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君が大好きな君へ  作者: シュット
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4.紗恵


教室は静か。紗恵は気分を落ち着ける。今は朝の時間で、頭もまだぼうっとしている。7時起きの毎日。大して苦ではないけれど、なかなか慣れるものでもない。いつもそんな感じで頭の回転もよくないまま登校するのだけど、この時間帯なだけあってそうたくさんの人に学内で会うわけでもなく、教室にも静かに勉強している男子が二人いるだけ。これがこのクラスの日常。紗恵にはとても過ごしやすい空間だ。他の高校はどうなのかも知らないし、私はテレビもそんなに見る方ではないから、外の世界がどうなっているのかも分からない。普通の高校生ってどんな感じなんだろう。他校に忍び込んで、どんな様子なのかを見てみたい。このクラスはなんだかとても「醒めている」と思うときがある。生徒同士の関係が希薄、という言葉で表すことができると思う。クラス全体が固まる、なんてことはあまりなく、ちょこちょこ仲の良いメンバー同士で集まって話しているくらい。そのグループ同士が関わるなんてこと、殆ど見たことがない。それがよいことなのか、悪いことなのかも分からない。判断を保留にしている。これがこのクラスなのだから、私はその中でどう立ち回っていくのかを考えていかなければならない。

このクラスにはいじめがない。その手の人間関係の拗れを体験したことのない紗恵にとって、それはありがたいことであると思える。それに、特定の誰かが浮く、なんていうこともない。いや、実際はキャラクターの濃いメンバーは結構いる。今いる男子二人だって、決して平凡なクラスメイトという認識には収まらないのだから。ただ、それを黙認して、受け入れる雰囲気がこの教室にはある。最大限互いの自由が保障されていて、大抵のことは問題にはされない。だから、このクラスにいられることが、高校生活の安全を確かなものにしてくれる。そう思う。これから、雰囲気それ自体が大きく変わることがあるのだろうか。それはまた気になるところではあるけれど、その時はその時。私は私のままでいればよい。

とりあえず今は幸せ。心の平穏が保たれている。

「何ニタニタしてんの?」

後方から聞こえる声。紗恵はドキッとした。木村君だ。私の表情がバレていたのだろうか。そんな分かりやすい顔をしていたのだろうか。いや、そもそも、後の席の人がどうして私の顔を見ることができるのだろう・・・もしかして頭の角度が?ただ、私に言っているのでなければ安田君に言っているハズなのだけれど、彼も彼で返事をしないし、どういう事・・・?

怖くて後ろを振り向く気にはなれない。とりあえず聞かなかったことにして、嫌いな数学のことを考えよう。少しはシブい顔をしなくちゃ。それに、もう少ししたら南が来る。彼女はいつも肝心なときにいないから、こういうときに困る。今日も始業前に一言二言交わすくらいの時間しかないだろう。しかし速く来てほしい。今はとにかく話し相手が欲しい。この感情をごまかしたい。とにかくなんかちょっと、ハズい。

――同じ教室で、3者に3様の感情。今、新しく生徒が教室に入れば、3人の顔を拝むことができるだろう。そして、そのあまりにも対照的な3人のその表情を見て、少し滑稽に思うはずだ。人間は正直で、隠していてもどこかでボロを出すくらいには抜け目があって、そして素直だ。これが人間の本質の一つなのだから。



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