強力の代償
宗助の“爆嵐”での爆発で起きた煙が晴れると、周りは大惨事だった。爆発で地面は剔れ、村人達は爆風で吹き飛んだり、倒れた者も居た。
ラパン「皆さん!大丈夫ですか!」
コル「....え?」
ラパンは宗助の異常な魔力を察知し、コル達の前に出て“魔盾”を広げ、コル達を守っていた。
コル「僕達はともかく、兄さんは!?兄さんは!?」
コルは自分達よりも、さっきの爆撃らしき物を直接受けたラックが心配だった。
ラパン「そ、それは....」
ラパン達が目線を下に向けると、そこには体中ボロボロで、至る所から血を流したまま横たわったラックの姿が居た。
コル「に...兄さん...?」
コルの目には衝撃しか映ってなかった。さっきまで笑っていた兄が、今では虫の息で倒れており、顔からは笑顔ではなく、血が出ていた。
コル「兄さん!!兄さん!しっかりして!兄さん!」
コルはラックの近くに駆け寄り、声を掛けたが、ラックは目を覚まさない。コルは段々不安になり、今にも泣き出しそうになっていた。
宗助「....ん?はっ!まずい!つい本気でやっちまった!」
宗助が気が付くと、周りは大惨事だった。村人達は宗助を恐れてしまい、近づけなかった。
村人1「な、何だ今のは!?」
村人2「分からないが、あの旅人が魔法でやりやがった...!」
村人3「だからってこの威力は...!」
村人4「これはとんでもない奴が来やがった...」
アラン「すいません!どいて下さい!」
村人達が騒いでいると、アランが村人達を掻き分けてコル達に駆け寄った。
コル「貴女は、確か宗助さんの...」
アラン「話は後です!今は回復を...!」
アランは重傷を負ったラックを治療しようと回復魔法をかけ始めた。
コル「あ、ありがとうございます...」
コルは回復魔法が使える人が居てくれたことで、少し安心した。
宗助(うわ~まずいなぁ。ただ気絶させるつもりだったのに、こんなことになるとは...俺の魔力なら彼奴を完治出来るかも。アランに力を分けて、回復させるか。)
宗助は申し訳ないと思い、ラックを治そうと近づこうとしたが、コルが血走った目で睨んで叫んだ。
コル「来ないで下さい!!貴方なんかに助けられたくないです!!」
宗助「!?」
宗助は突然の言葉に驚いてしまった。しかし無理もない。いくら村の掟とは言え、自分の兄弟を傷つけられ、更にその傷つけた本人がまるで当然かのように助けようとするあからさまな偽善的な行為に、コルは許せなかった。
アラン「宗助さん!貴方の魔力は確かにとても強いです!でもそれが駄目なんです!力任せに魔法をぶつけるのは駄目だってあれ程言ったのに...!」
アランも宗助の自覚のない魔力が許せず、宗助に怒った。
アラン「魔法は使い方を間違えると、命をも奪います!その事を肝に命じ、もう二度!こんな事を起こさないと誓って下さい!」
宗助はアランの言ったことを聞き、自分がしでかしてしまった事を、ようやく理解した。自分が今まで魔法任せにしたことで、とうと周りの人を恐がらせて、一人の人間を傷つけてしまったと...
宗助「....わ、分かった。本当にごめん、アラン、コル、ラック....そして村の皆さん!僕のせいでこんなことになった事は深くお詫びします!ですので、僕が責任を持って....!」
コル「そんなの要らないです....」
宗助「....え?」
宗助が村人達に謝ろうとするとコルが小声でそう言ったが、その内声は大きくなっていた。
コル「僕は...もう貴方の顔なんか見たくないです....!貴方のせいで兄さんはこんな目に...!貴方の事は決して許しません..!でも、本当に少しでも罪悪感があるというのならば、即刻この村を出て行って下さい!」
コルはラックの手を強く握り、そう言い放った。その言葉は、怒りにも悲しみにも似た声だった。
パリス「コル...」
アラン「コルさん....」
村人達「.....」
さっきまでの出来事がまるで無かったかのように村は沈黙となった。すると、カナンが宗助の肩を叩き言った。
カナン「行こう宗助、ここにはもう居られねぇよ。村の奴らもその方が良いってよ。」
ラパン「宗助さん、謝罪する気持ちは分かりますが、これ以上はもう...。」
カナン達が宗助に村を出ようと話すと、宗助も頷き、村の入り口から出ようとした。
パレス「アランちゃんだったけ?後はあたしらがやるから、アランちゃんも行きな。皆に置いてかれちゃうよ。」
アラン「あ、すみません...」
アランは治療をパレスに代わり、宗助達の後を追おうとした。
ラック「までぇ!!」
村人達•宗助達「!!」
突然ラックが叫び、起き上がろうとした。どうやら回復魔法のお陰で意識を取り戻したらしい。
コル「兄さん!無茶しないで!」
コルが寝かせようとしたが、ラックはコルの手を掴み、今にも消えそうな声で言った。
ラック「ハァ....ハァ....お、お前ぇ...!今回は負けちまったが...ゴホッ!ゴホッ!ハァ...必ず...お前を...ぶっ飛ばして...やる...!それ位強くなって...見せるからなぁ...!次に勝つのは....」
ラックは親指を自分に指し、最後は叫んで言った。
ラック「俺だがらなぁ!!」
宗助「...!」
ラック「ゴハッ!」
ドサッ!
コル「兄さん!!」
パレス「ラック!!」
ラックが血を吐き、倒れ、コル達の声が小さくなる中、視界の最後に映ったのは、宗助達の驚いた顔だった。