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君が大好きな君へ  作者: シュット
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2.進

彼ももう2年生になっている。高校生活にもすっかり慣れ、彼なりの生活スタイルというものもできていた。なんとか友達もでき、仲の良い数名とつるんだりしている。

しかし、そのほかの同級生はというと、これといった交流は殆どない。彼は内向的なタチで、自分から話しかけるなどということはまずしない。よほどのことがない限り、個人主義を貫いて事務外の件で他人を頼るということをよしとしなかった。

何より、普段仲良くしている人に聞けば大体のものは解決してしまうのに、敢えて気心の知れない他人に話しかけていくことは彼の心の平安が許さないことであった。

それに今月は雄哉が隣だ。だからどうということはないが、彼とは前学年から同じクラスなので、気持ちパーソナルスペースを広げられたという心地がする。

雄哉も雄哉で進とは気があうらしく、頻繁に会話を試みてくる。傍目から見ればごく普通の仲良しに映るだろう。

「今日漢字テストどこだっけ」

という会話が、まず最初の切り口だ。二人とも、単語テストは当日の朝の時間を使って勉強している為、前日に家で確認するといったようなことはしない。進はそのやり方で落ちることがまずないので、自身の勉強スタイルの一つとして実になっていた。一方で雄哉は漢字テストはなんとかなるものの、英単語は時々危い。

こうして朝の時間は二人、黙々と単語帳を開いては勉強している。それでも不十分だと感じた際には己がじし他の休み時間や昼休みを使うこともある。

「カチッ」

3番目にいつも登校してくる女子生徒が明かりを点ける。二人とも、目を眩しそうに細めながら視線を単語帳に落とす。これでもまだ始業には20分も余っているので、進は暗記作業もぼちぼちにして再び机に突っ伏した。隣で雄哉が奮闘中であるため、話しかけることもできないし、かといって校内は携帯が禁止なので弄ることもできない。必然的に持て余した進はリラックスする時間に使っている。机に顔を伏せてはいるが、寝落ちに至ったことはまずない。ただぼうっとしているだけですごく気持ちが楽になるので、彼は好んでそれをやっている。家に帰ったら何をしようかと考えながら、今は自分の世界に浸っていた。それが彼の毎日。特に変化もなくただ過ぎていくだけのものなのではあるが、そんなことを気にせずのらりくらりとやっていけるのが高校生の良いところだ。

―放課後にプリクラ?カラオケ?ファミレス?くだらない。そう思うのが彼である。ただ平和を享受できるだけの人生で十分だ。自ら進んで刺激を求めるなどということは彼には「リスキー」で追う価値のないものだという考えがあった。当然、クラス全体を見ても彼のような考え方をする人は多くもないので、そういう点でも進は浮いていたのだろう。しかし、この手の人間が少し珍しいとして、気にするものはまずいない。根本的に無害なのだから。進の心の奥底まで、読むことのできるものはいないが、なんとなく感じ取れる雰囲気から見た彼の印象は「無気力」これに尽きた。


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