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君が大好きな君へ  作者: シュット
11/25

11.進


進はコンビニに来ていた。インクの切らしていた赤ペンを買いに来たのである。学校の最寄にその店は位置している。他に彼の自転車の帰路にも買える店はあるのだが、家の近くにしかないし、何より漕いでいるうちに買うこと自体を忘れてしまう可能性があったため覚えているうちに買っておこう、という考えである。彼は涼むのを兼ねてコンビニに居座り、どのペンを買おうかと考えていた。

―どうせまた切らすし、3本まとめて買うか。

そう決めて商品を手に取り、振り向こうとしたその瞬間に、進は右の方に何か感じるものがあった。

―あれ、うちの学校の生徒だ。そりゃそうか。高校の位置的にそんな珍しくもない。

それに、顔にも見覚えがあった。同じクラスの月島と吉岡だ。向こうもこちらに気付いているらしく、或いは向こうの方が先に自分の存在に気付いていたかもしれない。チラチラと感じる視線があった。こういうのは進は好まないのである。倫子以外の女は全く読めない。男同士でも理解に苦しむことばかりなのに、女という生き物は全く未知の生物なのだ。例えいくら対話を重ねてその考えをくみ取ろうとも、結局は自らが女にならない限りは、その回路は読めないのだと思う。しかも、いま同じ空間にいるのはそれが二つ。異星人とも呼べるその存在のその視線が、進には不愉快なのであった。殊更彼女たちに見られているから、ではなく、人に見られるということ自体、ストレスのたまるものであるのだが。進は、自身が動物園のチンパンジーになった気分で、また、ペットのハムスターになったような気分で、その途切れ途切れの眼差しを感じていた。―速くここから去らなければ。

そそくさとその場を去って会計を済まし、出口まであと少しというところで捕まった。吉岡の方が声をかけてきたのだ。

「よっ!」

「どうも・・・」

「木村君、ここで見るの初めてなんだけど、よく来るの?」

「いや、今日はたまたま・・・」

「ふーん、じゃ、また明日ね!」

二人は、少なくとも南は、その程度の会話で好奇心を満たしたらしく、別の売り場の方へと向かっていった。

―この返しで良かったのだろうか。いや、コンビニでできる会話なんてたかが知れてる。にしても一瞬だったなあ。

そう考えながら自転車のカギを外し、地面を蹴飛ばし走らせていった。

夕日とも夕焼けともつかぬ曖昧な暮れの色彩が、進の陰を地面に映して滲ませた。


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