兄弟の怒り
突然、怒鳴るような声がして振り向くと、赤髪の少年二人が居た。同じ顔なので双子だと思うが、何故か一人は怒っていた。
ラック「おいコラ!!さっきの火柱、てめぇらの仕業か!!森に燃え移ったらどうするんだ!!」
コル「に、兄さん落ち着いて...」
どうやらラックは、宗助達がさっきやった炎魔法に対して怒ってるらしく、コルはラックが喧嘩しないように止めようとした。
カナン「何だこいつら?」
ラパン「あ!この人達ですよ!猪に襲われた二人は!」
ラパン達はラック達が無事だったことに少し安堵し、宗助は何とか宥めようとした。
宗助「待て待て、確かにあの火柱をやったのは僕だ。だが森に燃え移つらないように細部まで気をつけたつもりだよ。それに、あのままだったら君達、今頃やられて....」
ラック「何で邪魔しやがったんだ!」
宗助「え?」
ラックの発言に宗助は困惑してしまった。助けた人に何故か逆に怒られたから当然だ。
アラン「あの、一体それはどういう...?」
コル「兄さん、説明も無しに怒ったら駄目だよ。皆さん、ここから先は僕が説明します。」
コルの説明によると、この世界では古くから男女は15才となると成人として扱われる。しかし、この村の場合、そうする為には大人になるための成果を約一日で出さなくてはいけなく、男は獣の討伐、又は捕獲であり、女は家事全般を全て一人でやることで、晴れて独り立ちすることが出来る。ラック達の場合は双子の為、二人で狩ることを特別に許された。
アラン「つまり今回の狩りも、二人が成人するために必要な事だったんですね。そうとは知らずに...」
アランは申し訳なく言った。しかしコルはともかく、ラックはまだ許さなかった。昨日までこの日の為に、あらゆる特訓や作戦などを積み上げ、狩りを成功させ、二人で大人の仲間入りになるはずなのに、見ず知らずの者達に邪魔をされ、全て水の泡にされて、許すはずがなかった。
ラック「今更謝ったって許すか!俺達の狩りを邪魔しやがって!」
コル「だから兄さんやめなよ...!」
カナン「おい!助けてもらってその言い方はねぇだろ!」
アラン「ちょ!ちょっとカナンさん!」
ラック「あぁ!?何だてめぇ!お前には言ってねぇだろ!」
ガシッ!
ラックがカナンの胸ぐらを掴もうとすると、宗助がラックの腕を掴んだ。
宗助「おいおい、そう怒るなよ。悪いのは僕なんだからカナンを責めるな。」
宗助がラックの腕をキツく絞めると、ラックは痛がって腕を振り払った。
ラック「けッ!だったらお前!俺と勝負しろ!」
宗助達「...は!?」
宗助達は突然の言葉に驚愕した。実はこの村にはもう一つ掟があり、それはもし誰かが村の子の狩りや家事を邪魔した場合、その者は村から追い出されるか、一騎打ちでの勝負をし、負けた者が、この村を出ると言う掟がある。
ラパン「いくら掟だからってそんな....」
コル「で、でも兄さん、この人達はただ知らなかったんだから、今回は村から出て行くと言う事で許そうよ...」
ラック「いいやコル!知らなかっただけじゃ済まねぇんだよ!だいたいこんな山奥で、あんな馬鹿でかい炎を出すなんて...!」
宗助「いや、だからあれは...」
宗助は何とか説得しようとしたが、もはやラックの耳には届かなかった。
ラック「さぁ!さっさと山降りて村に来い!それとも怖くて無理なのか!?」
ラックは怒りながら、宗助達を村に来させようとしていた。そこで狩りのケリを付けるために...。
コル「だから兄さん...!」
宗助「ハァ...分かった。」
コル・アラン達「え?」
宗助「村の掟ならしょうが無い。それに、聞く耳を持たない奴には、少しお灸を据えないとな。いいだろう、行こう。」
宗助はそう言いながら、互いに睨み、山を降りた。必死に止めようとするコルやアラン達を気にも止めずに...。