第25話
腕試しは、街の闘技場で、行われるとのことで、ダンコが私を呼びに来た。
オンモは、ダンコに抱きつき、今までのお礼を述べていた。
相手は、既に闘技場で私を待ち構えていた。
闘技場内は、ダンコの仲間や、一昨日の偉そうなステファンの関係者、兵士らしき男女が、多数集まっていた。
ステファンが口上を述べ、腕試しが始まった。
私は、腰を深く落とし、構えた。
「おおー」と男達の、歓声らしき声が、僅かに聴こえてきたが、私は神経を研ぎ澄ます。
そして、息を止め、待った。
マコトが、腰を深く落としたことで、白い脚の内太腿が露わになり、何かを期待して集まった男共の視線が固定され、「おおぅ」と、声が漏れる。
盗賊の用心棒が、ニヤリと下卑た笑みを浮かべ、裸足の足で砂を掴み、マコトの顔めがけ投げ飛ばす。そして細身の剣を間髪いれず、顔に向け突き刺そうと動いた。
マコトは、砂が舞った時点で、目を閉じただけで、構えは崩しておらず、慌てた様子も見られない。真っ直ぐ顔に向かう殺気を読み取り、半歩ほど横に動き、刀を抜きチャキっと峰を表に返して、下から男の腕を跳ねあげた。
用心棒の腕の骨はくだけ、有らぬ方に腕が曲がっていて、声も上げられず、膝をつく。
目を閉じたまま、鞘に刀を戻したマコトが「まだ、やりますか?」と、問いかけるが、用心棒は無言のままだ。
マコトは、目を閉じまま、用心棒に背を向け、オンモの方に、歩こうとした時、用心棒の左手に握られたナイフが、マコトの首に向け、投げられた。
「愚かですね」。そう言いながら抜刀しナイフを弾き、用心棒の左腕の肘の辺りに振り向きざま、左足で蹴りを入れ、チャキっと峰が帰った刀で、首の骨を叩き折る。
命は、奪わないまでも、男は自らの意思で、動く事すら、叶わぬ身となった。
「こ、これは、すごい」
動く度に揺れるたわわな双丘と、蹴りを放つ際に、運のいい位置にいたものにだけ見えた絶景。男達は声も出ない。
なんで俺は、ここにいる。あそこにいたなら、絶景が拝めたはずだと、拳を握りしめて血の涙を流して多数の男達が、落胆にくれた。
オンモは、マコトに近づき、目を洗うから、しゃがむ様に促し、水を手のひらから、出現させながら、マコトの目や顔を、ペタペタ触る。
腕は、確かのようだな。というか、かなり強い。魔人にも匹敵する強さだ。マコトであれば、街の力と合わせる事で、海の魔人を倒せるかもしれない。
「マコト、改めてお願いする。海の魔人の迎撃に、その力を、貸してくれ。試すような真似をして悪かった。」ステファンは、胸に手を当て、頭を下げた。
「微力ながら、加勢いたします。元はといえば、私がモレイを斬り捨てた事が、発端ですし」
「我も、マコトと共に、戦うぞ」とオンモが仁王立になり、声を上げる。
「はいはい、頼りにしてますよ。オンモ」と跪いたマコトがオンモの後ろから、手を回し優しく抱く。オンモの頭の上に双丘が、乗っかるのを見た男達が、前屈みになり「うおぅ」と呟く。




