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君が大好きな君へ  作者: シュット
15/25

15.進

今日行われる予定だった試験の全てが終わった。進は教室の中を見渡す。大きな動きこそないものの、部屋全体の空気が軽くなった気がした。あの人もあの人も、態度には出さないまでもきっとホッとしていることだろう。進自身も、試験の出来がどうかということは置いといても心地よい脱力感に包まれている。あとはこのまま帰宅してベッドに飛び込むだけの予定が彼にはとてもありがたかった。

ポツポツを席を立ち始める人たちが出た。進もさっと荷物をまとめ、帰る支度にとりかかる。

廊下に出ると、他の教室から出てきた生徒たちが少しばかりいて、鈍いがやがやとした音がする。学校の廊下で感じるがやがやとは違った、なんとも湿った感触のする雑音のように感じられる。

「乙――――――!!!」

後ろから肩にポンと手を載せる感触がした。雄哉だ。

「おつかれ」

「お疲れ?疲れてんの?だったらお疲れ会やろうぜ?」

「何?それ」

「ファミレスでもいーからさー、どっか行こうよ、みんなでさ」

「みんな?」

「そう、南とかいるじゃん」

「あ、あの人」

「そう!行くだろ?」

「だって今日はお父さんが迎えに来てるし・・・」

「だったら平日でいいから!暇だろ?」

進は迷った。そこまで乗り気ではない。帰る時間が遅くなれば、それだけ家で休める時間も減る。ただ、雄哉と話すような時間、それが高校外という非日常は少しわくわくするのだ。

「考えさせて」

「そんなに引き延ばすことでもないだろっ!」

笑いながら、雄哉は帰っていった。まるで分っていない。人と過ごす時間は進にはかなりカロリー消費が高い。ホイホイ「行く」と答えてしまうようなら、これからも安易に誘われかねない。軽い人間だと思われないための返答のし方でもあった。


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