18. 進
「月島?」
「野平くんって言った」
野平。野平蓮児。無難な選択だと思った。僕から見た彼は結構印象がいい。顔立ちがくっきりしていてイケてる部類には入るだろう。それに性格も大人しくて誠実だ。あまり男男していない中性的なところも彼の魅力の一つだ。月島さんは案外人をよく見ているのかもしれない。なんて考えていると自分の番がすぐに回ってきた。
「進は?」
「吉岡さんかな」
「私!」驚いた様子の南。しかしまんざらでもないような笑みを浮かべている。
「なんで?」その勢いで聞いた南と、にやにやしながら進むに顔を向ける雄哉が同時に聞いた。
「だって、なんか恋愛しそうだし」
「どういうこと?」
「恋愛しそうな人はするでしょ、恋愛」
「そうなかあ」
「気分なんだと思う。こういうの」
「へえ、じゃあ俺も恋愛しそうか?」
「雄哉はどうだろうね。僕と比べるとそうだね、しそうだ」
「紗恵は?」南がさりげない様子で、しかし興味を隠せていないのが声の感じで分かってしまった。
「僕と同じタイプかな。時期が来れば、する」
「だって!」南がすぐ隣にいる紗恵の方を向いた。彼女は少しうつむき加減で考えた後、何かを言おうと口を開いたのだが、それを遮るように雄哉がコメントをした。
「他の人に興味ないように見えて、案外観察してたんだな」
「その時期はいつ来るのかな?二人とも?」南はいじわるそうな眼差しだが頬は上がっている。
「全然わからない。一生来ない感じがする。でも、明日来るのかもしれない」
「何それ?はっきりしなよっ」怒気は感じられない。
紗枝はうなずくだけだった。静かな様子からは全く感じることができないが、その体の中は暖かい、そして幸せな空気が巡り始めている。