レティシア2年生 武術大会
第八十八話のリオ視点です。
リオ視点
生徒会用の魔法鏡で団体戦の不正がないか監視しているとシアから規則違反の連絡を受けた。
近くの役員に抜けることを伝え、会場にいた予選を終えたサイラスを連れ森の入り口に向かう。
あのシアがわざわざ連絡してくるなんて大事かもしれないから。
シア達は宝を集め終わってしばらくたつのにまだ森にいるんだな。もう競技場に向かっていると思っていたよ。
シアは相変わらず体力がないけど平気だろうか。
森の入り口付近に気配が5つ。
拘束されているニコルにクラム。傷だらけで剣を突きつけられてる確か、シアの後輩が二人。
確かに、これはやりすぎだな。戦闘不能の相手への武力行使はアウトだ。
サイラスに目配せする。
傷だらけのシアの後輩を風の結界で囲む。
サイラスが生徒の剣を落とし拘束する。
サイラスに任せ、ニコル達の拘束を魔法で解く。シアが見当たらない。
嫌な予感がする。
ニコルの顔にいつもの余裕がない。
「なにがあった?」
「リオ様、急いで、レティシア嬢が危ない」
「リオ、ここは俺が引き受けるから行け」
「レティシア、あっちに連れて、」
クラムの指さす方向に進む。
あのニコルの慌てようはおかしい。
事情を聞いてる暇はないな。シアを探さないと。
「フウタ、シアの場所わかるか?」
「うん。わかる」
「案内頼む。急いでくれ」
風魔法で加速する。
あれか。周りの風が騒いでる。
「主、レティ危ない」
「フウタ、シアに結界を。」
詠唱したら間に合わない。魔力を放ち、シアに向かう炎を打ち消す。
フウタと修行して良かった。こんな使い方はフウタがいなければ知らなかった。
威力が強すぎて爆発したのは仕方ない。
シアへの直撃は免れた。
シアはフウタの結界の中。無事だ。よかった。
シアを背に庇うと目をあけたシアが固まっている。
第一声が後輩の心配って。お前。自分の心配して。頼むから。
自分の中でのごちゃごちゃした気持ちを抑えてシアに攻撃した生徒に話しかける。
本当は相手を潰したいけどそれも後だ。
抵抗する相手の魔法も相殺し、自害も阻止し風魔法で拘束する。
潰すのは殿下の裁きの後だ。
振り向くとシアが座り込んでいる。
シアを抱きしめる。
生きてる。間に合って良かった。魔法がシアに放たれた時は心臓とまるかと思った。
きょとんとした顔をして俺の背に手を回すシアに力が抜ける。
後輩の心配より自分の命を優先して。頼むから。規則違反じゃなくて身の危険を伝えて。すぐ駆けつけるから。
シアを守りたくて魔石を渡してるんだよ。生徒会の要請用じゃなくて。
お前、死にかけたんだよ。わかってんの?色んな意味で泣けてきた。シアの肩に頭を預ける。
説教しなきゃいけないのに気力が起きない。言いたいことはたくさんあるのに。頭をあげてシアの能天気な顔を見たら余計に言葉がでない。説教はニコル達に任せよう。シアを促し、会場に戻る。拘束した生徒は他の生徒会役員に押し付ける。
ニコルとクラムに説教されて顔が真っ青なシアに助けを求められるが、助けないという意味をこめて笑みを浮かべるとさらに顔が青くなった。この後はセリアからも説教があるだろうな。シア、本当に反省して。頼むから。こんなことが続くならいつか俺、監禁するかもしれないから。




