24話
オンモは、宿屋の子供と対峙している。
「ここに、谷間の剣士がおると聞いてる。我に会わせてくれぬか?」
「谷間のねーちゃんに、谷間って言っちゃ、いけないんだぞう」
「今、2回も谷間と言ったではないか。我は、会って確かめたいだけだ。谷間は、関係ない」
「会って谷間を確かめる?お前、鼻血止まらなくなるぞ」
「何を言っておるのだ。谷間の剣士に、会いたいだけだ。取り次いで欲しい。」
「そんなに、谷間が好きなのか。谷間のねーちゃんが、好きなのかー」
「くっ、話しが通じない。わかった。100歩譲ろう。我は、谷間が大好きで、大好きで、堪らん。だから、会いたい。分かったか?」
「な、なんだとぅ。谷間のねーちゃんは、渡さないぞー。あの谷間は、おいらが守るっ」
ゴンと我の頭と話の通じない宿屋の子供の頭に、げんこつが落ちてきた。
二人して、いててててーとしゃがみこんでると
「朝から、何回谷間を連呼してるのですか」
と、髪の長い女が、ほっぺを膨らませ、腕組みをして、立っていた。
組んだ腕から、たわわな物が、こぼれ落ちそうになっており、ダンコの目が釘付けだ。
「おや、あなたは、神主か何かですか?、その衣装は、見覚えがありますね」
「違う、我は、おんもだ」
「鬼に、黒い渦に引き込まれて、目が覚めたら、この世ににいた。」
「そうですか。」
「変な声から、谷間の剣士を探し、頼れと言われ、谷が見つからなかった。疲れて式神の上で寝込んでたら、この街の近くに来てたのだ」
「なるほど。私が谷間の剣士かは、解りませんが、なんらかの縁が、貴方とはあるように思えます。使命を果たせとその声は、言いましたか?」
「うん、我にも言ったぞ」
「私の部屋で、少し話をしましょうか」
マコトはオンモと手を繋いで、自分の部屋のある二階へ移動した。
「ダンコや店番の子供に、聞かせたくない話しもありますので。」
部屋に入ると「我が結界を作れば、音も漏れぬと思うが」とオンモが言うと、マコトは少し驚き、「お願いします」と頼んだ。
「わかった。おん きゅうきゅうにょりつ ぞく そわか」
キンと音が聞こえた。
「これで、結界内の音が、我らの他には、聞こえなくなったと思う。」
「すごいのですね。オンモは」
マコトの言葉に、オンモは、えへへーと反応する。
マコトは、こちらに来る前に、たくさんの人を斬り殺したこと、労咳で死んだこと、願いとして愛刀の所持、健康な体、不殺人の束縛を願ったことをオンモに語って聞かせた。
「私が、怖くないですか?沢山の人を殺めた鬼に近い存在ですよ」
「我は鬼が見える力のせいで、羅刹という鬼神に、渦に引き込まれた。マコトからは鬼の禍々しさは感じない。怖くはない」
「そうですか。オンモは強いのですね」
「我は、変な声から、おんもの力の目覚めと強い式神を呼べる力をもらった」
オンモは、式神を召還する
「白き虎ですか。これは、強そうですね」
「この、大きな猫は、とらと言うのか」
「そうです。白虎かも、知れません」
「びゃっこ?」
「四方を守る聖獣の一匹です」
オンモは白虎の喉を撫でた。
ゴロゴロと気持ち良さそうな、音を出し、オンモに、白虎が貼り付いて、甘える。
「私達は、どうやら同じ使命を果たさねばならないようですね」
「私も、オンモを頼りにさせてもらいます」
マコトは、オンモを抱きしめた。オンモは、マコトの柔らかさと甘い香りに、安らぎを強く感じ、涙を流した。
「男が、こんなことで、涙を見せるものではありませんよ」
とマコトはさらに強くオンモを抱きしめる。
オンモは、自分の頭ほどある巨大な胸に圧迫され、息が出来ず、ジタバタした。




