レティシア2年生 アリスのお茶会事情
71話の少し前のあたりの時間軸のお話です。
アリス視点
私は色々ありましたがマートン侯爵家の敵対派閥のルーン公爵令嬢レティシア様と面識を得ました。
噂で聞いていた悪評とは違い、グランド様との仲を疑い失礼な態度をとった私を許してくださる心の広い方でした。
思い返すと、侯爵家に抗議されてもおかしくない淑女としてあるまじき行動をルーン公爵令嬢であるレティシア様にしてしまいました。私が逆の立場なら許せるか自信がありません。
お姉様達の言うように、ルーン公爵家の力で我儘放題で学園生活を乱し、殿方たちを誑かすご令嬢ではなかったので、これからは親睦を深めていきたいと思います。
レティシア様とのお茶会に誰を同行させようか迷ってます。
まずは私のお友達にレティシア様のことを聞いてみましょう。
「ねぇ、ルーン様についてどう思います?」
「アリス様もアリッサ様のようにお望みですか?私達にお任せください!!」
私の同級生のお友達はマートン侯爵家よりも下位のため、取り巻きに近いです。マートン侯爵家の後ろ盾を目当てで側にいる方々です。貴族のお友達なんてそんなものです。だからこそ、しっかり制御しないといけません。
「違います。ルーン様への無礼はやめてください。」
どうして残念そうな顔をされるのですか…。
「もし私がルーン様と親睦を深めようとしたらどうします?」
「アリッサ様が許されませんよ。でも、アリス様がルーン様と親睦を深めたいなら私もお近づきになりたいですわ。」
お姉様と私なら私につくんですね。
皆様の目がギラギラしている気がします…。
先程、レティシア様への嫌がらせに参加表明してませんでした?保身のために私の意見に同調しただけですか?
「理由をお聞きしても?」
「ルーン様と言えば、幼い頃に殿下に見初められ、今はマール様の婚約者ですよ。しかもビアード様とも親睦がある。令嬢に人気な殿方との親睦を深めるコツを聞きたいですわ」
「私はあのマール様をどうしてつなぎとめてるのをか知りたいです」
「アリス様には申し訳ないですが、ルーン様とお近づきになったほうが良縁に恵まれそうですもの。エドワード様も容姿端麗で紳士で素敵です。」
「私はカーチス様を紹介していただきたいですわ。」
「ルーン様と親しくなれば、マール様のご友人も紹介していただけるかもしれません。マール公爵家様は他国との交友関係が広いですし、良縁の可能性が広がりますわ!」
「うちの派閥よりも容姿端麗で素敵な方々が多いですものね。」
確かに、私はそんなに殿方達にパイプがあるわけではありません。
「良縁のためにお近づきになりたいんですか?」
「もちろんです。学園は大事な出会いの場ですもの。」
「それに、ルーン様の前だとあのマール様が微笑まれるそうです。目の保養になりますわ。是非近くで拝見したいですわ」
私のお友達はレティシア様に近づけてはいけない気がします。
彼女達を紹介したら、レティシア様が困られる気がしますわ。殿方の紹介だけで満足すればいいのですが、きっと協力まで求めますわ。私のお友達は積極的というか図々しい方が多いので…。うちと同派閥で親交の深いパドマ公爵家が勢力を落としているので、尚更必死です…。
良縁探しは私達の大事な務めですがレティシア様を巻き込んではいけません。
グランド様のことを相談している私が言うのもおかしいですが…。
ハンナ様に相談しましょう。
私がレティシア様を困らせれば次こそマール様が動かれそうです。あの方はレティシア様への無礼は許しません。公爵家らしい方ですわ。
マール様は初めて拝見しましたがお姉様があこがれるのはわかります。でもお姉様の言うように優しい方ではないように思えます。
こないだのマール様は怖かったです。お姉様のお友達のモナ様とスワン伯爵家の婚約破棄もマール様が関わってますもの。
もともとこの婚約はうちが仲介したもの。お二人の婚約破棄はお姉様はレティシア様がルーン公爵家の圧力をかけたと思いこんでいますが実際は違います。
マール様がモナ様の婚約者にレティシア様が攻撃されたことが耳に入るように手を回されたそうです。モナ様は婚約者には知られたくなかったようですが弟君のニコル様はレティシア様のお友達。マール様が手を回さなくても耳に入りましたわ。この件でスワン伯爵家は中立貴族でしたが、うちの派閥よりもルーン公爵家の派閥入を決めたようですわ。今はルーン公爵家の派閥の勢いが凄いですから。
レティシア様は外国語に優れており、外交官のマール公爵家の婚約者のため他国との交流会にはよく出席され、その手腕は陛下や正妃様の覚えもめでたいです。
お姉様は魔力がないのに公爵令嬢として評価の高いレティシア様の醜聞を作ろうと必死です。レティシア様の評価は下がってもお姉様の評価があがるわけではありませんのに、浅はかですわ。
お父様はお姉様がマール様に見初められることを期待しておりましたが無謀でしたね…。
マール公爵家をうちの派閥に取り入れたかったんでしょうが、お姉様の社交界デビューの際にマール様にダンスを誘われなかった時点で諦めたそうです。
マートン侯爵家とマール公爵家の縁談はマール様から願い出ない限りはかないませんから。派閥も違い、うちはマール公爵家より序列が低いので…。
社交界デビューの令嬢をダンスに積極的に誘うのは殿方の礼儀です。お姉様に挨拶したマール様は婚約者以外と踊らないことと、レティシア様に無礼をはたらいたご令嬢と関わりたくないと遠回しに伝えられたそうですね。お父様はお姉様には伝わっていなかったと、嘆いていましたわ。
お姉様、いつからレティシア様に嫌がらせしていたんですか!?
私は自分の信頼できるお友達が思いあたらなかったので、ハンナ様に相談するために、2年1組に行きました。
放課後なのでお姉様もレティシア様もいらっしゃいません。お姉様がいないのは運がいいですわ。
「ハンナ様!!」
「アリス様?」
「ご相談があるんですがお時間よろしいでしょうか?」
「構いませんわ。私でお役に立てれば」
ハンナ様と一緒にサロンに向かいます。
「ハンナ様、誰かお友達をというお話ですが難しいです。私のお友達、レティシア様にご迷惑をかけそうで。でも私はレティシア様とお話したいんです」
私が必死で話しているとハンナ様は穏やかに微笑まれました。
「アリス様もレティシア様がお好きなんですね」
「ええ。レティシア様の側だと見える世界が違うんです。レティシア様は私のグランド様への気持ちを肯定してくれました。皆に否定されたのに。侯爵令嬢が伯爵家に嫁ぎたいなんて、冷静に考えろって言わなかったんです。あのルーン公爵令嬢なのに…。」
「レティシア様ですからね。私もレティシア様に救われましたから。わかりました。レティシア様にお話してみましょう。ただもしかしたらマール様からお話があるかもしれないわ。」
「お話ですか?」
「マール様はレティシア様を大事にされています。私は生家に問題があったから、レティシア様に害をなすことがあれば覚悟しろと言われましたわ」
ハンナ様、笑うところじゃありませんわ。
「私はレティシア様に近づくなと言われると思ってましたので、安心しましたけど。」
「わかりました。心しておきます。」
ハンナ様の説得により私とレティシア様、ハンナ様の三人でのお茶会が実現されました。
私のお友達の目を欺くのは簡単ですわ。
お姉様、私は自分の想いに忠実に生きようと思います。
もうお姉様に好かれる妹はやめますわ。
これからはグランド様のことを遠慮なくお話できるのは嬉しいです。
私もいつかレティシア様とマール様のようになりたいですわ。




