討伐の横領
山道....
僕たちは村に現れる獣を討伐すべく、山奥に向かった。森の中は小鳥のさえずりや風の音しか聞こえず、少し暗く、妙に気味が悪かった。
カナン「なぁ宗助~、一体何時まで歩くんだよ。獣なんて全然出てこないじゃないか。」
カナンが不機嫌そうに言った。確かに、かれこれ三十分位歩いているが、獣の出る気配がしない。だが僕は、この山にはもういないとは断言出来ない。何故かそんな気がした。
アラン「頑張って下さいカナンさん。獣は山の上に住処を作っているかもしれません。そう言う所も見落とさないようにするために、登っているじゃないですか。それに、獣討伐が上手くいけば、もしかしたら褒美も沢山貰えるかもしれませんよ。」
カナン「マジか!そうとなったなら、どんどん行こうぜ!」
そう言うとカナンは、急に元気になった。しかし、さすがはアランだ。育ちがいいのか、モチベーションアップが僕より上手い。とても頼りになる仲間だ。
ラパン「...シッ!」
ん?どうやらラパンが何かに気づき、僕らを静かにさせた。
宗助「どうしたラパン?」
ラパン「何かがこの向こうに居ます。三匹.....いや、一匹と人間二人です!二人はその一匹に追われています!」
ラパンは目に魔力を集中させることにより、あらゆる生物の魂を見ることができ、その位置、数、更にはその生物が何なのかが分かるのだ。因みにこの魔法は通称“探知視力”と呼ばれているらしい。
カナン「まさか、誰かがその獣に襲われてるんじゃ...!」
宗助「急ぐぞ!」
僕達は急ぎ、その獣と人間二人が居る場所に走った。段々近づくと人らしき声と、獣の声が聞こえた。
?「フゴオオオオ...!」
??「ワァァァァ...!」
ラパン(やはり襲われてる!このままじゃ...!)
僕にはラパンは焦ってるように見えた。もし間に合わなくなり、二人が獣の餌食になったらと言う不安がよぎったに違いない。なら僕がやることは一つ...。
宗助「ラパン!その獣の位置って分かるか!?」
僕はラパンに聞いた。ラパンは一瞬、困惑したが、すぐに答えた。
ラパン「はい!ここから北東、距離約150m!二人と獣の間は、約10m!」
ラパンはなるべく正確に僕に伝えた。それを聞いた僕は立ち止まった。
カナン「おい!何やってるんだ!早くしないと奴が...!」
宗助「あぁ分かってる。だが止まってなきゃ、狙いが定まらない...!」
カナン「え?」
アラン「狙いが...定まらない?」
どうやらカナンとアランはまた言っている意味が少し分からなかったらしいな。
ラパン「ま、まさか....!」
僕は手を開き、前に突き出すと赤い魔方陣が出てきた。そして息を吸い、頭の中であるイメージをした。“炎”のイメージを...
宗助「炎柱槍!!」
バシューーン!!!!
林の向こうで、巨大な火柱が立った。あまりの炎の大きさに、ラパン達は唖然としていた。
カナン「おいおい宗助、お前また加減なしでやりやがったのか...!?」
ラパン「さすがは宗助さん!相変わらず凄いです!」
アラン「しかし、あれはやり過ぎなんじゃ...」
三人の驚いた感想を聞いて、自分で言うのも何だが落ち着いていた様子で言った。
宗助「大丈夫、なるべく木々に燃え移らないように、細く、手短にやったよ。まぁ、火力は動物が焼け死ぬ程度にしといたけど。」
それよりも、僕らはは二人の安全と獣の確認をしようと、さっきの火柱が立った場所に向かった。
一応、加減したはずだが所々葉っぱや草に燃え移ってるな。まあ後で消火するとして、狙った場所を見ると何かが丸焦げた物が見つかった。僅かながら形が残っており、それは猪だと判明した。
カナン「よーし!討伐完了!後はご褒美を貰うまでだ!」
宗助「おいカナン、まだ襲われた二人のが見つかってないだろ。」
カナンは早く戻ろうとしていたが、僕は二人を見つけるまで戻らないとカナンに注意した。すると、周りを調べていたアランがある物を見つけ、僕らを呼んだ。僕はまだ燃えてる炎を水魔法で消しながら近づいた。
アラン「あのすいません!ここに穴らしき物があるんですけど、この穴、なんか妙じゃありませんか?」
確かによく見ると、穴の周りにまるで隠すように葉っぱが散らばっており、何より穴の出来が、とても新しかった。まるで人為的に作られたようだった。更に調べると、周りの木にはロープが縛られていたり、網のような物も見つかった。
宗助「まさか誰かが、あの猪を捕まえる為に仕掛けたんじゃ...」
?「おい!てめぇ!!」
突然、怒鳴るような声が聞こえた。驚いて振り向くと、そこには赤い髪をした瓜二つの少年が二人居た。