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君が大好きな君へ  作者: シュット
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5.南


南は電車でぼうっとしていた。なんなんだろう。この憂鬱なぐるぐるした空気の流れは。明日は晴れるといいなって思いながら、揺れる車内で眠気と戦う私。ちょっと窓の外を見やって、一番明るいところを探してみる。これで気も紛れるだろうと思いながら、今度は頭をゆっくり回転させ始める。昨日見たドラマの話がどうだったとか、最近読んだ雑誌の記事だとか。とにかく頭の中をいじくり回して。

そんなことを考えて意識を途切れないようにしないと、ギリギリ登校の南は確実に遅刻する。スロースターターの彼女にとっての朝は、まるで今彼女が見ている景色に浮かぶ雲のように静かにゆっくりと流れていく。

アナウンスが鳴った。あと二つで、南の降りる駅に着く。漸く意識もはっきりとしてきた南は、他のことを考える余裕がだんだんと出てきた。来月に控えるイベントや、今日一日の過ごし方の軽い「テーマ」など。

電車を降りる。天気自体はそんなに変わっていない。でも大丈夫。もはや彼女の頭の中は楽しいことで満たされているのである。

紗恵はいつも、私より早く学校に着いてるけど、一体私が来るまで何やってるんだろう?私みたいに頭ボーっとさせて、窓の外でも見てるのかしら?それとも他のクラスメイトと話し込んでる?あー、私もそれ加わりたいかも。なんで朝ってだけで私はこんなにも弱いのだろうか?ちゃんと夜は23時に寝てるし、朝も6:30に起きてる。これってちゃんと睡眠量はとれてるし、休日も寝だめしてることもあるから、ちゃんと起きられないとおかしいハズなんだけど?あとは交通の便よね。昔から今まで何かしら進化してきたように見えて、最近は進歩がゆっくりなんじゃないかしら?もうちょっと早くなったり、はたまた電車じゃなくても瞬間移動とかで、時間を節約することができれば、もっと寝られるのに。ってそれじゃ、あんまり変わらないじゃん!自分ツッコミ。いいわ。私どうせ学校速くついても頭働いてないから会話に支障あるかもしれないし。今の感じでいいのよ。きっと。その代わり、昼からエンジン全開で喋り倒す。紗恵に全部を聞いてもらう。

彼女はこうやって友達のことを考えて、自然と足が速まっていた。普段はこの後、実際に南は紗恵にドラマの話から好きなアイドルの話までをマシンガントークで進めることとなるはずだが、今日は少しばかり違うようだった。教室に入るなり南は、紗恵の様子のどことなく違うのに気付いた。表情だ。なんだろう。ちょっと緊張しているときの顔だ。南は南でいつものように話を畳みかけてはいたが、今日に限っては紗恵の口数が多い。気がした。

なんとか彼女は話を掴んで、その内容から彼女の今日の雰囲気の「素」を探ろうとしたが、残念ながら目ぼしい情報は手に入れることができなかった。


―もしかして、紗恵昨日徹夜したとか?


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