神様
翌朝....
鳥の囀りと太陽の日差し、そしてゴソゴソと何かが動く音で、コルが目覚めた。
コル(う~ん?何の音だ?)
コルが目を擦り、ラックのベッドを見ると、そこには何故か寝ているはずのラックが着替えていた。
コル「兄さん何してるの!?まだ寝てなきゃ駄目だよ!」
コルはすぐ起き上がり、ラックを寝かせようとしたが、体を見ると傷がもう無かった。
コル「あれ?もう治ってる?まさか昨日の回復魔法で....?」
コルは、昨日のアランの回復魔法のお陰で、ラックの全ての傷が治ってる事を理解したと同時に、そこまでの魔力と技術があの人にはあったのだと驚愕した。
ラック「もう痛みはねぇし、今は歩けるよ。それよりもコル、ちょっといいか?」
コル「何、兄さん?」
コルはラックが着替えながらの話を聞いた。
ラック「昨日の話なんだけどよ、神様って別の世界から人を来させる事が出来るだろ?」
コル「え?聞いてたの兄さん?」
コルはラックが昨日の話を聞いた事に驚いたが、すぐに頷き、昨日の事を改めて話した。
コル「それでね兄さん、僕達の事なんだけども...」
ラック「俺、神様にお願いしてみるよ。」
コル「え?」
コルは困惑してしまった。話を聞くと言ったが、ラックの突然の言葉に驚いてしまったからだ。
ラック「神様って、時々俺達を不公平にさせるよな。昨日の火柱野郎だったり....。だが逆に、俺達にそういう奴でも倒せる方法や力も知ってるんじゃないかと思ったんだ。だから神様にお願いして、あいつを倒す方法を知りたいんだ。」
ラックは神が強い奴を呼ぶ事も出来れば、その者を倒す方法も知ってると考えていた。しかし、コルはそんな無理な話だと言った。
コル「兄さん、確かにそうかも知れないけど、今更神様に願っても何も変わらないと思うよ。僕達じゃどうにもならないと思うし...」
ラック「そんなことはないぜ。俺は必ずあると思うんだ。迷い者を倒す方法が...!」
ラックは着替えを終えると、コルの方を見た。
ラック「コル、俺はまだ諦めてはいないからな。あいつをぶっ飛ばすまでは絶対にな...!」
コル「!」
コルはラックの目を見て、理解した。ラックが迷い者を必ず倒す事を強く決意し、それまでは決して諦めないと言う信念が目で伝わった。
コル「はぁ、分かったよ。今回も兄さんに付き合うよ。」
ラック「いやコル、今回は俺一人でやるんだ。」
コル「どういうこと?」
ラック「この村の反対側の山に、石碑があるだろう?そこに一人で行って、百回お願いしようと思って!」
ラックの言う石碑とは、この村にははるか昔、山から神がお告げのために現れ、その名残として建てられた物である。
コル「百回!?兄さん、いくらなんでも無理なんじゃ...」
ラック「いいや!神様にはこれくらいしないと受け入れてくれないと思うんだ!」
何度もコルが止めようとしたがラックはもう決めた事だからやめないと堅くなに言った。そして、とうとうコルもラックの勢いに負けてしまった。
コル「もう、しょうがないなぁ...。じゃせめて、朝ご飯は食べてよね。なるべくなら体力付けないと。」
ラック「おう!」
ラックとコルは、朝食の作る音と匂いのする居間の方に向かった。
コル「ところで兄さん、僕達が成人になる事何だけど、兄さんはどうする?」
ラック「それは神様にお願いしてから考えるぜ。大切なのは分かるけど、そういう細かいことは後でやるよ。」
コル「こっちの方が最優先なんだけどなぁ...」
コルは半々呆れていたが、確かにそれは今急いでやることじゃないと思った。落ち着いてよく考えて話し合い、その後に答えを言う方が良いと思ったからだ。