頼もしいけどレティはルーン公爵令嬢だから」

「リオ様を洗脳してレティをお嫁にもらってください。カナト様得意でしょ?」

「さすがに、可愛い弟を洗脳したくはない。」

「家の利のためですよ」

「お前と俺がいるなら将来安泰だろ?」


まさかこの数年後にリオとレティシアが本当に婚約するとは思っていなかった。

二人の婚約話を聞いてエレンが一番喜んだ。父上達はエレンの様子に、笑顔で固まっていた。エレンは父上達の前では猫を被って夫をたてる優秀な妻でいるからな。

レティシアは魔力がなかったけど、世継も魔力の継承も私が産むので問題ないと自信満々に笑う姿に笑えたけどな。

まさかその後、俺はレティシアが嫌がらせを受けていたことを知り報復しようとするエレンを止めるのに苦労するとは思わなかった。

エレンは優秀な妻だけど、レティシアが絡むとおかしくなる。

レティシアとはそんなに面識ないのに、なんでこんなにほだされてるんだろう。


リオに余計な知識を与える妻にため息が我慢できない。

学園の掌握方法や令嬢達の嫌がらせ対策、有効な報復方法、レティの囲いこみ、リオも真面目に聞いて尊敬の視線をエレンに向けている。

エレンとリオは似たもの同士かもしれない。

この二人を一緒にしたら危険だ。

エレンはリオとレティに近づけないようにしよう。

二人の教育に良くない気がする。




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