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君が大好きな君へ  作者: シュット
10/25

10.雄哉

雄哉は、ぼうっと上空を見つめていた。風にあおられて、心なしか速く進んでいく旗雲を眺めていた。

雲かあ。本気出せばあんなに速く動けるんだな。雲は雲で、ずっと同じところに浮かんでるように見えて結構いろんなことに遭遇してたりして。毎日毎日ご苦労さんです。おっと、仕事に戻らないと。

彼は再び掃除に戻る。放課後の日課で、生徒は掃除当番を当てられていた。男子は出席番号順に前半と後半で週交代だ。進は「木村」、雄哉は「安田」できっぱり別れるので、同じ当番になることはない。進は当番のない週はさっさと荷物をまとめて帰宅するので、雄哉は同じ当番の男子たちと話しつつ、適度に掃除をサボっていた。廊下を動きながら身をかがめて手を動かしているだけで、意外と誤魔化せるもんだ。

時折強く箒を振り、風を起こして埃を掃く。力加減によって飛距離も違うので、調整しつつ、ゴミを隅の方まで運んでいく。

1、2、3!今度は大きく振って、様子を見た。難しいのは、大きく振れば振るほど、埃が分散して飛んでいくため、回収が困難である事。それでも大体のゴミはうまいこと追い詰められているので、それを利用する。

もう一度、1、2、-。振ろうとする箒が動かない。突然空間ごと粘土で固められたが如く、力が入らないのだ。誰かが後ろから箒を掴んでいる。担任か?振り向くとそこには、典人がいた。彼自身も掃除当番で外へ出てきただけなのか、放課後暇を持て余しているのか、時々掃除をしていると話しかけてくる。

「やあやあ」先生でなくて、少し安心した雄哉。

「舞った埃が汚い」典人は苦虫を嚙み潰したような表情をしている。

「ごめん、考えてなかった」相手に調子を合わせるように、身体を典人の方へ向ける。

「落ちたっしょ、テスト」

「またそれかよ~、大丈夫、ギリ合格!」

「なんだ、まあ良かったけど。でもそれでよく上のクラスにいるよな」

「知識問題はまあ国語力とは別物っしょ!」

「なるほど、次の模試の結果が楽しみだな」

「ん、模試あるの?」

「来月。この前申し込みしたじゃん」

「ああ、そうだったか。まあ頑張りますよだ」箒を振りかぶり、軽く打つ感じで典人に当ててみる。

「きったね、しっかり掃除やれよ」と言って、彼も2組へ戻っていった。

雄哉は掃除も大概にして、担任の教師を呼んだ。掃除のチェックを終えたあと、さっさと帰ろう。

彼はその後、当然教師に掃除のやり直しをさせられるのであった。


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