特訓初日(格闘編)
特訓初日....
まだ夜明けになっていない筈なのに、ガレラがラック達の部屋に入ってきた。
ラック・コル「スゥ....スゥ...」
ガレラはニヤニヤとしながら、二人に目掛けて手に持ったスプレーのようなものを吹き掛けた。
シュシュッ!シュシュッ!
ラック「...ぶぁっちゃっつめ!?なになにぃ!?」
コル「...ひゃっつひょっつひゅっつ!?つめ、冷たっ!?」
ガレラ「お前ら!今日から特訓だ!さっさと飯食って、着替えて外出ろ!ビシバシ行くからな!ハッハッハッ!」
ガレラは大声で笑いながら言ったが、ラック達は突然起こされ、一瞬、放心状態になってしまった。
村外れの森...
ガレラとソピアは寝起きでボサボサな髪になっているラック達に特訓内容を説明した。
ガレラ「いいか、これからお前達には本来、兵士や勇者などが三~四年かけてすることを、十日間の内に叩き込むからな。当然、やり方はとてもハードだ!覚悟しとけやよ!」
ガレラが二人に指を指して言うと、ラック達は“はい”と大きく返事した。
ソピア「本当ならこういう事は非常識ですが、やるからには徹底的に鍛え上げますので、途中退場は絶対に許しません。それでもよろしいのですか?」
ソピアは二人にそう聞くが、二人は“はい”と大きな声で答えた。ソピアは二人の言葉を聞き、よしと頷いた。
コル「それで、最初は何を?」
ソピア「まずは二人の体力や知力、そして魔力をテストし、貴方方のスタイルにあった特訓メニューを作ります。十日で強くなりたければ、自分のやりやすい戦い方を見つけなければいけません。」
ラック「あの、その魔力って奴は、鍛え方によって違うんですか?」
ソピア「そうですね、もし肉体的に向上させれば、身体強化などが身についたり、頭脳的に向上させれば、浮遊や創造などの複雑な魔法が身についたりします。しかし、これらのどちらかを選んでも、属性魔法は自然と付属しますのでご安心下さい。」
この世界での属性魔法は、魔力を一定以上高めれば誰にでも身に付くのだが、どの属性になるかは魔力が成長するまでは誰も決して分からない。
ガレラ「まずはお前達がどこまで動けるか見るからな。さぁ始めるぞ!」
ラック•コル「はい!」
ラック(いよいよだ。ここから俺はどんどん強くなって、今度こそあいつに勝つ!)
森に囲まれ、鳥や虫の鳴き声が聞こえる中、特訓が始まった。
ガレラ「まずはお前達がどこまで動けるか見てやろう。今からお前達には俺の頭の鉢巻きをこの砂時計が落ちる前にあらゆる手を使って取って貰う。なぁに、多少荒くなってもいいから、お前達の全力を俺にぶつけてみろ!」
ガレラは最初に二人の基礎体力を確認するために、この世界の対人格闘訓練の基本を二人にやらせた。ガレラは鉢巻きが取られないように守ったり、避けたりする代わりに、一切手は出さないと言うルールで始めた。
ラック「じゃ最初は俺からでいいかな、おじさん?」
ラックが前に出て言うとガレラは頷き、二人はそれぞれの一定の距離を取って、向かい合った。
ガレラ「さぁ来い、ラック!」
ラック「おう!」
ラックは喧嘩慣れしていたので、体の柔軟性や素早さを利用して鉢巻きを取ろうとしたがガレラはラックの動きをまるで最初から分かってたかのように、全てを受け流していた。
ガレラ(全く、ラックは相変わらずだな。目の前の事ばかりに向かって、ただただ己の本能のみに動いている。だから動きがやや単調だ。だが逆に、そういう単調だからこそ恐れずに全力で真っ直ぐに戦う勇気がある。)
ガレラはラックの行動などを見て、彼がどれ程戦闘に向いているか理解した。ラックには戦闘にとって必要なものが既に何個かあると気付いた。
ソピア「そこまでです。」
ガレラ「何?もうか?」
気が付くと砂時計の砂は既に落ちきっていた。それ程までに、ガレラはラックの動きに興味を持っていたのだ。
ガレラ「ハッハッハッ!ラック、中々良い動きだったが、格闘技術ではまだまだ未熟以下、これでは兵士一人にも勝てないぞ。しかし、近距離戦闘なら今からでも遅くないぞ。」
ラック「ハァ...ハァ...うん!」
ラックは息切れをしながら、返事をした。
ガレラ「よし、次はコルだ。来い!」
コル「はい!」
一方コルはあまり喧嘩したことがないため、ガレラの動きを見て、なるべく後ろから周り込み、取ろうとしたが、やはりガレラには全てかわされた。
ガレラ(コルの奴、近づくのが怖くて離れてばかりだな。あまり戦闘向きではないかもしれん。だがラックとは違い、相手の行動などを広範囲に見て、先の事まで考えてやってるな。こいつには、別のやり方があるはず。)
ソピア「そこまでです。」
ガレラ「コル、お前はあまり近距離での戦闘向きではないな。飛び道具や魔法が有利かもな。」
コル「ハァ....ハァ...ハァ...」
ガレラは淡々と話たが、コルは息切れをしており、とても答えられなかった。
ソピア「それでは十分後、今度は私がテストしましょう。二人共、ゆっくり休んで下さい。」
ラック•コル「は、はい!」
ドサドサッ!
ラック達は疲れたせいで、その場で座り込んでしまった。