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君が大好きな君へ  作者: シュット
13/25

13.進

進は廊下の暗い雰囲気にのまれ、ついうとうとしてしまっていた。鈍いざわざわとするような音でやっと目を覚ました時には、既に教室前に同級生たちがちらほらと集まっていた。

知った顔ばかりなのは勿論だが、寝ている彼を気遣ってか、声をもともとかける気がないのか、彼の少し離れたところでめいめい自分のしたい作業をしている。

「それでは受験のみなさん、どうぞー」

試験監督の声と共に、皆教室へと入っていく。進もまた、おもむろに腰を起こし、自分の席へと進んでいった。

次第に賑やかになっていく教室。名前、受験番号などの項目も一通り書き終わった。南の声が聞こえる。話している内容までは聞き取れないが、ものすごく楽しそうで、他の学生とは違って緊張感が全く感じられない。紗恵も既に来ているが、彼女は彼女で一人参考書を眺めている。やはり二人は対照的だ、と進は思った。どうしてそれなのにあんなに仲が良くていつも一緒にいるのだろうと。普段制服でいるせいで、皆の私服姿はとても新鮮で輝いているように見えた。南は明るい色を基調とした華やかなものを、紗枝は薄紫の服を着ている。

秋なだけあって、まだ涼しい恰好をしている人と、冬に備えて少し暖かめに着飾り始めた人が半々なようだった。

「おい最悪だよ今日の『ファイナゴ国物語』予約録画すんの忘れた。いやむしろ試験があるのを忘れてたから予約するの忘れてたんだけどな。進ん家で今度見せてもらっていいか?」

後ろから肩に手を置いてくるこの男は勿論前者。こいつはきっと年中半袖でも特に困りはしないだろう。雄哉は進とくだらないやり取りを終えた後、彼とは少し離れた自分の席に座る。もう教室は結構埋まってきている。1組と2組は同じ教室で、ざっと60人ほどの大人数が収まろうとしていた。

進は、教室の全体を見渡すようなつもりで視線を走らせる。次第にそれは2組の方へ。男子の列を見ていると、典人と進の目が合った。互いに気まずい気持ちになって即座に目を背ける。二人は認知し合っているが、話す程の親密さは未だ得ていない。共通の友達としての雄哉を介した繋がりである。意識してはいるものの、知り合いにすらなれていない二人は、どう接していけばよいのかその方法を知らない。しかしながら、今後絶対知り合いという予感を互いに感じている為、決して悪い気持ちはしないのである。

それでも今はなんとなくもどかしいのであった。


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